〜第9章 ガロワのソラの下で〜 ∫ 9-1.容疑者捕捉指令発令 dt
まえがきは割愛させていただきます。
毎日0~1時の間に次話投稿いたします。
各自、緊急時即時連絡アプリなどを使い、回りの関係者の安全を確認した後で、再び集まった。
レイは一つ心配事があった。
「ところで、浜辺さん、さっきのワクチンですが、場所を特定されることはないんですか。」
「心配ご無用です。ステルス機能は備えてますよ。方法は企業秘密ですけどね。」
「さすがね。指一本で世界を滅ぼすことができるヨタヲタ女子。」
「ふふ。お褒めに預かり光栄です。」
「褒めてはないような気もしますけどね。」
小林が笑った。
「でも、私、今回のでつくづく思ったんです。確かに私には世界を滅ぼすことはできるかもしれませんけど、柊先生や小林先生のように世界を作る法則を見いだすことや、ミライさんみたいに全ての法則を兼ね備えた数式を創り出すことはできません。羨ましいなって思います。」
「あんたもそれをプログラムにしたじゃない。十分世界を創り出している。あたしにはそれはできないしね。」
「AIの意志決定が補完しあってたように、僕らもそれを補完しあえれば、それが素晴らしいことなんじゃないでしょうか。ですよね?柊先生。」
「そうですね。ぼくたちが感じたことをいつか世界中の人に感じてもらえる日が来るまで、ぼくたちはこの世界を見守りましょう。」
その時、レイの頭にふとある想いがよぎった。
「そうだ。今日、もう一つだけやらせてほしいことがあります。」
「ん?なに?」
ミライが問いかけた。
ミライは質問しながら先ほどあったような想いの連動がないことに気がついた。
あれはなんだったのだろうか。
そう想いながら質問を投げ掛けていた。
「少し時間を早めて、助けたい人がいます。」
ミライはその言葉で分かった。
「波多野のこと?。。。」
ミライは今やらなくても良いのでは?と思ったが、再び先ほどのようなことが起こり、時間が早まってしまったら、、、そう考えてレイは早く波多野を助けたいと思っている、そう感じた。
「そう。あの事故を防ぎたい。それだけ。それだけ、この世界に関与することを許してほしい。」
小林は、以前にレイがひどく力を落とした時期と一つの事故を思い出した。
「ああ、ジュネーブの爆発事故。。。」
浜辺はすぐにOKした。
「いいんじゃないですか。私は以前から柊先生が思うようにすれば良い。そう思ってましたから。」
小林も少し間が開いたが、ゆっくり頷きながら言った。
「そうですね。神が生まれてしまわないように配慮は必要かもしれませんが。それさえ、考慮すれば良いんじゃないでしょうか。」
「ありがとうございます。」
レイはミライを見た。ミライはレイを見て微笑んだ。
浜辺はクルっと椅子を回し、端末に向かった。
「分かりました。じゃあ、速度を上げますね。一時間くらいで、その時期に持っていきます。良いでしょうか。」
「はい。じゃあ、それでお願いします。」
浜辺は時間の設定を入力した。
「じゃあ、設定スタート。」
ポチっと押すと時間の流れが速くなった。
ミライがレイに提案する。
「どうやって食い止める?四粒子がぶつからないようにする?」
小林がその提案に反論した。
「でも、それだと、再び衝突実験をやってしまわないですかね?それはこの世界とは異なる進み方になるので、いつまた実験をやるのか、注意深く見ていく必要が出てきますよ。」
「確かにそうね。」
浜辺が言った。
「じゃあ、空港でその人のエアチケット、消去してしまうのはどうです?」
「でも、それって爆発事故は起きるんじゃ。。。」
再び、小林が指摘した。
レイが言った。
「衝突エネルギーを落とすのはどうでしょう?
