第4話『王都博覧祭、営業でぶち抜け!!』(前編)
王都の中心部、広大な公園のような敷地に白と金のテントが並び、人々の喧騒と香ばしい屋台の匂いが入り混じっていた。
王都の中央広場。今まさに始まろうとしていたのは、年に一度の商業の祭典――
《王都博覧祭》
——王都全体の全ての貴族や商会が一堂に会す、年に一度の“商業博覧祭”である。
魔道具、薬草、金属加工、魔獣素材……職人や商人たちが腕によりをかけた品を競い合う、王国最大級のマーケットフェアだ。
黒田一行は、その中央ブースの一角を手に入れていた。
新たに経理としてサムを迎えた黒田一行は市場の露店から、新たに市場を取り仕切る“商会”としての立場を獲得するべく、ギルド(商会)の設立許可証の認定が必要であった——
ここで実績を上げれば、正式なギルド――すなわち“会社”の設立が許可される。
つまり黒田商会(仮)にとっては、出世の登竜門とも言えるイベントだった——
「くぅ〜〜、ついに来たか……!」
黒田は小さく拳を握る。
「黒田さん、気を抜かないでくださいね。ここは地方の即売会とは違いますから」
クレアが厳しい口調で釘を刺す。彼女もきちんとした制服姿に身を包み、どこか背筋がピンとしていた。
「えへへ、でもルミナ、こんなに人がいるとワクワクしてきました!」
ルミナは鼻息荒く、パンフレットを抱えてきょろきょろと見回している。
一行は、主催である「王都商業ギルド」の本部テントへと向かった。
「黒田様ご一行ですね。地方商会からの参加、ようこそ」
声を掛けてきたのは、ギルド職員の可愛らしいエルフの少女だった。
「本日はお招きいただきありがとうございます!代表の黒田です!」
黒田の凛とした姿勢に少々動揺しながらもギルド職員の少女は資料を手渡した。
ギルド職員「…今回の出展商材は、ギルド側からの指定制です。ご覧いただけますか。」
資料を受け取り、目を通すや否や、黒田の顔が引きつる——
黒田「《破滅龍のかぎ爪》……!? ちょ、ちょっと待ってくれ、これは……!」
ギルド職員「未討伐のS級魔獣だそうです。現物の仕入れからお願いしますね。」
黒田・クレア「し、仕入れからッ……!?」
「ふ、不可能です、そんなの!わ、わたしたち、戦えませんよ!?」
ルミナが青ざめる。
「うむ、戦闘要員ゼロ……か。これはまた盛大に吹っ掛けられたのぅ…」
サムも頷く。
「……行こう」
黒田が静かに口を開いた。
後編に続く…