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ガロワのソラの下で  作者: 友枝 哲
43/66

∫ 6-6.発表しましょう! dt

まえがきは割愛させていただきます。

毎日0~1時の間に次話投稿いたします。


 

 警視庁捜査二課の金形警部補が再び学校を訪れていた。


 前回同様、浜辺のアクセス履歴を調べた。


 最後にアクセスした場所は食堂裏の出口となっていた。


 そこに、突然、図書館入口のアクセス履歴が発生した。


 金形は急いで図書館に移動していると、図書館から掲示板通路を通り、体育館に向かう通路のアクセス履歴が発生した。


 金形は追い付こうと急いで移動する。


 だが、ほぼ同じ速度で金形から逃げるようにアクセス履歴が発生した。


 二十分程度の追いかけっこの末、金形の体力がつきる形で試合終了となった。


「何なんだ。もしかしておれの居場所が分かっているのか?」





 浜辺は旧情報端末室で端末を扱いながらBCDでその様子を見ていた。


 そして、小さい声で言った。


「一生追い付けませんよ。」


 横にいた小林がその独り言に反応した。


「ん?何か言った?」


「いえ。ちょっと独り言です。で?何でしたっけ?」


「あー、この前、お願いした最後のテストの結果を送ってって。」


「あー、そうでした。はい、はい。」


 端末のウインドウを手で探す動作をした。そのウインドウにある一つのファイルを摘まんで、メッセンジャーの小林のアカウントの上で離した。


(ファイルを送信しますか?)


 再び指で送信ボタンを押した。


「送りましたよ、ファイル。」


「ありがとう。」


 ミライはViewerで惑星内を見ていた。


 大地に生い茂る草木に、そして再び両生類の生命が海から陸へと生息域を拡げているのを目の当たりにしていた。


「不思議よね。こうやって星が空気や水を浄化して、また生命が活動できる環境を提供しているようにも見える。


 スターバーストの時もそうでしょ?雲郭作用によって紫外線やガンマ線を防ごうとする。


 まるで星自体が子供を守る母親のような感覚。」


「うん。ぼくもそう感じるよ。


 外界の脅威に対して、脂肪酸が集合して膜を形成したように、同種が集まって、自分だけを守るのではなく、集合体として生き延びようとする。


 これは何かの意志が働いているようにも見えるよね。本当に不思議だ。」


 そんな話をしている時、小林が思わず声を上げる。


「やった。。やったぞ!」


 息を詰まらせながら、そして手を震えさせながら言った。


「どうしたんです?」


「柊先生。ついにできました。できたんですよ!老化を防ぐ薬が!!


