第1話:炭筆と朝霧
第1話:炭筆と朝霧
北海道の早春は、まだ頑固な残雪に支配されていた。遠くの十勝岳は連なり、その頂きの雪は一年中解けることなく、まるで巨大で冷たい死体を覆う布のように、大地の眠れる秘密を覆い隠していた。
早朝の寒気が、薄い紗のように「日の出学園」という名の私立小学校をそっと包み込んでいた。それは日本の北部、山々に囲まれ、人家もまばらな町の外れに位置していた。
その町の名は、多くの忘れ去られていく場所と同じように、未子にとっては、家に帰るための見慣れた道を意味するだけだった。古風な木造校舎は寒風に軋み、まるでいつでもこの広大で生気のない灰色の世界に飲み込まれてしまいそうだった。
町の老人たちはいつも言っていた。ここの雪には霊が宿っており、思い出されたくないものを覆い隠すことができる、と。彼らが言うには、ずっと昔、山の神が怒って大雪を降らせ、嘘をついた村を、その名と罪と共に永遠の氷の下に凍らせてしまったという。人々はそれを「空鯨の裏」――消えた村、と呼んだ。
未子の筆が描く線は遠い山の輪郭をなぞり、無意識のうちに、谷の影の部分に、ぼんやりとした鯨の骨格のような形を描き出していた。
小見川未子は、いつも最も早く登校する生徒の一人だった。彼女の小さな体はがらんとした運動場を抜け、キャンバス地の靴が湿った砂利道を踏みしめ、微かな音を立てた。
彼女の鞄は洗いざらしで白っぽく、肩紐の部分は同じ色の糸で細かく縫い直されていた。彼女はいつものように、校舎裏の低い窓が並ぶ方へ向かった。そこが六年生二組の教室だった。
教室には誰もいなかった。
未子は軋む引き戸を開け、窓際の最後から二番目の自分の席へ歩いた。彼女はすぐには座らず、鞄から丁寧に、縁の擦り切れたハードカバーのスケッチブックと、使い古して短くなった木炭筆を数本取り出した。これが彼女の世界であり、現実よりも安心でき、コントロールできる領域だった。
本を開くと、新しいページは空白だった。彼女の細い指が木炭筆を握り、窓の外に目を向けた。遠くの山々が薄霧の中にぼんやりと現れ、その輪郭は曖昧で優しかった。
彼女の木炭筆が紙の上を滑り、サラサラと軽い音を立てた。線は最初こそ少し躊躇いがちだったが、すぐに滑らかになり、遠い山の稜線、近くの数本の裸の枝、そしてすべてを覆う湿った朝の光を描き出した。彼女は人を描かず、風景だけを描いた。そこには、ほとんど寂寥に近い静けさがあった。
画用紙の隅に、彼女は極めて軽いタッチで、ぼんやりとした横顔の輪郭を描いた――病床に横たわる一人の女性、長い髪が枕に散らばっている。
それは彼女の母親、小見川由紀だった。未子の動きが止まり、木炭筆が母親の顔の部分で宙に浮いたまましばらく留まったが、結局、顔のパーツは描かなかった。ただ、より深い線で布団のしわの影を濃くした。まるでその影自体が、すべての重さと無言のため息を背負っているかのようだった。
家は静かだった。学校よりもっと静かだった。
父親は彼女が幼い頃に事故でいなくなり、残されたのはぼんやりとした影と、時折母親が口にするときの目の奥に瞬時に宿る暗い光だけだった。
母親の体はいつも悪く、まるでその事故で精気の大部分を吸い取られてしまったかのようだった。病床に伏せることが常態化していた。仕事?それはずっと前のことだ。未子は母親がキラキラしたビルで働いていたことを覚えていた。指がキーボードの上を素早く叩いていたが、具体的に何をしていたのか、母親はいつも言葉を濁し、「機械と話す仕事」とだけ言っていた。
その後、機械はもう彼女と「話す」必要がなくなったようで、代わりに病魔が彼女を襲った。生活の重荷が、母親の弱々しい肩に、そして未子の早熟な心に重くのしかかっていた。
だから、彼女は沈黙した。
