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ガロワのソラの下で  作者: 友枝 哲
38/66

〜第6章 孤独な宇宙〜 ∫ 6-1.宇宙のはじまり dt

まえがきは割愛させていただきます。

毎日0~1時の間に次話投稿いたします。


 

 負の世界で物質が極端に集まっている座標から正の世界に場が生まれた。


 高いエネルギー場は時間をゆっくりにする。


 ほんの一瞬だが、それはゆっくり進行する。


 正の世界に現れた場がどんどん膨らんでいった。


 まさに宇宙のインフレーションであった。


 さらに負の世界の物質同士が爆発的エネルギーを産み、お互いの世界を繋ぐ穴からそのエネルギーが流れ込み、そこから正の物質が生成された。


 生成された正の物質は繋がった穴から流れ込む負界の物質と接触し、すぐに対消滅を起こした。


 その対消滅はさらに場を高いエネルギーに持ち上げ、空間はどんどん拡散した。


 エネルギー場の広がりが、負の世界において物質が多く存在する領域を越えた時、負の物質が流れ込みにくくなり、次第にゲートが閉じていった。


 そして、生成された正の物質が残る結果となった。


 それらの正の物質は瞬間的に拡げられる空間に則り、拡散していった。


 エネルギーの高さから眩いばかりの青白い光を放っていた空間は、光の速度をはるかに超える速度で拡散させられ、拡散によるエネルギー密度の低下が空間の色を薄いオレンジ色まで変化させていった。


「宇宙の晴れ上がりね。」


 ミライが言葉を発した。


 何度も見たはずの光景だったが、特別にきれいに見えた。


「うん。すごくきれいだね。」


「とうとう始まりましたね。」


「うん。柊先生の宇宙。」


 小林が言った。それにレイが応えた。


「いえ、ここにいる四人の宇宙です。いや、五人。いや、七人かな。」


 ミライは何となく残りの三人が誰なのか分かった。


 小林と浜辺は良く分からなかったが、聞くのは野暮だと思い、そのまま問いかけることはしなかった。


(やっと始まったよ。見ていてね。)


 レイは心のなかでそう言った。





 三日後、全員が超新星爆発の時を待っていた。


 レイは午前中、研究室に顔を出し、午後から旧研究棟に向かっていた。


(そろそろですよね?)


 浜辺がメッセージをみんなに送った。


 それに反応するミライ。


(楽しみね。)


 すぐにレイが返した。


(少し怖いけど。)


 ミライにはそのレイの言葉が意外だった。


(今回は大丈夫だよ、絶対。)