 このテスト結果がそれを示してる。」


 ミライがその言葉で思い出した。


「あっ、この前のテロメア!」


 小林はミライを見て言った。


「そうです。これによって人類の平均寿命は大幅に延びるでしょう。


 結果通りならば500年は生きられるようになる。


 それにウェルナー症候群や早老症にも効果があります。


 まあ、これらの病気には根本的な遺伝子治療がすでにあります。


 ですが、遺伝子治療にはごくまれですが副作用が起こる可能性があるため、この治療法の方が良いかもしれません。」


 小林がレイを見て言った。


「僕は改めて確信しましたよ。


 このプロジェクトは世界を変える素晴らしいものです。」


 浜辺がちょっとだけ嫌みを言った。


「また、お金たくさん稼げますね。」


「浜辺さん、僕はね、世界を救いたいだけなんだよ。


 僕たちがここでやっている意味は何だろうって。


 そう思ったら少しでも役に立てるものを産み出さないと意味がない。」


 ミライがその言葉に反論した。


「意味がないなんてことないじゃない。


 宇宙のほぼ全てが理解できて、それが証明できてきている。


 それだけでも十分意味のあることなんだけど。


 第一この空間の定義自体が、この世界にどれだけのインパクトをもたらすか。


 あんた知らないでしょ。」


「あっ、僕はそういうつもりで言ったわけじゃ。。。」


 そのやりとりを聞きながら、レイは決心した。


「発表しましょう。」


 ミライが驚いてレイに聞いた。


「このプロジェクトを?あんた、正気?」


「いや。このプロジェクトでなくて、ここで分かったことを。」


 みんながレイを見た。


「例えば、小林さんのその薬。ぼくとミライさんはこの世界を司る数式。浜辺さんは散逸構造処理。


 もちろん、各々が発表したいと思う場合のみですが。」


 そう言うと、浜辺が一番に答えた。


「私はパスです。プログラムは隠してなんぼですよ。柊先生も分かってますよねぇ。」


 レイは軽く笑みを浮かべて言った。


「確かに。まあ、そうですよね。ぼくもプログラムのところは知られたくはないですし。」


 浜辺に続き、ミライも言った。


「でも、これ発表したら動きづらくならない?


 ここにだって来づらくなるかも。


 あたしはこのプロジェクトが一段落してからでいいかなって。」


 その言葉に小林が反論した。


「でも、誰かが先に見つけたりしないです?」


 ミライはその言葉にクスッと笑いながら言った。


「誰がこの6次元の謎を解けるの?


 解けたところで誰が数式化できる?


 絶対不可能。だから安心してるの。」


 ミライがレイを見て言った。


「レイ君、あんた、何か思ってるところがあるんでしょ。」


 小林がミライに聞いた。


「どういうことです?」


 ミライが答えた。


「最近、レイ君、時々数式をじっと見てることがあるから。


 でも、式は完成しているはずなのに。何かおかしいなって思って。」


 小林が感心した。


「夏目先生。よく柊先生を見てますね。」


「そんなんじゃないわよ。」


 ミライが強く否定するのをみて、小林がニンマリした。


「新しく赴任して来られた加治教授なんだけど。


 今のプロジェクトですごく大変そうなんだ。


 あの先生、ぼくが困ってた時、すごく力になってくれた人で、実は今もぼくを使えば良いのに、それをぼくが以前苦にしていることを知っているもんだから、それもできずに。


 きっと苦しんでる。だから、何とかしてあげたい。」


 レイがいつも以上に真面目に答えていた。それを聞いてミライが言った。


「レ、レイ君、僕を使えばって。。。」


 ミライはレイの言葉に驚きつつ、続けた。


「あー、レイ君は発表すればいいんじゃない?それをレイ君が望むなら。


 あたしは全然良いと思うけど。それでその教授を助けられるんでしょ?」


 ミライが小林と浜辺を見た。


「あんたたちはどう思ってるの?」


「もちろん。もともとこの理論は柊先生が作り上げたものですし。


 全然異論はありませんよ。」


「私もダイジョブです。」


 ミライがレイを見て言った。


「OK~!じゃあ、満場一致だね。」


「ありがと。みんな。」




<次回予告>

テロメア治療薬、11次元の秘密、そしてその数式化、プログラム化。

全てが世界を大きく変えるシンギュラリティ。

4人はそれらを発表する決意をした。

まずは柊レイが教授に全てを打ち明ける。教授を助けるために。

教授はそれをどうするのか?

次話サブタイトル「善意が見る夢 && 悲しい現実」。

次回もサービス、サービスぅ!!



<あとがき>

宇宙11次元の謎を発表することにした柊レイたち。

しかし、あれだけ使われることに嫌悪感をいただいていた柊レイが「ぼくを使えばいいのに」という発言をするとは驚きでした。。。って、お前が書いたんちゃうんかい!?と言われそうですが、実はあの爆発事故辺りから結構本気でキャラクタが勝手に話し始めていました。ちょっと初の体験で驚いてました。

そんなことってあるもんなんですね。

さて、本編ですが、柊レイは本開発内容の詳細を加地教授に伝えようとします。

いったい何が起こるのでしょうか。

次話サブタイトル「善意が見る夢 && 悲しい現実」。乞うご期待!!



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友枝 哲さま、おはようございます♪(^人^) 作品の物語、ゆるゆるですが楽しく拝見させていただいております。←感想は毎回書けず仕舞いですが(^_^;)書きたいと思うことはけっこうあるのですけど、タイ…
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