沈黙ですべての不安、困惑、そして母親の病状への心配を包み込んだ。言葉は脆く、時には余計にさえ感じられた。画用紙は違った。線と影は、言葉にできない多くのことを載せることができた。
彼女は風景を描き、静物を描き、時には母親のぼんやりとした横顔を描いたが、笑顔は決して描かなかった――本当の笑顔は、もうずっと遠い、贅沢なものになってしまったようだった。
「よう!小見川、また絵を描いてるのか?すごいな!」活気のある声が教室の静寂を破った。白石翔太が風のように飛び込んできて、鞄を隣の机に無造作に放り投げ、未子の絵を覗き込んだ。
「うわ!この山、本物みたいじゃん!この霧の感じ……どうやって出すんだ?この黒い炭だけで?」
未子は無意識にスケッチブックを胸の方へ引き寄せ、軽く頷くだけで応えた。
白石はクラスの「太陽」で、いつも元気いっぱいで、何にでも興味津々で、人望も厚かった。彼の家庭も裕福ではなさそうだったが、それが彼の生まれ持った楽天的な性格に影響を与えたことはないようだった。
未子は彼を嫌いではなかったし、むしろ憂いというものを知らないかのような彼の状態を少し羨ましくさえ思っていたが、ただ、彼が過剰に情熱的に近づいてくることには慣れていなかった。
「今日、新しい先生が来るって聞いたぞ!」
白石は未子の沈黙を全く気にせず、自分勝手に興奮しながら話し、自分の椅子にどっかりと座った。椅子の脚が床と擦れて耳障りな音を立てた。「都会から来た、すごい『AI先生』らしいぜ!歌も歌えるし、話もできるし、絵も描けるんだって!前の、いつも怖い顔してた山田先生よりずっといいよな?」
新しい先生?AI?未子の心に、極めて淡いさざ波が立った。彼女は政府が田舎の先生が少なすぎるからと、機械の先生を導入するという話を聞いたことがあった。機械が……先生になれるのだろうか?彼女は機械が教壇に立つ姿を想像できなかった。工場のアームのようなものだろうか?それともテレビで見るロボットのようなものだろうか?
彼女は無意識のうちに、スケッチブックの新しい空白のページに、木炭筆で素早く、四角くて、電球の目と機械の腕を持つ輪郭を描いた。その線は少し硬直していた。
「おいおい、小見川、そんな怖いもん描くなよ!」白石が覗き込んできて、大げさに叫んだ。「俺が聞いた話だと、そのAI先生って、本物そっくりに作られてるらしいぜ!まるで……紙芝居の人形みたいだけど、動いて話すんだ!」
紙芝居?未子の頭の中に、お祭りで見た簡素な舞台が浮かんだ。厚紙で切り抜かれ、色鮮やかで、大げさな動きをする平面的な人形たち。あんなものが……先生に?
教室の生徒が徐々に増え、皆が口々にやってくる「紙偶先生」について議論し、その姿や機能を推測していた。雰囲気は少し騒がしかったが、そこには田舎の子どもたち特有の、新しいものに対する隠しようのない期待があった。
未子はスケッチブックを閉じ、木炭筆を丁寧にしまった。彼女は窓の外を見た。朝霧はもうほとんど晴れ、太陽が雲間から差し込み、湿った地面にまだらな光の影を落としていた。
新しい先生は……どんな感じなのだろう?彼女の心の中のさざ波は広がることはなく、むしろ静まり返り、ほとんど本能に近い、微かな警戒心に変わっていった。
機械、あるいはプログラムが、本当に下に座っている子どもたちの心を理解できるのだろうか?彼女が画用紙の隅に描いた、あのぼんやりとした横顔が象徴する重さを……理解できるのだろうか?
彼女には分からなかった。ただ静かに座って、その新しい担任の登場を待っていた。教室の喧騒は彼女から少し遠いように感じられ、ただ木炭筆が紙に残したサラサラという音だけが、指先にまだ残っているかのようだった。
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