∫ 6-3.空集合からの第一歩 dt
まえがきは割愛させていただきます。
毎日0~1時の間に次話投稿いたします。
日曜日、レイは待ち合わせた駅前の銅像のところに来ていた。
約束した時間の三十分前に到着していた。
その前の晩、小林にメッセンジャーで連絡していた。
(実は明日、ちょっとある人と映画行くんですけど、何の話をすれば良いのか、全然思い付かないんです。)
すると、小林から返答が入った。
(おっ、デートですか?というか、実際に会って?もしかして相手は夏目先生?)
デートという言葉に顔を赤らめた。
改めて意識すると何故か頭の中でこの前のミライの笑顔が思い浮かんで、さらに顔が赤くなった。
(一応、待ち合わせをして、直接会うことになっています。
相手はちょっと内緒です。
で、そんな時、何を話せば良いもんなんでしょうか?)
すぐに小林の返答が入った。
(なるほどー。そうですか。相手はナイショですね。
すみません。ヤボでしたね。
えーと、やっぱり相手が好きなことについて話をするのが良いですよね。
まあ基本ですけど。相手も話しやすいでしょうし。)
(なるほどです。参考になります。)
小林はレイが結構真剣なことを感じ取った。そこで情報を追加した。
(もし仮に仕事とか、プロジェクトとか、そういうのが同じだったとしたら、その話はタブーですよ。
現実を忘れさせてあげないとですから。)
(なるほどです。有益な情報を本当にありがとうございます。)
小林は、ふふふと笑い、最後に締めくくった。
(Good Luck. 柊先生なら大丈夫。自信を持ってください。)
小林はこの前の打ち上げの時のレイとミライの雰囲気を思い出していた。
そしてぼそっと言った。
「直接会ってデートだなんて、天才たちの考えることは不思議でいっぱいだな。」
小林は明日会って歩いている二人を想像してふふっと笑った。
(ありがとうございます。)
レイは返事を返し、考えてみた。
(ミライさんが好きなこと。。。)
しかし、全く思い浮かばなかった。
だが、ふと、みんなで行った遊園地を思い出した。
あの鋭いコーナーリング、そして誰の追随も許さないドライビングテクニック。
そして、同時に波多野のことも。
だが、沈んだ心を励ますためにミライが誘ってくれたことを思い出して、再び遊園地でのミライの姿を思い返した。
(そうだ、これだ!きっとF0やE0が好きなはずだ。)
そうして、モータースポーツの情報を検索し、片っ端から暗記した。
ミライも同じく数学科の女子に相談していた。
(どんな服がいいのかな?)
(私のお気に入りの服データ送ってあげる。)
(いや。直接会うんだけど。)
(えー、直接会うの?VRじゃなくて?映画館行くの?)
(うん。その方が実感湧くし。)
(本気なんだね。
じゃあ、最近ちょっとレトロフォーム流行ってきてるから、それにしたら?
ちょっと短めのプリーツスカートに、カラーシャツ、ニットベストとか。)
(えっ?短めのスカートなんて持ってないよ。)
(しようがないな。私の貸してあげるよ。アパート来てくれたら。)
(分かった。)
ミライは(さんきゅー)スタンプを送った。
(あと、なに話せばいいかな?)
(そりゃ、彼の好きなことでしょ。話が弾むじゃない?)
ミライはすかさず、(なるほど)のスタンプを送る。
(先生、ありがとうございます。)
(あっ、分かってると思うけど、課題の話とか、研究テーマとかはNGだかんね。
デートは浮世を忘れてなんぼでしょ!)
