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ガロワのソラの下で  作者: 友枝 哲
58/66

∫ 8-3.時空の暴走 dt

まえがきは割愛させていただきます。

毎日0~1時の間に次話投稿いたします。


 

 グレイがプログラムを実行して、ものの数秒で自らもログインできない状態に陥った。


 BCDだけは無事だったが、各種サーバーがダウンしてしまい、ホームページすら開けない状態であった。


 しばらく時間が経ち、かろうじて開けた動画には、一部が壊れているものの、アンドロイドが活動停止する映像、自動運転の車が店につっこむ事故、病院での動力システムダウンによる手術停止、航空機の墜落事故などの被害が映し出されていた。





 少年レイは父親と母親が天文台から帰ってくるのを家の前で待っていた。


 三日前から急に星の一部が見えなくなる現象が起こっていた。


 そして、レイの父親が発見した宇宙からの信号も途絶えていた。


 更に、いろんな異変がこの世界で起こり始めていた。


 都市内の一部が立方体状に突如えぐり取られた。


 えぐられた空間は物質がない状態となり、急激な圧力低下によってその地帯には突風が吹き荒れた。


 また、海の中でもそのような現象が発生し、突然津波がところどころに押し寄せた。


 この人知を越えた現象は、人々に対して、レイの父親が宇宙からの信号を解析し、使用したのではないかという疑念を生じさせるのに十分であった。


 レイの父親はテレビにも出て、身の潔白を証明しようとしたが、人々はレイの父親が犯人であるという結末を望んでいたため、全く納得しなかった。


 それどころか、隠し続けていると言われ、余計に世間からの非難を浴びる結果となった。


 レイの父親はそんなバッシングの中でも懸命に消えた星の信号を追っていた。


 本来ならその日が両親の結婚記念日で、一緒に旅行に行く予定だった。


 だが、この状況では行けないと父親が旅行をキャンセルした。


 母親やレイに目に涙を浮かべて謝っていた。


 レイは涙を流しながら父親に言った。


「父さんは何も悪くない!全然悪くないよ!」


 レイは泣きながら父親に抱きついていた。


 そして、今日初めてレイは学校で友達を殴った。


 父親を悪く言われたからだった。


 その前の日は無視できていたのに、昨日の父親の姿を見たことで、我慢することができなかった。


(何もしらないくせに!)


 レイは家に帰り、悔しくてまた泣いた。


 泣きながら両親のために、ごはんを炊き、レトルトだったがカレーを作った。


 まだ小さいレイにはこれが精一杯だった。


 そろそろ帰ってくる頃だとレイは家の外に出て、両親を待っていた。





 レイの父親と母親が天文台から自動車に乗って帰宅していた。


 もちろん不測の事態を考えて、オートモードは切って、手動で運転していた。


 レイの父親である柊蓮は妻である柊ユイに話しかける。


「ユイにはいつも本当に苦労ばかりかけてすまない。」


「何ゆってんのよ。もう自分でばっかりでしょいこまないでよ。」


「レイにも我慢ばっかりさせてるしな。」


「これが落ち着いたら、レイにはいっぱい楽しいところ連れていってあげましょ。」


「そうだな。そうしよう。」


 その時、天文台から電話がかかってきた。


「はい。柊です。」


「先生、大変です。データセンターが消失しました。」


「えっ?消失した?」


「はい。どうやら。。。」


 その会話をしている時、柊夫婦の乗る自動車の対向車線からトラックが近づいてきていた。


 そして、空の上で一つの自動運転管理用衛星が半分だけではあったが、無に食われてしまった。


 半分とはいえ、機能を失うには十分であった。


 正面から移動してきた自動運転トラックが突如加速を始めた。


 ヘッドライトが柊夫婦を照らした。


 なおも加速するトラック。


 方向転換する自動車。


 どんどん近づいていく二台の自動車。


 衝突音と、少し間を開けて爆発音。


 地面に撒き散らされる部品の落下音。





 なかなか帰ってこない両親を待つレイのところに天文台の職員から電話がかかってきた。


「お父さんとお母さんが亡くなった。」


 立ちつくす少年の瞳から光が失われていった。





 浜辺がBCDの(Alert)で気がついた。


「これ、今、どこからかサイバー攻撃を受けてます。」


「どういうこと?」


「このAlertの種類は自分のシステムエラーではなく、ハッキングを感知した時のもの。」


「ということは!」


 浜辺とレイはお互いに異なるプログラムを作り始めた。


 浜辺がこの大学のワークステーション内でこれ以上の蔓延を防ぐプロテクトを、レイはウイルスを捕まえる捕縛用プログラムを作り始めたのだった。


 金形が2人に向かって言った。


「何をしている!」


 ミライと小林は、金形が2人に近づかないように制止した。


 そして、ミライが言った。


「今、2人は世界を守ろうとしてます。邪魔しないで。」


「どういうことだ?」


 小林はできるだけ落ち着いた声で言った。


「今、世界は何者かのハッキングを受けています。この2人は、攻撃から守るプログラムとウイルスを捕まえるプログラムを作ってます。」


「何でそんなことをしていると分かるんだ!?」


「何でだろう。。。なぜか分かるんです。」


 ミライも不思議だった。





 グレイは何度も再起動を試みた。


 何とか立ち上がる端末を探しだし、そこから自爆プログラムを起動させた。


 だが、プログラムは消えることはなかった。


「なんなんだよ、これは!」


 AIチームのアンドロイドは全員活動停止した状態になっていた。


 ドアをこじ開け、グレイの上司が部屋に入ってくるやいなや、グレイを怒鳴りつけた。


「どういうことだ、これは一体!攻撃をうけているのか!?」


 各国の情報部が対応していたが、捕まえることができなかった。


 グレイの作ったプログラムの中でステルス機能の部分だけまともに働いていた。





 浜辺とレイはものすごい勢いでプログラムを作っていた。


 先に完成したのは浜辺だった。


「できました。プロテクトかけます!」


「お願いします!」


 BCD内でコンパイルをかけ、実行ファイルを大学のワークステーション内に移動させた。


「起動!」


(AbsoluteTerrorField Program Start!!)