 ミライは自分でも『絶対』という言葉を自然と使っていることが不思議だった。


 だが、心がそう言っている、なぜか自分で納得できていた。


 レイはミライの言葉に頷くも、どこかまだ少し不安だった。


 実はレイの中でも晴れ上がりを見た時から確信めいたものが産まれていた。


 ただ、今までの幾度とない失敗がレイを臆病にさせていた。


 レイは旧研究棟の前に移動し、いつものように周りを見回した後、暗証番号を打ち込み、旧研究棟に入っていった。


 レイが秘密基地に到着した時、小林と浜辺がすでにスタンバイしていた。


 レイが入ってきて、少し後からミライも合流した。


「何とか間に合った〜。」


 ミライは世紀の一瞬を逃したくない一心で走ってきていた。


「大丈夫です。まだもう少しかかりそうですね。」


 浜辺が入ってきたミライに言った。


「走ってきたってことは、もしかして夏目さんも刑事さんに付きまとわれてるんですか?」


 歩いて近づいてきながらミライが問いかける。


「えっ?刑事さん?」


 小林も聞く。


「もしかしてまた刑事さんが研究室に来たの?」


「はい。突然なくなっていた『アンドロイドの憂鬱』が、また起こりだしたって。


 まあ、何も知らないって追い返しましたけど。」


「やっぱりこの件と深く関係がありそうですね。


 問題は起こってないから、まだ良いですが。」


 ちらっと小林がレイの方を見た。


「もちろん、前回も話しましたが、問題が起これば、止めることはお約束します。」


「あっ、そろそろじゃない?」


 ミライが話を打ち切った。


 その言葉でみんながBCDのViewerに注目した。





 巨大な恒星がガスを集めながらも、自身の重みからの収縮と内部の爆発による拡散とで微妙に揺れていた。


 誰からみても一目瞭然で不安定な状態であった。


 恒星から大きなフレアが発生した。


 フレアが内部の圧力を外に放出し、それによって収縮する力が内部圧力による拡散の力を上まった。


 それをトリガーにして急激に恒星が収縮した。


 巨大な星だったものが、手のひらに載せられそうなほどの極小の球体に圧縮された。


 そして、次の瞬間。。。。


 その球体から目に突き刺さるような目映い閃光。


 白を超え、青い光の渦。


 空間を歪めてしまうほどの衝撃波が広がった。


 まさにエネルギーの狂乱。


 4人の位置は一瞬にして光に飲み込まれた。


 そして僅かに遅れて鼓膜を破るほどの轟音。


 重低音と超高音の入り交じった激しい振動。


 痛みを感じるほどのその音は永遠に続くように感じた。


 全員が少しのけ反った。


「何度見てもこれだけは慣れないな。。」


 小林が小さく言った。


 レイたちの宇宙のそこかしこで爆発が起こり、恒星の中では水素からヘリウム、そしてリチウム、ベリリウムが、最後には鉄が生成された。


 宇宙に多様な元素が生成されていった。


 それらの元素は全て素粒子から生成され、その素粒子は弦(String)の振動によりその特性が決定されていた。


 そして、しばらくして元素組成比が安定してきた。


「そろそろね。」


 ミライがレイを見る。レイもミライを見て頷いた。


 いつものようにレイが確認を行おうとViewerのウインドウを触る動作を行った。


 全員がとうとうこの時が来たという思いを持つと同時に、心には一抹の不安がよぎった。


 晴れ上がった宇宙とは真反対に暗黒星雲が立ち込めたかのような感覚だった。


 レイは恐る恐る成分表の表示ボタンを押した。


 1024分の1秒以下であった画面の表示更新レートもこの瞬間だけは非常にゆっくり進行したように感じた。


 確認しようとしたが、レイは瞬間めまいがした。


 歪む視野の中に水素の成分数値、酸素の成分数値が入ってきた。


 だが、その数値が正しいのか、思考が追い付かなかった。


 頭が回らない。


 ただ、次の瞬間、レイの視野に、いつもの画面には見慣れない緑色の文字が入ってきた。



(Matched 99.999999…%)



