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【異世界営業マン】  作者: 穢月
第1章
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第1話『転生先は営業未開の地!? 売れ残り野菜で村を救う男』

前回のあらすじ

公園のベンチで寝そべっていた黒田は、突如雷に撃たれ、目が覚めるとそこは“異世界”だった!?

そして、≪スキル:セールス≫を手に入れるが、またもや突然背後からモンスターに襲われ、命からがら

近くの村へ逃げ延びる。そこで出会った村長に、寝床と飯を提供する代わりとして、『営業』を頼まれるのであった…

村長に連れられて村の市場についた黒田は驚く。


『値札がない』

『並べ方が雑』

『商品に泥や土がついていて汚い』

『店主がずっと座って仏頂面』


(売る気あんのか…タダでも買わねぇぞこんなん…)


「“やる”と言ってしまった以上引き下がれねぇか…なら、

やるしかねぇ!!」


──《スキル:セールス》発動──


──視界に浮かぶ“顧客好感度”“ニーズ”“顧客心理”“訴求ポイント”が可視化されるようになった。


「まじかよ!最強なんじゃねこれ…」


通りすがった人々の情報をもとに声掛けを開始する黒田


「お客さん、このイアンド大根、見た目はアレですけど、煮込むとホロッと甘くてですね、さっきののおばあちゃんも、二本買ってましたよ!お子様もきっと好きだと思いますよ!」


「……ほんと? じゃあ一つだけ……」


(来た! 興味段階クリア!)


「しかも今なら“まとめて割”してます! 三本買えばおまけにもう一本!」


「あらまぁ!じゃあ…ご近所さんにもおすそ分けしちゃおうかしら」


(よしよし…どうやら話は聞いてくれる村人達だな…あとは…)


黒田は、せっせと野菜をナイフで切り、実際に食べてみて買ってもらおうと

“試食コーナー”を作った


村長はあっけにとられた表情で

「あんな大胆な売り方…はじめて見たぞ。すごいなあの転生者は…」とつぶやく。


客「このニンジン、なんでこんな甘いの?」


(食いついた…!よし、だったら異世界初の『クロスセル*』だ!)


「“土の子ニンジン”ですね。深い土でじっくり育てたおかげです。実は村のヒロさん一家が丹精込めて育てたんですよ。もしよかったら、この“輝きゴボウ”も一緒にいかがです?一緒に炒めると甘みがより増しますよ!」


客「じゃあ…どっちも2つずつくださる!?」


その後も、通りすがりの村人が、ふらりと立ち寄ってはポツポツと購入。

気づけば行列ができ、商品棚は空に。


そして、1日が終わった頃には――


「ぜ、全部売れた……!」


市場に残されたのは、空になったカゴと、信じられない表情の村人たち。


農夫「お、おらのゴボウが完売……!? 村祭りでも残ったのに……!」


—野菜を完売した黒田は、売り場の片付けを終えてベンチに腰掛ける。

肩の荷を降ろしたように、深々とため息をつく。


「……ふぅ。よし、今日は働いた。もう明日は休みでいいな……」


そこへ、バタバタと土埃を立てて少女が走ってくる。

息を切らして、髪もボサボサ。薄桃色のリボンを付け、長靴を左右逆に履いている。


「すごかったです! クロダさん! いや、クロタさん!? どっち!?」


「落ち着け。どっちでもいいよ」


彼女は“ルミナ”市場の農家の娘で、今日たまたま野菜を運びに来ていたという。


「……その、あの……あたし、“弟子”にしてください!」


「えぇ……いや、俺、めんどくさいこと嫌いで……」


「それでもいいです! めんどくさくても、動いて、しゃべって、笑って、買ってもらうのが、かっこよかったんです!」


——勢いと熱意に押されて、気づけば「明日から一緒にやるか」と言っていた。


めんどくさいなぁと思いながら、ちょっとだけ、誰かに必要とされた気がして。

やってやるか——“異世界営業”

*クロスセル:「お客さんが買おうとしている商品に合う、別の商品も一緒におすすめする売り方」

たとえば、ラーメンを注文したお客さんに「餃子やライスもいかがですか?」とすすめるようなイメージです。これは「ついで買い」を促すテクニックで、「クロスセル(クロスセリング)」とも呼ばれます。

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