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ガロワのソラの下で  作者: 友枝 哲
65/66

∫ 9-6.ガロワのソラの下で dt

まえがきは割愛させていただきます。

毎日0~1時の間に次話投稿いたします。


 

 9、8、7、、6、、、5、、、、4、、、、、、


 レイは時間がゆっくりになるのを感じた。


 3、、、、、、、、、2、、、、、、、、、、、、、


 1、、、、、、、、、、、、、、、、


 レイの心臓の音が高鳴る。


 ミライにはまるでレイの心臓の音が聞こえてくるような感覚があった。



「りょーじ、、、小林さん、浜辺さん、、、ごめん。押せない。。」



 ボタンが冷たく重く光っていた。


 そして、ついにはタイムカウントダウンが終わりを向かえた。


 レイが涙を流してミライを見た。


「ごめん。何もできなかった。」


 それを見てミライが首を振った。


 そして、レイの胸に頭を押し付けた。


「ううん。レイ君らしい。大丈夫。あたしも一緒だから。」


 上から降りてきたアンドロイドが木の向こうからどんどん近づいてくる。


 アンドロイドは先ほど下で受けた金形の反撃を共有していた。


 相手に反撃の機会を与えないようにするため、少し離れた位置から攻撃を仕掛けようとしていた。


 レイとミライの隠れる木の方に向かって、腰を低くして構えた。


 そして、足からストッパーが出ると同時に肘が折れ曲がった。


 折れ曲がった音の後、ドッと何かが発射される音がした。


 レイは死を覚悟し、ミライをグッと強く抱き締めた。


 近づくロケット。


 まるで時間がゆっくり流れるようにレイには感じた。


(死ぬ時って何かゆっくりになるって聞いたことがある。これがそれなのか?)


 そして、レイの目の前が真っ白になっていく。


(死んでしまうのか!?)


 その時、レイにはどこからか声が聞こえた。


「やっぱりだ。。。間に合った。」


 ハッとレイは周りを見回した。


 色は元に戻っていたが、声の主と思われる者は誰もいなかった。


「誰!?」


 レイはある異変を感じた。


 周囲の音が小さくなっていく。


 そして、時間の流れがどんどんゆっくりになっていくのも感じた。


 その声が聞こえてから、いつまで経っても周囲からは攻撃を受けずにいた。


 先ほどまで恐ろしいほどの数の弾丸が飛んできたにも関わらず、今は全く飛んできていない。


 レイは不思議がって、ミライを見た。


 ミライも緊張からか動けずにいるようだった。


 そして、身体を少しだけ木の影からのぞかせ、木の後ろを見た。


 ロケットがこちらに飛んできていた。レイはハッとした。


(ロケットが飛んできている。やばい!)


 ところが、すぐに気がついた。


 そのロケットから上がる煙がとてもゆっくり動いていた。


 レイは周りを見回した。


「何だ!これは!!?」


 次の瞬間、レイは自分の中に全能感を感じ取った。


 レイは手を見た。


 いつもと変わらない手。


 だが、何かが違っていた。


 レイはミライをそっと木にもたれかけさせ、1人でロケットに近づいた。


 そして、ロケットをそっと触った。


 すると、ロケットが組み立てられる前の部品単位で分解された。


 さらにその部品一つ一つが加工前の金属の固まりに戻っていく。


 レイは木に向かって飛んできている弾丸にも触れる。


 弾丸はグニャッと曲がり、これも加工前の金属の固まりとなった。


 その固まりを一つポケットにしまった。


 レイはアンドロイドの前に移動した。そして念じた。


(もう戦いをやめるんだ。)