 その文字が見えた瞬間、レイの心の宇宙が晴れ上がった。


 全ての成分が現在の宇宙から想定される成分と一致していた。


 レイはみんなを見て言った。


「できた。。。。とうとうぼくらの宇宙が。」


 そう言うと、ミライがレイに飛び付いて喜んだ。


「やったーーー!ついにやったんだね!!」


 レイはミライの行動にドキドキした。


 ミライも自分の行動にはっとして、レイから離れた。


「ごめん。でも本当に良かった。。。良かった。」


 その様子を見つつ、浜辺も小林もレイに近づいて、手を取り合って喜んだ。


「ついに出来ましたね。さすがです。柊先生。」


 小林がそう言うと、浜辺は小林に言った。


「私も結構貢献したと思いますよぉ。」


 レイはその言葉を聞いて言った。


「確かに、その通りです。今回の変更で計算量は五倍以上になったはずなんですが、前と変わらず、三日ほどで成分確認できるまでになってますから。


 ものすごい進化ですね。」


「でしょ!?やっぱり柊先生は誰かさんとは違って良く分かってますね。」


 浜辺は小林を横目で見ながら言った。


「浜辺さんがすごいのは十分に分かってるよ。」


「本当かなぁ〜?」


 ミライはそのやりとりを見て、ふふふと笑った。レイもつられて笑った。


 いつになくいい雰囲気に小林が言った。


「何だか今日は祝杯をあげたい気分ですね。どうです?この後、完成祝賀会でも?」





「かんぱーい!」


 四人は近くの居酒屋に来ていた。


 ミライがジュースを少し飲んだ後、言った。


「でも、本当にできて良かった。


 正直言うとさ、できないんじゃないかってちょっと不安になってた部分もあったんだよね。」


「うん。ぼくも一時はもう駄目かもって思ってた。


 でも、みんなやいろんな人のおかげで。」


 レイはテーブルの上を見て、『誰か』を思い浮かべていた。


 そう言っている間にアンドロイドがテーブルにかなりの数の料理を運んできていた。


 それを見て、ミライが言った。


「えっ?なに、この量?こんなに食べられる?」


「えっ?全然大丈夫ですよ。このくらいなら一人でも。」


「えー!?一人でですか?」


 レイは驚いた。ミライも驚きつつ、再びジュースを手に取って飲もうとしていた。


 そんな時に小林が言った。


「そう言えば、二人って。。。」


 小林は二人を交互に見ながら続けた。


「付き合ってるんです?」


 レイはその言葉に驚いた。


 そして、レイの真ん前に座っているミライは口に含んだジュースをレイに吹きかけてしまった。


「あー、ごめん。大丈夫?」


 お手拭きでレイを拭きながらミライが反論した。


「もう何言ってんのよ。まだそんなんじゃないわよ。」


 小林が突っ込んだ。


「まだ?」


「もううるさい。」


 レイの顔を拭き終わった後、前のめりだった姿勢を戻して、再びジュースを飲んだ。


 そのやりとりにレイは顔を赤らめていた。


 ミライの様子を見て、小林がレイの方に姿勢を傾けて、ミライを見ながら小さい声でレイに囁いた。


「脈はありますね。」


 レイは更に顔を赤らめた。


 そんなやりとりに全く関心なく、浜辺は料理をバクバク食べていた。


 そんな小林に対して、ミライはカウンターを打った。


「それはそうと、あんたたちはどうなのよ?


 いつも仲良さそうに二人でいるじゃない?


 プロジェクトでつるんでいるだけってわけじゃなさそうだけど。」


 その問いに対して、浜辺が、唐揚げを口の中いっぱいに入れた状態で、あっけらかんと答えた。


「ええ。ふきまってまふよ(付き合ってますよ)。」


 突然のカミングアウトにレイとミライが驚いた。


「えええーー!」


 その言葉に小林がぼそっと言った。


「こういうのは、もうちょっと溜めて言わないと。。。」


「なんでぇでふ?(なんでです?)」


 サラダパスタを口に放り込みながら浜辺が反応した。


 ミライが気になって、さらに突っ込む。


「っていうか、もしかしてこのプロジェクトが始まる前から?」


 改まって聞かれて、小林が少し照れながら答えた。


「いえね。実は、このプロジェクトが始まって、最初のプログラム化が終わった後からなんですよ。」


 レイとミライが少し斜め上を見ながら思い出していた。


 ふと、ミライが思い出して言った。


「あー、あの3日間ぶっ通しで作った後!?」


「そうです。その時に、あーこの人のこういうところが好きなんだなぁと気づいたんです。」


 改めて話をされて浜辺は照れてしまうが、それを隠すためにもいつも以上にバクついた。


 その様子を見て、小林が続けた。


「で、柊先生は夏目先生のどこがいいなあと?」


 小林はレイを覗くように聞いた。


「えーと。」


 かなり照れながらも答えようとするレイ。それをミライは止めに入った。


「もう何を言わせようとしてんのよ!全く!」


 そう言いながらミライが話を遮った。


 そんなくだらない話をしながら四人は本当に満足した時間を過ごした。


 みんなと会話しつつも、レイは心の中で話しかけた。


(とうとうできたよ。)


 そんな時間にもサーブを待つアンドロイドが遠くを見つめていた。まるで空想をふけるように。


 そして、そのアンドロイド達の中では宇宙がどんどん拡大を続けていた。


<あとがき>

とうとう柊レイたちは宇宙を完成させました。

さて、これからこの宇宙で何が起こるのでしょうか?

そして、現実世界に現れている『アンドロイドの憂鬱』。人々はどう思うのでしょうか。

次話サブタイトル「奇跡の星」。乞うご期待!!


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