50プランク時間ではなく、10プランク時間程度になるようにするんです。
そうすれば爆発は起きますが、装置だけで人命は助かるでしょう。
この実験は危険が伴うことも理解できますし。」
「なるほど!それだ!」
「さっすが、柊先生。」
「そうと決まれば、コーヒーでも飲んで少し落ち着きましょうか。」
小林がコーヒーを淹れようと、コーヒーミルのところに移動を開始した瞬間、突然、バンという音と共に旧研究棟全体の電源が落ちた。
表示していた画面が全て消えた。入り口にあるタッチセンサなどの表示も全て消えていた。
BCDは内部電池と体温発電での補助もあり、しばらく使えそうであったが、電波充電は落ちていた。
端末が使えなくなり、浜辺が焦りの声を出した。
「ちょっ、どういうこと?」
「停電でしょうか。あっ、でも、大丈夫ですよ。きっと、すぐ補助電源が作動します。」
ところが、しばらくしても補助電源が作動することはなかった。
「あれ?おかしいですね。」
「この端末じゃないと時間設定が戻せないんじゃなかったっけ?」
ミライの質問に浜辺がゆっくり不安そうな顔で頷いた。
その内容にレイも確認する。
「16箇所の時間パラメータを入力すれば変えられませんか?」
「でも、その場所をランダムに決めてて、その場所がこの端末じゃないと。。。」
レイの心にも不安がよぎった。
金形は旧研究棟を出て、駐車場に向かって歩いていた。
夕方になっていたが、まだ日が眩しかった。
ふと旧研究棟を見た時だった。
周囲でバンという音がした。
旧研究棟から離れた正門側の棟が遠くに見えていた。
壁に明るく表示されていた構内伝達事項やニュース、その他掲示物の情報が一斉に消えてしまった。
「うん?なんだ!?」
金形は妙な胸騒ぎを覚えた。
もしやと思い、BCDの警視庁専用機能をONにした。
そこに驚くべき内容が記されていた。
(クラッカー捕捉目標:浜辺小春 現場:第二新東京工科大学 現状況:強制電源遮断)
「これはどういうことだ?」
金形は慌てて、警察専用周波数での通信に切り替えた。
「...ロイド、ドローン隊、C型装備にて発進済み。
あと、十三分で目標ポイント到着予定。
容疑者は武装の可能性あり。多人数の可能性あり。
繰り返す。
米国より先のハッキング容疑者の情報提供あり。
即時捕捉の要請あり。
容疑者の名前は浜辺小春。
アンドロイド、ドローン隊、C型装備にて発進済み。
あと、十二分で目標ポイント…」
金形は全速力で旧研究棟に走った。
走りながら、警視庁の捜査二課に電話をした。
すぐにAIによる受け付けが開始された。
「捜査二課 金形幸一、認証番号3263827だ。捜査二課長に繋いでくれ。」
「金形 幸一様、音声認識一致、認証番号一致。捜査二課長に繋ぎます。」
「おう、おれだ。金形、また通信切ってたろ。お前、また始末書書きたいのか!?」
「毛利さん、すまん。ちょっと聞いてくれ。
なんです?この容疑者、浜辺って?
さっきの事件、容疑者は浜辺じゃない。グレイだ。
アメリカ国防総省のグレイ・ロズウェルなんですよ。
証拠もある。今から無力化したウイルスファイルを送る。
関数名や変数名にやつのイニシャルが…」
その時、金形は驚くべき情報を聞いた。
「お前何を言ってんだよ!そんなわけないだろ!?そのグレイ・ロズウェルなんだよ。今回の情報提供者が。」
「は?何を。。。ひとまずファイルを送る。ちゃんと確認してくれ。」
金形は走りながら捜査二課の上司である毛利にファイルを送った。
そして、息を切らしながら旧研究棟についた。
「えーと、暗証が。。。」
BCD内のファイルに書いていた暗証を引っ張りだして、なんとか旧研究棟に入った。
金形は彼らがいた旧情報端末室に向かった。
金形は4人のところに息を切らしながら走って戻ってきた。
「はぁ、はぁ、はぁ、今すぐ。はぁ、はぁ、ここを、はぁ、はぁ、出るんだ。」
全員が金形の方を向いた。
4人は、非常電源にも切り替わらず、不安になりつつ、Viewerで世界を見ていたところであった。
「どういうことです?」
「話は、はぁ、はぁ、、、後だ。ひとまず、ここを出るんだ。はぁ、ドローン隊が飛んでくるぞ。」
「でも、ここでしか端末が扱えない。」
「浜辺さん、あんた、、、、さっきの異常な事件の首謀者にされているんだ。だから、いいから、速く!急げ!」
小林がことの重大さを感じ取った。
「行きましょう。これは一刻を争います。」
そう言うと、4人は旧端末室をあとにした。
警察署では警察用ドローンが次々と出動していた。
また、犬型や人型アンドロイドも多数出動していた。
もちろん人間も出動していたが、警察ではこういった事態において、人はアバターアンドロイドを使って出動していた。(スカイドライブにはアンドロイドは重くて乗れない。)
4人は旧研究棟を飛び出た。
浜辺は自分のBCDの位置データを消していたため、発見されることはなかった。