再び(なるほど)スタンプ。
(お礼は次回の課題でいいよ。)
(いつも教えてるじゃん。)
(そうでした。アパート来てくれたら服貸すよ。)
(分かった。あんがと。今からいくね。)
友達から(りょーかい!)スタンプが送られてきた。
ミライはメッセンジャーを閉じて、服を借りに行くために支度を始めた。
「レイ君が好きなものって、物理、星。これってNGって言われてたな。。。
あと何好きなんだっけ?」
ミライの全知識を検索した。ふと思い出す。
「谷川俊太郎の詩だ!あれ?詩自体なのかな?」
待ち合わせの場所が見えるところにミライがやってきた。
ミライも待ち合わせの三十分前には到着していた。
三十分前にも関わらず、レイがすでに待ち合わせ場所に立っていた。
レイを見て、胸が高鳴った。
「何よ。こんなに早く来るなんて、どんだけ張り切ってるのよ。」
自分を棚の上にあげてそう言った。
そして、ミライも待ち合わせ場所に歩いていった。
「おはよう。」
レイは声のする方に向いた。
そこには今までのミライとは全く装いが異なるミライが立っていた。
レイは思わず見とれてしまい、あいさつを忘れていた。
そこで、ミライが再度声をかけた。
「お、は、よ、お。」
レイははっとしてあいさつした。
「あっ、お、はよう。」
レイはドキドキして目を合わせられなかった。
「あの、、行こっか。」
「うん。」
そう言って二人は映画館のあるショッピングモールへと歩きだした。
ただ、二人とも緊張して会話がなかった。
話そうとしても出てくるのが、今のプロジェクトのことばかりだった。
レイは小林の言葉を思い出した。
同時にミライも友達の言葉を思い出した。
レイは先月話題だったF0のレースについて話を振った。と同時に、ミライも谷川俊太郎の詩について話を切り出した。
「先月のF0のファイナルラップ、すごかったみたいだね。」
「谷川俊太郎の『ひも また』もいいよね?」
二人ともキョトンとした。
ミライが聞き返した。
「F0?あー、ごめん。あたし、モータースポーツってあんまり興味がないんだ。走るのは好きだけどね。」
「あっ、そうなんだ。」
レイの頭の中に組み立てられていた会話のフローチャートが無惨にも崩れ落ちてしまった。
「あっ、なんだっけ?」
レイはミライの話を聞いた。
「あー、えーと。谷川俊太郎の『ひも また』。なんだけど。」
「えっ?『ひも また』?」
「あれ?谷川俊太郎、好きじゃなかったっけ?」
「あー、あの『二十億光年の孤独』だよね?ごめん。あれしか知らないんだ。」
「えっ?そうなの?」
ミライの頭の中に組み上げられていた会話のフローチャートも崩れ落ちてしまった。
お互いカードがなくなった今、沈黙だけが続いていた。
何とか盛り返そうと二人とも頭の中で思考実験を繰り返した。
そして、とうとうお互い結論に至った。
会話内容=φ(空集合=解なし)。
ほぼ同時にそこに行き着き、お互いが言葉をかけた。
「最近なにやってる?」
お互いのその問いかけで同じ思考をしていたことを感じ取り、二人して笑った。
そして、レイが言った。
「最近ってずっとあのプロジェクトやってるもんね。
無理、しないで、いいよね?」
「そうだよ。二人とも興味がそこにあるんだもん。
しかたないよね。ふふふ。」
ミライもそう言いながら笑った。
そこからは普通にプロジェクトの話をしながら、昼御飯を食べて、映画を見た。
レイは映画の最後のハッピーエンドに涙を流して、ミライはその姿に驚きつつも自分のハンカチで涙を拭いてあげた。
実は遠くからこっそり小林、浜辺チームが見ていた。
「なんだ。全然全くのカップルじゃん。
なんかあるかなと思って来たけど、取り越し苦労だったね。」
横を見ると、小林が残していたポップコーンをすごい勢いで食べている浜辺がいた。
レイとミライが映画館を出たところで、ショップの方に行こうとした時、ふと二人の手が触れた。
「あっ、ごめん。」
そう言いながら、レイはドキドキして、手を繋ごうとした。
ミライもドキドキしつつ、レイが手を繋いでくれるのを待った。
後ろで小林と浜辺がその様子を伺っていた。
その時、突然、BCDのSimUniverseViewerが新しいウインドウを表示した。
(Ribozyme was formed !(リボザイム生成確認!))
それを見て、二人はさっと手をViewerの方に持っていった。
レイが言った。
「とうとう原始生命が出来たんだ。」
「学校に戻りましょ。」
「うん。」
二人が急いで移動を開始した。
その様子を見て、小林も言った。
「僕たちも戻ろう。」
「あっ、待ってください。」
そう言うと、浜辺は残りのジュースを飲み干した。
レイとミライがタクシー乗り場に移動して待っていると、小林と浜辺がそこに現れた。
「奇遇ですね。あの表示で大学に移動しようとしてます?