 そう願って、レイはアンドロイドに触れた。


 アンドロイドが分解されることはなかった。


 だが、レイにはアンドロイドの中の敵意がなくなったのを感じ取れた。


 そして、レイはミライのもとに戻った。


 レイは傷ついたミライの右腕を触った。


 ミライがレイと同じように動き出した。


「あれ!?レイ君?」


「じっとしてて。」


 レイの手がミライの腕を軽く撫でると、ミライの受けていた傷はまるで何もなかったかのように消えていった。


「傷が消えた。。。」


 レイはミライの手を握り、ゆっくり立ち上がらせて、木の影から出た。


 すると、周囲の時間の流れも元に戻った。


 レイに触れられたアンドロイドは武器を下ろして、動きを止めた。


 レイは目を閉じた。


 すると、意識が山道の下にいる小林と浜辺の方に飛んでいくのを感じた。


 2人にアンドロイドが近づいているが、まだ2人とも生きているのをはっきりと感じた。


 レイはミライに言った。


「大丈夫。小林さんと浜辺さん、生きてる。」


「うん。何となくあたしも感じる。」


 レイはミライを見ながら頷いた。


 戦意を失ったアンドロイド以外はレイとミライを攻撃しようとした。


 さらに空の上には歩兵輸送機3機が姿を現した。


 レイは左手を天にかざした。


 空気の屈折率のせいなのか、虹色の波紋のようなものがレイの左手から全方位に伝わっていった。


 その波紋を受けた銃やロケットなどが分解されていく。


「すごい!なに、これ?」


 全てのアンドロイドは戦意をなくし、ただただ立ち尽くしていた。


 そして、再び世界が白く染まっていく。


 次はうっすらではなく、はっきりと白く変わっていった。





 グレイも映像を見て、その世界が白く染まっていくのを見た。


 そして、自分の周囲も白く染まっていくのを感じた。


「おれは何をやってるんだ。。。。」





 金形は意識を取り戻した。薄目で世界が白くなっていくのを見た。


(はは。。。死ぬのか、おれ?)


 再び目を閉じた。





 小林も浜辺も白く変わっていく世界が見えた。


 小林が腰を押さえている浜辺の手を退けた。


 小林の腰の傷が治っていた。


「傷が治ってる。。。」


 浜辺が目線を傷口から小林の顔へと移した。


 小林も浜辺を見つめた。


 二人は顔を近づけた。


 全てが白く染まっていく。


 うるさく感じるほどの静寂が包む。


 そして、何もなくなった。


 次に一言声が聞こえた。





「これで完了だ。」





「所長、所長。大丈夫ですか?」


 その声にレイが目を覚ます。


 腕の中にはミライがいた。


 ミライも目を覚ました。


 レイとミライは白い建物の壁にもたれかかっていた。


 ミライの横には小林と浜辺も壁にもたれ掛かって、まだ目を開けていなかった。


 そして、目の前には金形が小綺麗な警備員服で立って、4人に声をかけていた。


「所長、副所長まで。それにゾディアックホールディングスの社長、副社長まで。


 どうしたんです?その格好。。。」


 小林と浜辺も目を覚ました。


 浜辺が金形を見て、叫んだ。


「金形さん、大丈夫ですか!?」


 金形はキョトンとした顔をした。


「私がどうかしましたか?浜辺副社長!?」


「副シャチョー?」


 金形がハッと思い出した。


「そう言えば、柊所長。今日、すぐにでも仮想世界にアクセスするというお話でしたが。すでにされましたか?」


「仮想世界?」


「はい。仮想宇宙です。」


 レイは驚いた顔ですぐに反応した。


「えっ?どこに、どこにあるんです!?」


「えっ?どこって?あっ、あの、ここの研究所の端末室。。。」


 4人はお互いを見合って、白い建物の方に走っていった。


 守衛のアンドロイドがお辞儀をする。


 レイたちはギョッとした。


 先ほど、自分達を襲ってきたアンドロイドたちだった。


 だが、今は敵意を感じなかった。


 4人は少しゆっくりアンドロイドの横を通過した。


 建屋に入り、端末室に行こうとしたが、どこか分からなかった。


 金形も4人の様子が変だと思い追ってきていた。


 浜辺が金形に聞いた。


「さっきの端末室はどこですか?」


「えっ?もちろんこの建屋の4階ですが。」


「ありがとうございます。」


 レイはエレベータのボタンを押したが、エレベータがなかなか来ない。


 4人は、じれったくなり、その横の階段で4階まで駆け上がった。


 中の構造は旧研究棟の端末室に似ていた。


 浜辺が端末のキーを叩くとすぐにOSのロゴが表示された。


(Quantam Gate 27)