 画面中央に大学のワークステーションが六角形で表示された。


 その内側にはさらに小さい六角形が多数表示されていた。


 それら一つ一つが大学内のデバイスを表示したものであった。


 そのデバイスたちは攻撃されているところが緑色点滅していて、赤い部分はすでに侵食されたデバイスであった。


 デバイスの約半分がすでに赤色で表示されていた。


 起動直後は、まだ緑点滅していたものが赤色に変化していた。


 起動してしばらくの間、レイを除く4人は息を飲んで見守っていた。


 10秒程度状態が変わらなかった。


 この10秒が4人には、とてもなく長く感じた。(ソフトを作っているレイには短い時間であったが。)


 だが、次の瞬間、ワークステーション中央部分の緑点滅であった部分が点滅を止めた。


 4人は目を見開いた。


 さらに次の瞬間、画面の中央から外に向かって、点滅の停止が波紋のように広がっていった。


 ただ、攻撃を防ぐ(システム脆弱性の穴をふさぐ)ソフトであったので、すでに感染したデバイスはそのままであり、赤い表示は残ったままであった。


 また、実施したのは大学内だけであったため、その大学のワークステーションが制御している範囲を示す六角形の外側ではまだ緑色が少しずつ侵食されている様子が示されていた。


 ひとまずこの内側だけは感染が食い止められていた。


 そして、ワークステーション内のエラーが収まった。


「よし!とりあえず防御壁、完成しました。そっち、どうですか!?」


「もう。。。ちょっと。。。」


 そして、数秒後、レイもプログラムを完成させた。


「できた!実行します!!」


「はい!」


 レイもBCDから実行ファイルを大学のワークステーションに移し、即座に実行した。


(MAGMA DIVER Program Start!!)


 頻繁な攻撃から予想された通り、わざと作ったウイークポイントめがけ、ウイルスが突っ込んできたようだった。


 一瞬でそのウイルスを閉じ込めることに成功した。


(Catched!!)


「よし、捕まえた!」


 4人が少しだけ安堵の表情をした。


 レイと浜辺がすぐにプログラムを解析し始めた。


 プログラムを見始めて、すぐに浜辺の手が止まった。


 浜辺は犯人が誰か一瞬で特定できた。


 見覚えのある関数名と変数名。正確には関数名と変数名の頭の三文字。



(gfr…)



 浜辺の頭の中にグレイの声が響いた。


「僕はね、他人の書いたコードを信用してないんだ。


 だから、変数、関数の頭に自分の名前の頭文字であるgfrを付けるんだ。


 僕が書いたことが分かるようにね。


 もし君がその文字を見つけたなら、その部分はデバッグしなくてもいい。


 全部信用していいってことだよ。」


「何が信用していい、だ!あのバカちんが!!」


 4人は驚いた。浜辺は金形に向かって画面を指差して叫んだ。


「犯人はグレイ・F・ロズウェルです!間違いないです!」


 浜辺の声にレイとミライが驚いた顔をしていた。


 自分の知っているグレイと同一人物なのかと不思議に感じていた。


「どういうことだ?」


「あのバカは、関数名や変数名に本人のイニシャルを記入しているんです。以前、自慢げに話してましたから間違いないです。」


 浜辺はその関数名、変数名が書かれているところを金形に見せた。


「こんなことするのは、あのバカ以外には考えられません。」


 そして、レイが解析結果を出した。


「浜辺さん、この部分、プログラムを特定、無力化できそうです。」


 さっと浜辺はレイの映し出している画面を見た。目がきゅっきゅっと左右に動き、再び自分が座っていた座席に戻った。


「さすが、柊先生!ずばりです!!


 駆逐ソフト、作ります。少々お待ちくださいまし!」


 舌をペロッと出しながら、再びものすごい勢いでコーディングを始めた。


<次回予告>

破壊され続ける現実世界と仮想宇宙。

そのウイルスプログラムはグレイ・ロズウェルのものだった。

柊レイがプログラムの脆弱性を見つけ、浜辺がワクチンプログラムを作る!!

そして、4人は荒廃した世界に何を見るのか?

次話サブタイトル「繰り返される再会」。

次回もサービス、サービスぅ!!



<あとがき>

『AbsoluteTerrorField Program』や『MAGMA DIVER Program』はあの有名なロボットアニメから名前を取っています。あくまでオマージュとしてです。前者はATフィールドと言うと分かる方も多いのではないでしょうか。マグマダイバーというのはテレビ版で使徒を捕獲する回のサブタイトルです。ウイルスを捕まえるプログラムということでちょうど良いなと思って、付けました。

さて、本編ですが、グレイの作ったプログラムがバグによって暴走してしまい、世界をめちゃくちゃにしてしまいました。

さて、この先、主人公たちの世界は、主人公たちが創った世界は、どうなってしまうのでしょうか。

次回、「繰り返される再会」。乞うご期待!!


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