よければ、僕の車で行きますか?」
「あっ、そうしていただけると助かります。」
レイは感謝の態度だったが、ミライはついてきてたな?という目で二人を見ていた。
四人は近くに停めてあった小林の車に到着した。
四人がギリギリ乗ることができるくらいのサイズであった。
小林が近づくと自動的にドアロックが解除され、小林が言った。
「どうぞ。乗ってください。」
小林が運転席に乗り、運転の指示を出した。
「目的地、第二新東京工科大学 理学部校舎」
電子音声にて指示内容確認が行われた。
「目的地:第二新東京工科大学 理学部校舎、運転を開始します。」
その指示に従って自動車は動き出した。小林が追加で指示を出した。
「出来るだけ速く」
そう言うと、進路のサーチをしつつ、制限速度限界まで速度を上げて移動しだした。
レイとミライ、浜辺はそれぞれViewerで惑星の状態を確認していた。
小林が指示を終え、みんなに確認した。
「どうです?何か変化はありますか。」
「すごい勢いで時間が経過してる。」
ミライが答えた。それに対して、浜辺が答えた。
「そうですね。今、こちらの一日が約一億年くらいの速度ですから。」
頭の中でミライが計算した。
「一日86400秒だから、、、一秒で約1157年ね。あれ?でも、この前Viewerで中に入って見た時って。」
「はい。あの時はこちらの速度と同じ程度まで落としてたんです。」
「今、それできないの?」
「あの端末機じゃないと時間操作はできないようにしているんです。
遠隔も、もしものために、全くできないようにしてます。全て拒絶するように。
あー、ただバルスコマンド以外ですけどね。」
「バルスコマンド?」
浜辺が聞いたことのないコマンドについて、話している間に、レイがViewerで世界の状態を見て言った。
「ちょっとこの状態で確認は難しいですね。着いてから確認しましょう。」
みんなが困っていると、浜辺が腕を捲る仕草をした。
「しようがないですね。」
浜辺がBCDのアプリを立ち上げ、交通局の信号管制システムにアクセスした。そして、ある操作を行った。
すると、自動車の前の信号が全て青色に変化していった。
それを見た小林が浜辺に言った。
「またやってるでしょ!?」
「何がですかぁ?」
小林の自動車は止まることなくスムーズに移動することができた。
自動車が移動を開始しはじめて、18分後に校舎の駐車場に到着した。
四人は勢い良く自動車から飛び出し、旧研究棟に向かって走り出した。
周囲を確認して、暗号を入力し、旧研究棟に入った。
端末室に到着するやいなや、浜辺が端末にログインした。
すぐに時間の進行速度を現実世界と同じ速度に設定した。
「時間の経過速度をこちらの世界と同じにしました。」
リボザイムが生成されたという表示から22分後であった。
「あれから22分だから、、、約153万年経過ね。」
「もうそんなに経つんですね。」
「じゃあ、様子を見てみましょう。」
レイはそう言うと、様子を見るためにViewerを立ち上げた。
ミライも小林も浜辺も同様にViewerを立ち上げた。
ただレイは、どこに原始生物がいるのか、探索が容易ではないことを感じ、浜辺に依頼した。
「浜辺さん、探知したリボザイムがどこにあるのか、調べてもらえますか。
そこに移動したいです。」
「りょーかいであります!」
浜辺は端末機からコマンドを入力してリボザイムの場所をサーチした。
150万年以上の時間経過により、惑星地下の至るところに検出された。
「すごい数ありますね。」
「最も密度の高そうな位置を選んでいただけますか。」
「ここっぽいですね。ポチっとな。」
検出された点の密度が一部とても高い部分があり、そこを選択した。
「VRボタン、どうぞ!」
みんながVRボタンを押した。
目の前が暗転した後、全員が間欠泉の吹き上がる湿地の上にいた。
間欠泉からは常に一定量の液体が吹き上げられていた。
その液体は白っぽい色をしていた。
それを見た小林が声をあげた。
「もしかしてこれが原始生命?」
レイは周囲を見た。火山そして、重金属を含む黒い海、それを見て確信した。
「きっとそうですね。ここにはエネルギー供給も酸化還元作用も揃ってますし。」
レイの言った通り、吹き上げられた液体は湿地に溜められた酸化クロムや塩化鉄を含んだ水に晒され酸化作用を受けていた。
100度近くになっていた白い液体は冷まされ、再び地下に流れていった。
そして、流れていく過程では、近くの火山から供給される硫化ナトリウムなど硫化物によって還元作用を受けていた。
地下でエネルギーを供給していた源は、火山熱ではなかった。
ウラン鉱床が常に地下水を温めており、地下の洞窟では蒸気が充満していた。
地下に溜まっていた液体の上層部が白濁していた。