「おお!あったらしー!!」


 フォルダ構成は全く同じだった。


 Viewerで世界を覗いた。


 レイが思った通り、すでに座標が地球に設定されており、今まさに森の中で4人がアンドロイドに攻められているところだった。


「やっぱりだ。。。間に合った。」


 レイが叫ぶ。


「時間を止めて!!」


「はい!」


 時間が止まった。


 ミライがそれを見て驚いた。


「これってやっぱりさっきの。。。」


「うん。きっと。」


「ぼくらはたぶん一つ上の階層にいるぼくらに。」


「そういうことですね。」


 ミライは左腕を見た。そして小林は右腰を見た。


 が、すでに傷は消えていた。


 ミライがみんなを見ながら言った。


「あれは本当だったんだよね!?」


 レイがポケットの中の金属の塊に気がついて、取り出した。


 まだ少し弾丸の形状を残した金属片を3人が見る。


「これ、あの時に弾丸に触れたら、これになったんだ。」


「ということは、きっと。」


 浜辺が端末を触っていて、気になる点を発見した。


 ログフォルダというフォルダの中に無数の時間を記したフォルダがあったのだ。


 一日単位でフォルダが作られており、そこには2066年11月4日、つまりレイの8歳の誕生日であり、レイの父親が信号をキャッチした日、その日からも一日単位でフォルダが存在していた。


 そして、2076年9月1日、つまりジュネーブの爆発事故の数日前からも同じように一日単位でフォルダがあった。


「ちょっと見てください。これってもしかして日毎のログデータ?こんな膨大な?どうやって?」


 みんながそのフォルダ群を見た。


 浜辺がそのフォルダの中身を確認したが、たぶんそれはその世界のデータであろうということだけしか分からなかった。


 4人にとって、この世界の日時でのフォルダが存在すること自体が不思議で仕方がなかった。


 創った宇宙はプランク時間単位で動いているのだから。


 4人は確信めいた表情でお互いを見た。


 そして、みんなが僅かにでも考えていることを小林が口にした。


「これを使えば、過去の人たちを。。」


 みんながレイを見た。


 レイはどうすべきであるかを考えた。


 そして、その内容を4人で話し合った。


 その後、4人は止めた世界を変えるツールを作り上げたのだった。





「これで完了だ。」


 そのツールを止まっている世界に適用した。


 4人は止まっていた世界が再び動き出すのを見た。


 そして、自分達が創った世界と自分達が今生きている世界が繋がっていることを再認識した。


 また、自分達の世界を創った自分達もいるのだろうと認識した。


 その瞬間、4人の意識が拡張するのを感じた。


 自分達が創った世界と同じように、自分達の世界にも何万種もの知的生命が活動していて、答えを探しているのだということも感じ取れた。


「この世界にはまだまだ知らないことがたくさんありそうね。


 なんか、くすぐったい。」


 ミライが肩をすくめながら言った。


 ミライの言葉にレイも肩をすくめた。


「そうだね。くすぐったい。『くすぐったい』ね。」


 レイはミライを見た。


 そして、4人がそれぞれを見合った。


 4人は、心の中にある重力のヒモがさらにほどけていくのを感じていた。





 数日後、レイは大学の大講堂で新たなプロジェクト発足の発表会を行っていた。


(NT-D Project)

(S2 Energy Project)

(Tachyon Commu Project)


 発表者が集う壇上にはミライ、小林、浜辺もいた。


 その奥には加地教授の姿もあった。


 レイは壇上の中央で(S2 Energy Project)について説明していた。


「これにより、世界は新しい一歩を踏み出すのです。


 誰もがエネルギーを享受できる世界。


 これを実現する。


 国の垣根もありません。


 我々は一つの世界にいるのですから。」


 マスメディアやオンラインで世界に発信されていた。


 プロジェクト発足発表会は大盛況に終わった。


<エピローグへ>


<次回予告>

アンドロイドに殺されそうになったその時、

突然、世界が書き変わった。

自分達が作った宇宙では同じ状況に陥った自分達が。

その自分達を助け、世界はようやく落ち着きを取り戻した。

その時、なぜか4人は同時に旧研究棟が気になりだすのだった。

次話、エピローグ+あとがき!!

彼らのその後をちょっとと、筆者の想いをお楽しみください。

最後もサービス、サービスぅ!!


<あとがき>

この世界がデジタル世界であることが今現在でも言われています。まさにこの物語は「それ」でした。階層がどこまであるのか。気になりますね。

さて、本編ですが、次回は「エピローグ」とこの物語で伝えたかった内容をまとめた「あとがき」です。乞うご期待!!


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