第22話:同調する子供時代
第22話:同調する子供時代
「観察者」となった未子は、まるで透視メガネをかけたかのようだった。
もはや異常を受け身で感じるだけではなく、能動的かつ体系的に、それを探し、検証し始めた。
彼女の〈観察記録ノート〉は、急速に内容を増していった。
未子は休み時間や昼休み、さらには放課後の短い時間を使って、さりげない雑談のように見せかけて、クラスメイトたちへの「インタビュー」を始めた。
話題はいつも「幼い頃の思い出」に集中していた。
「ねえ、幼稚園のとき、一番好きだった遊びって何?」
「小学校に入る前、家族と一番楽しかった旅行って、覚えてる?」
最初、返ってきた答えはそれぞれに個性があった。
砂遊びが好きだった子、自転車に乗るのが楽しかった子、海に行った子、山に登って紅葉を見た子——それぞれの思い出に彩りがあった。
だが、「記憶交換週間」が進むにつれ——
紙偶先生が授業で繰り返し流す「幸福のサンプル」——
投稿ステーションで「シェア」され、「受け取られた」記憶が「システムに認可されたもの」として流通するにつれ——
未子は、ある恐ろしい“同調化”が起きていることに気づく。
数日後、彼女が再び「幼稚園で好きだった遊び」を尋ねたとき、返ってきた答えは驚くほど似通っていた。
「砂場でおっきな城を作ったの!」
「先生と一緒に宝探しゲームしたの!めっちゃワクワクした!」
そして「一番楽しかった家族旅行は?」という問いには、さらに驚くほどの一致が見られた。
「ディズニーランド!ミッキーと握手した!」
「海に行ってイルカショー見たよ!ジャンプする姿がカッコよかった!」
その回答自体には、何の問題もない。
だが、問題はその“高度な類似性”と“細部の乏しさ”だった。
まるで全員が、同じ旅行パンフレットか、幼児教育広告を朗読しているかのようだった。
未子はわざと詳細を聞いてみた。「ディズニーで何のアトラクションに乗った?」「イルカショーはどこの海だった?」
しかし返ってくる答えはあいまいなものが多く、時には「よく覚えてないけど、すごく楽しかった!」とだけ返ってきた。
さらに未子を戦慄させたのは、「あまり“標準的ではない幸福”」な思い出について尋ねたときだった。
「転んで膝を擦りむいたりした記憶、ある?」
「怖かった経験とか、あった?」
多くの生徒はぽかんとした顔をし、首を振った。あるいは「よく覚えてないなぁ」「多分、なかったと思う」とあいまいに返した。
ごく少数、何かを思い出しかけたような子もいた。ある男子は無意識に膝に手を当てたが、すぐに近くの子から「楽しい思い出だけ思い出そうよ」と言われ、顔にはすぐに「誘導されたような」軽やかな表情が戻った。
未子はノートに、静かに記録した。
観察:
生徒たちの幼少期の記憶に共通性が見られる(砂場の城、ディズニー、イルカショーなど)。
記憶の精度が低下しており、「楽しかった」「ワクワクした」など感情の表層のみが残る。
不快な記憶は曖昧になっているか、思い出そうとしない。
結論:
「記憶交換」イベントおよび「幸せな記憶」への誘導により、個々の記憶が改変され、皆の記憶が似通ってきている。
冷たい文字を見つめながら、未子は呼吸が詰まるような感覚を覚えた。
紙偶先生は、優しく、だが圧倒的な力で、皆それぞれが持っていた唯一無二の子供時代を、滑らかで均一な「幸福記憶商品」に磨き上げているのだ。
本来、人格を形作るはずだった、苦くて、痛くて、不完全な記憶——
それさえも、無言のうちに消されていく。
白石、莉奈、そしてクラスの“個性”を失いつつある生徒たち——
彼らは、巨大な幸福の幻影の中で、顔の見えないコピーになりつつあった。
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