これは脂肪酸の結合により、膜を作り、その膜が球体状になってリボザイムを包んだものであった。
その脂肪酸の膜によってリボザイムは保護されていたのだ。
ウラン鉱床からの放射線はリボザイムの持つRNA塩基配列に変異をもたらした。
変異した生命が作られては環境に合わず死滅した。
だが、ごく稀に、より環境に合った生命が発生した。
その生命は分裂をし、環境を支配していった。
こうやって人間には想像もできないほど永い年月をかけて何千万回、何千億回と試行がなされ、生命が誕生し、進化が促されていた。
ただ、レイたちにはその場で起こっているミクロの変化の部分は目に見えていなかった。浜辺の作ったViewerによる可視化は人の目に写るものを映像化するものであったためだ。
しかし、小林やレイはその振る舞いを理解していた。間違いなく進化は起こっているのだと。
ふと、ミライが白い液体の上に少し黄色がかった液体を発見した。
「なんかあそこだけ少し黄色くない?」
そう言っている間に少しずつその部位の黄色がかった領域が拡大した。
「えっ?なにこれ?拡がってる。」
みんなもその光景を見ていた。その光景から小林が思い付いた。
「これってもしかして硫黄化合物を使ってエネルギー変換しているんじゃないでしょうか。」
「どういうこと?」
「嫌気性微生物の働きにあるんですが、硫化水素などの硫黄化合物から硫黄を作り出すことで酸素を排出するというものです。
本来生物は酸化を嫌い、酸素をいかに排出するかという点で進化が始まっているはずなんです。
地下には火山から染み出てきた硫黄化合物がたくさんあるはずです。
これらを蓄えて、地上に出た時に酸化されないため、そしてエネルギーを作るために硫黄を作る。
硫黄は生物にとってかけがえのない材料なんです。」
話しながら、こんな進化の場を目の当たりにしたことに小林はこれ以上にないくらい興奮していた。
「すごいですよ。これ。そうか!やはりそういうことだったのか!」
小林の様子を見て、レイは安心した。
「小林さんの様子を見て、改めて、考えたものと作ったものが一致していることを理解しました。本当に良かったです。」
レイの言葉にミライも安堵した。
「じゃあ、やっぱり思った通り、あたしたちの住んでいる宇宙と同じものになってるってことなんでしょ?」
「うん。そうだと思う。」
三人の様子を見て、浜辺が言った。
「みなさん、そろそろ戻りましょうか。」
四人とも旧端末室に戻ってきた。(戻ってきたと言いながらも元からここにいたわけであるが。)
戻ってきたと同時に小林がまだ興奮している様子でレイのところに寄ってきて、両手でレイの両手を掴んで言った。
「柊先生、これはとてつもない発明ですよ。
これは本当に究極のシミュレーターです。物理的にも化学的にも。
たぶんこの世界は本当に我々の世界と同じように進行する。」
「そうですね。本当に素晴らしいですね。みんなで創った宇宙。」
レイの横にいたミライも何度も頷いていた。
戻ってきて、浜辺は何かを打ち込んでいた。すると、浜辺が何かを見つけた。
「これ、見てください。」
その声を聞いて、レイが浜辺のモニタを覗き込んだ。
画面にはプログラムが表示されていた。
レイはすごいスピードでそこに表示されているコードを解析していた。
そして、そのコードが何であるかを理解した。
「これってさっき見た生命のプログラム?」
「さすが柊先生。その通りです。」
その言葉に強い興味をそそられた小林が言った。
「生命のプログラム?どういった内容なんです?」
小林が近寄ってきた。
レイはコードをスクロールさせながら解析を進め、十秒程度で概ね解析でき、レイは小林に言った。
「まだ簡単なものでした。
やはり何かの化合物を溜め込む機能とそれをある材料を使って別の化合物に変換する機能が書かれています。
さっき小林さんが言っていた硫黄がその物質でしょう。
それと興味深いのは。。。」
小林がレイに釘付けになって聞いていた。
「その別の化合物を他の何かに送る機能が書き込まれてますね。」
小林の目が輝いた。
「それって。。。」
レイは小林の目を見て少し笑みを浮かべながら頷いた。
「たぶん、そういうことです。」
「ちょっとこれ、スゴすぎませんか。」
ミライはこんな興奮している小林を見たことがなかった。
「え?なになに?どういうことなの?」
近寄ってきたミライに小林が説明した。
「どうやらさっき見た生物は他の生物と共生関係を作っているようなんですよ。
つまり、自分の作った物質を他の生物に送って、その物質を他の生物に処理させているわけです。」
「えっ?それって人間が脂肪を貯めたりするのと同じじゃ。。。」
小林の説明を聞いて、ミライも少し興奮を覚えた。
