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ガロワのソラの下で  作者: 友枝 哲
52/66

∫ 7-2.誠実さと残酷さ dt

まえがきは割愛させていただきます。

毎日0~1時の間に次話投稿いたします。


 

 レイたちは次の日もまた宇宙の観察を行っていた。


 宇宙の年齢は50億年を越えていた。


 レイたちは集まり、まずViewerで原始生命が一億以上の塊になっている場所をサーチした。


 浜辺が結果を表示させると、そこにはすでに八箇所がリストアップされていた。


 そのリストを見て、全員が驚き、声も出せなかった。


 宇宙が出来て50億年が経っていたため、すでに海ができ、大陸移動が発生し、それによって磁場が発生している惑星が数多くあった。


 それらの惑星では生命が発生しうる環境が整っていたため、詳細計算を実施し始めた瞬間から生命誕生の途方もないトライ&エラーが繰り返されていた。


 エウロパ、ガニメデや火星の地下深くで生命が見つかったことで生命の発生確率はそれまでよりは比較的高いと言う専門家も現れたものの、それでも専門家たちの中では奇跡的確率であるというのが今なお定説であった。


 だが、それらの惑星では無数の場所で、数えきれないほどのトライ&エラーが繰り返され、天文学的回数に及ぶ試行の結果として生命が誕生していたのだった。(もちろんトライ&エラーの結果としてまだ生命が生まれていない惑星がほとんどであることは確かであるが。)


