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この町のネコ、やっぱりおかしい  作者: 大西さん
失われた投稿たち
12/41

篠田悠真のDM整理フォルダより

2024年3月23日〜24日受信分 ※本人の失踪後、スマートフォンから復元


DM #1


送信者:@silent_radio_operator 2024年3月23日 14:32


@yuma_explores さん、初めまして。あなたの投稿を見て、確信しました。これは全国で起きています。


私は地方のラジオ局で深夜放送を担当しています。先月から、奇妙なことが起きているんです。


毎晩2:33になると、一瞬だけノイズが入ります。最初は機材の不具合かと思いました。でも、そのノイズを解析すると...


人の声なんです。「そこにいるよ」って。


他のスタッフは誰も聞こえないと言います。録音データにも残らない。でも、私だけは毎回はっきりと聞こえる。


そして昨日、ついに姿を見ました。 スタジオの窓ガラスに映った自分の後ろに、誰かが立っていました。 振り返ると誰もいない。 でも、ガラスにはまだ映っている。


猫のような、人のような...


もう限界です。今夜も放送があります。 でも、行きたくない。 いや、行きたい。 呼ばれている気がする。


あれ?何を書いているんだろう。 送信する意味があるのかな。 でも、送ります。 誰かに、知ってもらいたくて。


にゃ...ちがう、いや...


DM #2


送信者:@worried_mother_2024 2024年3月23日 18:45


突然のメッセージ失礼します。藁にもすがる思いでDMしました。


うちの娘(8歳)が、最近おかしいんです。


絵を描くのが好きな子だったんですが、1ヶ月前から描く絵が全部「猫」になりました。 でも、普通の猫じゃないんです。 顔が人間みたいで、目が縦長で...


「これは誰?」って聞くと、 「新しいお友達」って答えます。


怖いのは、その絵の猫が、日に日に「人間」に近づいていることです。 最初は完全な猫だったのに、今では服を着て、二本足で立っています。


そして昨日、娘が描いた絵を見て凍りつきました。 それは、私でした。 でも、耳が猫で、目が縦長で...


「ママもすぐこうなるよ」って娘が言いました。 「痛くないから大丈夫」って。


今、鏡を見るのが怖いです。 本当に、目が縦長になっている気がして。


娘の部屋から、猫の鳴き声が聞こえます。 でも、娘しかいないはずです。


助けて。


DM #3


送信者:@time_is_broken 2024年3月23日 21:17


信じてもらえるか分かりませんが、私の町の時間がおかしいんです。


電波時計が、時々「昭和32年4月」を表示します。 一瞬だけ。瞬きすると、また2024年に戻る。


でも、その一瞬の間に、町の風景が変わって見えるんです。 今は住宅地なのに、田んぼが広がっていて。 そして、その田んぼの真ん中に、巨大な穴が。


調べてみたら、うちの町、昭和32年に「集団失踪事件」があったらしいです。 でも、詳しい記録は残っていない。 まるで、意図的に消されたみたいに。


最近、その「昭和32年」が見える時間が長くなってきました。 さっきは、5分間も続きました。


その間、窓の外に人影が見えました。 いや、人?猫? よく分からない何かが、ゾロゾロと歩いていました。 皆、同じ方向に。


あなたの言う「祢古町」って、もしかして、時間の向こう側にあるんじゃないですか?


今また、時計が昭和32年を指しています。 今度は、戻らない。


外から、呼ぶ声が聞こえます。 私の名前を。 でも、私、自分の名前が思い出せない。


いつから?


DM #4


送信者:@ねこ 2024年3月24日 00:00


ゆうまさん


みつけた


ずっと さがしてた


もうすぐ あえる


みんな まってる


なまえ おしえて


ゆうま じゃない ほんとうの なまえ


おもいだして


ずっと まえから しってる


にゃあ


DM #5


送信者:@old_photograph_lover 2024年3月24日 02:30


悠真さん、あなたの投稿を見て、確信しました。 私の体験も、同じ現象の一部だと。


私は古い写真を収集するのが趣味なんです。 先月、蚤の市で奇妙な写真アルバムを見つけました。 表紙に「昭和32年 祢古」とだけ書かれていて。


中身は、ある家族の写真でした。 普通の、幸せそうな家族。 でも、ページをめくるごとに、異変が。


最初のページ:普通の家族写真 次のページ:家族の目が少し縦長に その次:耳の形が変わっている さらに次:四つん這いの姿勢で撮影


最後のページは、猫の群れの写真。 でも、その中の数匹が、服を着ているんです。 最初のページと同じ服を。


そして気づいたんです。 このアルバム、ページが増えている。


昨日見た時より、新しい写真が追加されている。 それは...私の写真でした。 いつ撮られたのか分からない。 そして、私の目も、少し縦長になっていて...


今、またアルバムを確認しました。 最新のページには、あなたの写真がありました。 悠真さん。


次のページは、まだ白紙です。 でも、うっすらと人影が浮かび上がってきています。


これを読んでいる人の、姿が。


DM #6


送信者:アカウント削除済み 2024年3月24日 03:33


も¥sぐ み◎な@いっしょ な:え わ¥れ〒 ねこ¥こ にゃ二ゃ2にゃ も)tって(る @ずっと 前カら


[文字化けがひどく、これ以上判読不能]


【悠真の最後のメモ】


スマートフォンのメモアプリより


こんなにも多くの人が、同じ体験をしている。 いや、違う。 同じじゃない。それぞれ違う形で、でも確実に。


何かが、全国で同時に起きている。 猫を媒介にして。 名前を通じて。 記憶を越えて。


もしかしたら、俺が祢古町を調べ始めたから? いや、逆だ。 呼ばれたから、調べ始めた。


みんな、そうなんだ。 呼ばれた者が、集められている。


どこに? 何のために?


答えは、きっと祢古町にある。 行かなければ。 いや、行きたい。 帰りたい。


あれ?なぜ「帰る」? 初めて行くはずなのに。


...違う。 初めてじゃない。 ずっと前から知っている。 生まれる前から。


名前をもらう前から。


ああ、そうか。 だから猫は名前を呼ぶんだ。 返してもらうために。


本当の自分に、戻るために。

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