顔認証をしようにも旧研究棟の前にはカメラが設置されてなかった。
金形が浜辺の行方を突き止められなかったように、警察もその行方を追うことはできていなかった。
仮にあったとしても現状電源が遮断された状態においてはどうすることもできなかったというのが事実ではあった。
ただ、一つつだけカメラがあった。
遥か4万キロ上空にあるアメリカ所有の常態監視静止衛星が構内の動きを捉えていた。
動き回る人全員を顔認証にて浜辺であるかどうかの判断をしていた。
そして、ついにカメラは駐車場に移動する浜辺を発見した。
更に、その浜辺と同じように動く3人も捉えられた。
グレイは衛星画像を見ていた。
画像には人物特定がされ、動く人物像に名前が付けられていた。
「ビンゴー!!小林もか。やっぱりお前らが何かやってたんだろ?」
まるで犯人でも見つけたかのような表情で4人が映る画像を睨んでいた。
「おれから逃げられると思うなよ!!」
飛んでいくドローン隊、走っていく犬型、人型アンドロイドに情報が送られる。
(浜辺小春、発見。
第二新東京工科大学東側駐車場に移動中。
容疑者追加、小林秋雄、柊レイ、夏目ミライ。
同駐車場に移動中。)
金形は疲労で遅れを取っていた。その情報も送られていた。
(捜査二課 金形警部補 犯人を追走中)
4人は小林の車に到着した。
小林が言う。
「どこに行くんです?」
「逃げるにも街に出たら、センサで位置がばれるし、アンドロイドがいっぱいだから捕まっちゃうんじゃない?それに、宇宙を取り返さないと。。。」
ミライの言葉にレイが反応する。
「学校の電源も復旧させないと。。。今のままだと時間が過ぎてしまう。
何とかして端末を取り返して、時間だけでも止めておきたい。」
「少しパワーのあるPCがあれば良いんですけど。」
浜辺が話している間に、ようやく金形が追い付いてきた。
「お前ら。。。はぁ、はぁ、どこにいくつもりだ?」
浜辺が金形に駆け寄った。
「学校の電源を復旧させたいんです。あと、PCと。」
「はぁ、はぁ、あの世界が気になるのは分かるが、はぁ、はぁ、お前ら、自分たちの身の安全を考えないと。」
「分かっています。」
「まずは逃げろよ。はぁ、はぁ、あと、電源ならあの山の変電所だろ。きっと。はぁ、はぁ、この大学の電源切ってんのは。
あそこならそれなりのPCか、装置かがあるはずだ。」
金形は二子山変電所を指差して言った。
「なるほど!まずはこの車のCPU使って。その後は変電所ですね。」
浜辺が金形にお礼を言った。
「金形さん、いい人だったんですね。ありがとですっ!」
「おれは出来るだけ、あのプログラムで真実を伝えるようにする。真実が明らかになるまで、絶対捕まるなよ。」
金形は自分の車の方に移動した。
4人は小林の車に乗り込んだ。
小林が電源ボタンを押し、音声にて行き先を指示した。
「二子山変電所」
次の瞬間、窓ガラスに(Alert)が表示された。電子音声が響く。
「小林秋雄、交通法により指名手配者は運転できません。」
それを聞いて、浜辺がBCDで何かを打ち込んでいた。
金形が自分の車で小林の車の横に移動して来た。
金形は窓ガラスの(Alert)を見て、窓ガラス越しにこちらに乗れと叫んでいた。
そして、金形は車を降り、小林の車のドアを開けようとしていた。
だが、ドアはロックされていて、開けることができなかった。
小林が何かをしている浜辺に言った。
「金形さんが車に乗れって。。。」
レイとミライは浜辺が何をしているのか薄々分かっていた。
二人は後部座席からそれを見守っていた。
「できた!」
浜辺の声と同時に、窓ガラスの(Alert)表示が消えた。
代わりに(マニュアル運転)という表示とハンドルやペダルが運転席のところに出てきた。
それを見ていた金形は驚きの顔をしていた。
「世界を滅ぼせる少女か。。。」
「小林さん、運転替わって!」
ミライが咄嗟に言う。
「えっ?夏目先生、運転できるんです?」
2人は難なくドアを開け、入れ替わり、ミライが運転席に座った。
「良い子ね。あんたに生命を吹き込んであげる!」
レイは慌ててベルトをした。
小林の車は急発進をして、駐車場を横断し、ドリフトしながら駐車場を出ていった。
その挙動に浜辺と小林は驚き、急いでベルトを締めた。
金形は呆然と車の動きを見ていた。
「なんだ!?あのテクニックは。。。」
<次回予告>
犯人に仕立て上げられた4人。
旧研究棟の電源を復旧させるべく二子山変電所へと向かった。
ミライが小林の車を運転して。
彼らは追手を振り払い、宇宙を取り返すことができるのか?
次話サブタイトル「ヤシマ作戦!?二子山変電所へ」。
次回もサービス、サービスぅ!!
<あとがき>
濡れ衣を被せられた主人公たち。この状況でも創った宇宙の時間はどんどん進んでしまいます。果たして創った世界の中の波多野は助かるのでしょうか。
次回、「ヤシマ作戦!?二子山変電所へ」乞うご期待!!