 レイはこの結果に心底驚いていた。


 まさかここまでの数が生まれるとは想像もしていなかった。


 最初の惑星で生命が出来るのは何となくの必然的感覚があった。


 条件として、非常に地球に似た環境を探したためだった。


 それであっても星形成から相当な期間がかかっていたため、今回のサーチではそれほど期待はしていなかったのだった。


 レイ以外のみんなも小林の有機進化論を数式化したり、プログラム化したりしているので、何となくその発生の困難さを把握していた。


 そのため、レイ同様にあまり期待していなかった。


 小林は自身の理論を知り尽くしているだけに驚きも一際だった。


 ミライはこの前のレイが言った言葉を思い出して言った。


「あたしたちは孤独の中にいるわけじゃない!よね?」


 ミライはそう言ってレイを見た。


 レイもそれに同意した。


「うん。きっと。きっと。」


 小林が言った。


「我々の世界もきっと、柊先生のお父さんが受け取った信号の主と我々だけじゃないってことですね。」


「うん。そうですよ、きっと。本当にたくさんの生命が。」


 浜辺も同意した。


 その時、レイは自分達のいる世界はこんなにも生命に囲まれているのだということを深く理解した。


 その瞬間、心のつかえが少し外れ、見える世界が少し明るくなった気がした。


 それは気のせいとも取れるほどの僅かな変化だったが、レイには明らかに違って見え、そして感じた。


「あ、あっ。」


 レイは自分の中の寂しさの関数が変化したことを感じ取っていた。


 そして、それは父親が感じたそれときっと同じなのだろうということも。


 浜辺はレイが微かに声を上げたのに反応した。


「どうかしましたか?」


「あっ、いや。何か世界が変わったような。。。」


「世界が、変わった?」


「あっ、いや。何かそんな気がしただけ。」


「??」


 ミライが不思議そうな顔でレイを見ていたが、小林は興味が抑えられずみんなに提案した。


「あの、この生命たちがどんななのか見てみませんか。」


「そうですね。行ってみましょうよ。」


「そうですね。見てみましょう。」


 四人はViewerのVR機能を使って、惑星探査を始めた。


 最初の三つ目まではほぼ以前見た状況に似ていた。


 まだ色の着いたヘドロのような状態のものであったり、マリモのような緑色をしたものであったりした。


 だが、四つ目は少し状況が異なっていた。


 まだ海の中が主な活動拠点ではあったが、すでに海の水がかなり浄化されており、生物はもう自分の力で泳いでいた。


 そして、その生命の動きがかなり遅かった。


 まるでスローモーションを見ているかのようだった。


 ふとレイが浜辺に問いかける。


「浜辺さん、今って時間の速度は等倍ですよね?」


「あっ、ちょっと待ってくださいね。」


 浜辺は両手で四角を作り、ウインドウを立ち上げ、確認した。


「そうですね。等倍ですよ。」


「なんか時間の流れが明らかに遅いですね。」


 そういうと、レイは何かに気がついた。


「ちょっと一度出ましょう。」


 レイの合図でみんな、一度VRをログアウトした。


 レイは浜辺に少しズームアウトするように依頼した。


 浜辺がズームアウトしていくと、中央が黒く、その周囲にリングが形成されている天体が現れた。


 その瞬間、ミライが言った。


「これって、ブラックホールじゃ。。。」


「うん。」


 レイは画面の惑星の座標を指差して言った。


「なるほど。すごい勢いでこのブラックホールの周囲を回ってるみたい。


 重力が強いから、時間の経過も遅いんだ。」


 そんな話をしている間に、Viewerで見ている画面全体が灰色になった。


「なに、これ?」


 ミライが言うやいなや、画面の灰色の部分がどんどん小さくなり、それが何であるかが分かった。


 このブラックホールか、もしくはこの惑星を従えている恒星を周回している彗星だった。


 その彗星はゆっくりと、そして、きれいな曲線を描きながら惑星に近づいていった。


 みんなが口々に声を上げた。


「あっ!」「え?」「うわっ!」


 レイたちは、ただ見ていることしかできなかった。


 彗星はまるで吸い込まれるかのようにその惑星にゆっくり衝突した。


 彗星はその惑星半径の20分の1ほどだったが、その惑星の環境を変えるのには充分であった。


 惑星は衝突の勢いで一部が削りとられ、コア部分が剥き出しになり、惑星の表面は一気に高温状態となった。


 浜辺はカメラを惑星の衝突地点に近づけた。


 マグマが吹き出し、猛烈な嵐が吹き荒れ、大きな黒い雲が立ち上ぼり、その中では稲光が絶えず発生していた。


 その地域にいた生命は完全に死滅したと容易に想像がついた。


 浜辺がカメラを惑星内の遠くに移動させた。


 まだそこは嵐が来ていなかったが、すぐに異変が発生した。


 水が一気に引いていったかと思うと、次の瞬間、衝撃波を伴った津波が走った。


 浜辺はカメラを再び宇宙に上げた。


「こういうシーン、何度見ても堪えますね。」


 小林が落ち着いたトーンで言った。





 八つとも見終わった頃、レイの世界では二時間ほど経過していた。


 その時、リストが八つから七つに変化した。


 四人ともなぜ消えたのかは理解していたが、浜辺が口を開いた。


「これってやっぱり助けたりしたらダメなんですよね?」


「そうですね。」


 レイは倫理観の強い小林を見た。そしてレイは続けた。


「でも正直言うと、もしこれが情が移った何かだとすると、助けてしまおうという気持ちが生まれるかもしれません。」


「あたしもその気持ち、分かる。この前の戦争の時もそう。何とかできないのかって。」


 ミライはみんなを見ながら続けた。


「前にこのプロジェクトが始まった時、この世界のこと、ここまで深く考えてみてもなかった。


 ただ自分の定義した空間で、物質が正確に動く、ただそれだけだった。


 でも、実際の世界はそうじゃなかった。


 こんなにも、こんなにもこの世界と瓜二つだなんて。」


 レイもミライも浜辺もシミュレーションという概念から、ここまで鮮明な世界がもたらされることを充分に加味できていなかった。


 もちろんある程度は考えていたが、やはり凄惨な場面、本人たちでは越えられない事象により、悲惨な状況に追い込まれているものを見るのは、正常な人間には辛すぎるものだった。


 だが、小林が反論した。


「僕は、、、反対です。ああいうのを見ると堪えます。


 でも、もし助けてしまうと、そこに神が生まれて、それによって、また戦争が起こるかもしれません。


 まだ思考を持たない原始生命においては、残酷かもしれませんが、それが宇宙全体を通した自然の摂理だということだと思うんです。


 僕がそう信じたいだけかもしれませんが。


 先日言いましたが、僕はこの世界に自分なりの意味を見いだしました。


 生命は、果たしてこの深い業から脱却できるのか?


 これを見るためにも介入は邪魔になるだけだと、そう思うんです。」


 そう言った後、レイを見て言った。


「と言いながらも、やっぱり堪えるのは堪えます。


 もうどうしようもなくなったら、その時は、柊先生の思うままやっていただいても良いと思ったりもします。」


 浜辺の方に向いて付け加えた。


「こんなあまちゃんな考え方だとやっぱりAIに殲滅させられるのかもしれませんけどね。」


 小林の意見を聞いて、レイが答えた。


「みなさん、意見をありがとうございます。少し、、、考えてみます。」


「あんたが作った世界なんだし、あんたの好きにすればいいんじゃない?


 あたしはそれでいいと思うよ。


 全部抱え込むの、レイ君の悪いクセだよ。」


「さすが、未来の奥方。言うことがちがいますねぇ〜!」


 浜辺が茶化した。


 その言葉にミライが赤くなった。そして、レイはミライ以上に赤くなった。


 ミライが返す。


「未来の奥方ってあんたね!」


 小林も便乗する。


「未来の、じゃなくて、レイ先生のですよ。」


「ありゃ、一本取られましたな。」


 ミライがさらに赤くなった。


「もう茶化すな〜!」





 レイは寄宿舎の天井を全て星空に変えて、ベッドに寝転がり、星を眺めていた。


(父さん、母さん、りょーじ。ぼくは今日、ぼくの中で何かが少し変わったのを感じたよ。


 これが父さんの言ってた『少しだけ孤独のヒモがほどけた』ってことなのかもしれない。


 小林さんが言っていたこの世界の意味。それも正しいのかもしれない。


 そして、ぼくもようやくこの世界の意味を見いだせたような気がする。


 まだどんな世界になるのか、分からないけど、見守り続けたいと思う。


 父さんも母さんもりょーじも応援してくれるよね?)





<次回予告>

世界は多様な生命で満ち満ちている。

宇宙の歴史と生命の尊さを肌で感じ、

命の存在意義を考える4人。

彼らの中で何かが変わろうとしている。

また、宇宙は彼らの他にも影響を及ぼし続ける。

アンドロイドの憂鬱が世界を覆い、

それを調査するものの足音が

次第に彼ら4人に近づいてくる。

そして、宇宙は130億年の刻を超える。

次話サブタイトル「執念を超えるとっつぁんと百三十億周年を超える宇宙」。

次回もサービス、サービスぅ!!



<あとがき>

宇宙にはたくさんの生命がいる。私もそう思っている一人です。

皆さんはどう思いますか?

そして、小林が言った言葉。生命はこの深い業から脱却できるのか?

そのためにどうすべきなのかなと考えたりもします。

さて、本編ですが、とうとう宇宙が130億年を超えます。

そして、何かが起こりはじめます。

次話サブタイトル「執念を超えるとっつぁんと百三十億周年を超える宇宙」。乞うご期待!!



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