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紙偶先生  作者: 深夜舞
第三章:よくできました
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第11話:間違った称賛

第11話:間違った称賛


紙偶先生は教室の巡回を終え、講壇へと戻った。

「みんな、本当に頑張りましたね。その努力の跡、ちゃんと見えていますよ」

いつも通り、全肯定の調子でまとめを始めた。


「では、代表として健太くんの解答を見てみましょう。彼の考え方には、とても良い点がありました」


そう言って、紙偶先生は電子黒板を操作し、小泉健太の解答をスクリーンに映し出した。

その解答は明らかに間違っており、途中の思考も混乱していた。


「えっ?」「なにこれ?」

教室には抑えきれない困惑と驚きの声が漏れた。

白石翔太でさえ目を見開き、スクリーンに映る明らかな誤答と数式を見つめた。

児童たちの数学のレベルには差があるとはいえ、正誤の判断くらいはできる。


当の小泉本人は、瞬時に顔を真っ赤に染め、恥ずかしそうにうつむいた。

まるで机の下に逃げ込みたいかのようだった。

自分の間違いをクラス全員の前で晒されるだけでも辛いのに、

その解答が「良い考え方」として称賛されるのは、なおさら耐えがたかった。


だが紙偶先生は、そうした反応や明白な誤答にはまったく触れず、

代わりにレーザーポインター(あるいは指先から伸びる細い光)で、

小泉のノートのとある部分――偶然正しく約分された分数のステップを指し示した。


「ここを見てください。健太くんは、ちゃんとこの分数を約分しようとしています。

約分は、計算を簡略化する上でとても大切なステップです」


その語り口は、まるで宝物を見つけたかのように賞賛に満ちており、

小泉が何か偉大なことをやってのけたかのような響きすらあった。


「このように、一つひとつの過程を大切にする姿勢が、学びを深めていくのです。

健太くん、この点は本当に素晴らしいですね。みなさんも、ぜひ見習いましょう」


紙偶先生は、解答全体の誤りや最終結果の不自然さには一切触れず、

ただ偶然正しかった、取るに足らないディテールを無限に拡大し、

「努力」と「良い態度」の証拠として掲げた。

「間違い」そのものは、まるで存在しなかったかのように扱われた。


教室は奇妙な沈黙に包まれた。

児童たちは顔を見合わせ、困惑の表情を浮かべた。

映し出されたのは「間違った答え」なのに、

先生はその中の一部だけを熱心に褒めている?

これは、彼らが理解していた「正しさ」とは全く違っていた。


小泉の頭はさらに深く沈み、肩が小さく震えていた。

褒められたはずのその一部分も、彼を喜ばせることはなかった。

むしろ、大きな誤りを全員の前に晒された上で、

それを「良いこと」として取り上げられることで、

羞恥と混乱は倍増していた。


まるで、自分が「優秀」というラベルを貼られた欠陥品として、

ショーウィンドウに並べられているような気分だった。


紙偶先生は、満足そうに微笑んで言った。


「もちろん、正解することは大切です。

でもそれ以上に、問題に真剣に向き合う心と、

一歩ずつ進もうとする姿勢がもっと大事です。

健太くんは今日、その宝物を見せてくれました」


その言葉は、まるで精緻に作られた讃美の詩のようだった。

あたたかく、そして「哲学的」にも聞こえた。

だが、それは小泉やクラスメートたちにとって、あまりに空虚で、

虚構で、そして――残酷に響いた。


とうとう小泉の涙が溢れ出し、彼のノートの上に大粒で落ちた。

そこには、間違った答えが書かれていた。

涙はすぐにインクを滲ませ、文字をぼかした。

それは同時に、そこに貼り付けられた「宝物」というラベルさえも、

曖昧にしていった。

ここまで物語を読んでいただき、本当にありがとうございます!


もしこの物語を少しでも気に入っていただけましたら、ぜひページ下部の**【★★★★★】で星5つの評価を、そして【いいね】、【コメント】**で、あなたの声を聞かせてください。皆様からいただく一つ一つの応援が、私が次章を書き進めるための、何よりのエネルギーになります。


また、ご友人やご家族にもこの物語をシェアしていただけると、大変励みになります。


【更新ペースと将来の夢について】


現在の更新は、基本的に週に1話を予定しています。

ですが、皆様の応援で週間ランキングが上がれば、更新頻度も加速していきます!


読者の皆様、どうか力強い応援をよろしくお願いいたします。

そして、この物語が漫画化、さらにはアニメ化へと繋がるよう、どうかお力添えください!皆様と一緒にその夢を見られることを願っています。


これからも応援よろしくお願いいたします!

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