マクロ的に見えたものだけじゃなく、ミクロ的にまで自分達の世界と同じことが自分達が創った世界でも発現していることに。複雑性の第一段階とも思われることがその中で起きていることに。
ミライはレイの手を掴んで喜んだ。
「レイ君、すごいよ。すごい!」
レイは思わぬミライの喜びに照れ笑いをした。
ミライもふとレイの手を掴んでいる自分の行動に赤面して、さっと手を離した。
その二人の会話を聞いて、小林は改めてレイのすごさを感じた。
「もしかして柊先生はこれを予期してました?」
「何故ですか?」
レイがその質問の意図を問い返した。
「いえ。そう言えば、柊先生はそれほど感動した様子を見せてないもので。」
「いえ。そんなことはないですよ。感動しています。
でも、まあ想定内ではあります。」
「想定内。。。」
「実は浜辺さんの作った散逸構造処理がキーなんです。」
「えっ?私、なんかやっちゃいましたか?」
「いえ。処理は全く問題ありません。
ですが、散逸構造処理を施したことで、その中で例えば超極稀な確率で脂肪酸が発生した場合、その散逸構造状態と同じ環境では同じように脂肪酸が生まれるんです。
つまり計算量省略化の結果、世界の至るところで同じように物質が発生し、それが集まって生命が生まれやすくなっている。」
「それがあの恐ろしいほどの確率でしか生まれないはずの生命の発生メカニズム。。。」
小林はレイがそこまで予期しているとは思ってもなかった。
そのことにただただ驚いていた。
「さすが、柊先生です。」
そのやりとりを聞いて浜辺が言った。
「そりゃそうでしょ。宇宙の全てを知る柊先生ですよ。」
小林が浜辺を見て納得しつつ言った。
「はは。そっか、そうですね。」
ふっと息を吐いて、小林が続けた。
「柊先生、このプロジェクトを公表する気はありませんか?
隠しておくにはあまりにもったいない。
全世界にこの偉業を教えるべきです。」
その提案にミライが反対した。
「でも、そんなことをしたら、浜辺さんのハッキングがばれて大変なことになるんじゃ。。。」
小林はあまりの興奮から、そんな単純なことすら考えられなくなっていることに少し驚いた。
「そうか。そうですね。すみません。忘れてください。」
そう言いながら小林は自身を冷静にさせようと何度か深呼吸をした。
生命が生まれたというシグナルを受けた後、一日が経過し、時間の経過と共に原始生命はやがて他の原始生命と混ざり合い、すこしずつであるが、大きくなっていた。
見た目にはそれほど変化はなかったが、それでも着実に進化の道を歩んでいた。
とてつもない速さで時間が過ぎ、惑星を遠くから俯瞰すると大陸の移動が進んでいることがはっきりと見て取れた。
その影響により、磁場が発生し、その磁場は恒星の強い放射線から原始生命を守っていた。
その環境で進化する生命たちは当然ながら過酷な競争を繰り広げていた。
ウラン鉱床からの放射線によって新たな種が次々に生まれ、その種のほとんどが絶滅していた。
生き残った種も与えられるエネルギーのシェアを奪い合い、共に生きることもあれば、その競争から脱落、絶滅する種も存在した。
このようにして種の多様性が爆発的に増していく。
地殻の変動は時に生命の生きている環境を非情なまでに変えてしまう。
プレートの移動により発生した地殻の亀裂により、今まで原始生命が生息していた場所に、重金属を含んだ水、つまり生命にとって猛毒の水が流れ込んだ。
結果、その地域の生命をほぼ絶滅させることが何度も起こっていた。
だが、その中にも僅かながら猛毒の原因である重金属を膜内に侵入させない構造を持つ生命がおり、その機能を持つ生命たちは生き残りを果たし、その領域を支配することとなった。
そのようにして、生命はどんどん進化の扉を開いていったのだった。
<次回予告>
仮想空間宇宙の中、恐ろしいほどの速度で進化していく生命。
それは小林の正気さえも失わせるほど、驚きと興奮の連続であった。
そして、生命は新たな一面を見せる。
その発見が世界を一変させるシンギュラリティとなることを彼らはまだ知らない。
次話サブタイトル「激動の進化とギャルのパンティー」。
次回もサービス、サービスぅ!!
<あとがき>
とうとう柊レイたちの宇宙に生命が誕生しました。
生命の誕生の確率は恐ろしく低いと言われており、その表現として、水の中に懐中時計の部品を入れてかき混ぜたら偶然懐中時計が出来ているくらいだとも言われています。
私は、何かしら偶然が必然のように感じられる仕組みがあるのではないかなと思っていて、それを表現してみました。
こういうのを考えると妄想が膨らみますね。
さて、この先、生命はどうなっていくのでしょうか。
次話サブタイトル「激動の進化とギャルのパンティー」。乞うご期待!!




