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ガロワのソラの下で  作者: 友枝 哲
28/66

∫ 4-3.隠れていたものへの驚き dt

まえがきは割愛させていただきます。

毎日0~1時の間に次話投稿いたします。


 

 レイは部屋に戻り、シャワーをした後、明日の富士アドベンチャーフィールドの場所と行き方を検索していた。


 すると、ずっと続けていた暗号解析が終了したというメッセージが表示された。


 レイは富士アドベンチャーフィールドの検索を横において、解析結果のウインドウを開いてみた。


 データを画像と仮定していろいろ解析してみたが、どのように解析しても意味あるような絵にはならなかった。


 やっぱり画像ではないのか、レイは宇宙項のことを考えつつも、解析の結果についても考えていた。


 ただの数字の羅列な訳はない。


 何か図形だったり、そういうものだと思っているのに、どんな風に解析してもやはり意味のあるものにはならなかった。


 とてつもなく大きな数字の羅列。


「ふう。」


 レイは軽く息を吐き、BCDから天井に夜空の星ぼしを映し出した。


 この星たちは何でこんなにも美しいと感じるんだろう。


 レイは美しいと感じる反面、何か寒気のようなものも感じていた。


 レイは心にまだ孤独が居続けていることを認識した。


 仲間や友人と思える存在が生まれてもなお消えない孤独。


 このうるさいほどの静寂がレイに孤独をより強く感じ取らせた。


 すると、突然メッセージが表示された。


(明日、十時にチケット売り場現地集合な~。遅れんなよ~。)


(分かったよ。絶対遅れないように行くから!)


 波多野のメッセージでさっきの富士アドベンチャーフィールドのウインドウを引っ張り出して行き方をチェックした。


 行き方を示している画面の横には以前波多野に見せてもらったジェットコースターの映像が映し出されていた。


 ローリングストーンズという名前のコースター。


 レールから飛び出し、再びレールに着地する様を見て、レイは生唾を飲み込んだ。





 レイはチケット売り場前に約束の十時よりも十五分前に到着していた。


 入り口から見えるのは昨日検索して出てきた映像と同じ動作をしているコースターだった。


 レイはまた生唾を飲み込んだ。


 数分後、前から見慣れた人が歩いてきた。夏目ミライだった。


「えっ?」


 レイは驚いた顔をした。


 ミライは何食わぬ顔で挨拶をした。


「おはよ。やけに早いじゃない。実は楽しみにしてたりして。」


「おはよう。っていうか、夏目さんもりょーじに呼ばれてたの?」


 ミライはわざと少し怒った顔をして言った。


「なに?あたしが来ちゃ嫌なの?」


 レイは即座に反論した。


「いやっ、そんなことないよ。


 りょーじと二人だと思ってたからちょっとビックリしただけ。」


「っていうか、あれ、めっちゃくちゃ怖そうなんだけど。」


 ローリングストーンズが開園前の試運転をしていた。


 レールから飛び出してドスンと再びレールに着地する様子は動画以上に恐ろく見えた。


 二人でそのコースターを見ているところに、りょーじと同じ学科の女子が一人やって来た。


「おっす、レイ。夏目さんも。待った?」


 レイはその声に反応して、ふと視線を下ろし、波多野と女の人を見た。


「おはよ。りょーじだけじゃなかったんだね。」


「あれっ?ゆってなかったっけ?わりーわりー。


 まあ、こういうのは人数多い方が楽しいだろ?


 今日は四人でとことん楽しもうぜ!」


「柊くんと勉強以外で会うの、初めてだよね。今日はよろしくね。」


 同じ学科の女子で学習会で会ったことがあった。


 その会ったときの様子が頭の中でフラッシュバックした。


(初めまして、高橋洋子と言います。)


 その挨拶のシーンを思い出した。


「あっ、確か、高橋さんですよね?よろしくお願いします。」


 レイはペコリと頭を下げた。


「あっ、名前覚えてくれてたんだ。


 うわー、ちょっと感動だなあ。何かうれしい。」


  そのやりとりをミライがじっと見ていた。


 そして、さらにそのミライの様子を波多野は観察していた。


 波多野は心の中で納得していた。


(ふ〜ん。やっぱりな。)


 波多野がチケットをBCDでそれぞれに配った。


「事前予約で買っといたしさ。今配ったやつな。


 じゃあ、さっそく入ろうぜ。」


 四人はゲートをくぐり、園の中に入った。


「まずさ、水着に着替えようぜ。


 ここって、水着のまま、アトラクション利用できるからさ。」


「分かった。じゃあ、ロッカールーム出たところでね。」


 そう言うと女子二人で女子更衣室に入っていった。


 波多野がレイに行った。


「じゃあ、俺たちも着替えようぜ。」


 歩きながら波多野がレイに言う。


「二人どんな水着か楽しみだな。」


 波多野とレイはささっと着替えた。


 波多野はオレンジ色のカラフルなハーフパンツの水着で、レイは青色がかった、これもハーフパンツ型だった。レイは上にもハーフ袖のウエアを着ていた。


 二人は更衣室の出口に移動して、そこに設置されている消毒用のシャワーをさっとくぐって抜け出した。


「うー、つっめてー!」


「ホントだっ!冷たっ!」


「やっぱ、これだよな。VRの感じとは断然違うよな!」


 消毒用のシャワーを出たところで、女子二人を待っていた。


 その時、波多野が思い立ったようにどこかに移動し始めた。


「あっ、レイ、ちょっとここで待ってて。」


 そう言うと波多野がどこかに行ってしまった。


 しばらくすると女子二人組が出てきた。


「お待たせ~。」


 高橋は大人っぽい紺色のビキニで、ミライもセパレートだが、上がワインレッドのフリフリのついたもの、下は半ズボンのようなダメージジーンズ型の水着だった。


 普段の服からは全然分からなかったが、ミライも出るところは出ているタイプでレイは目のやり場に少し困った。


 それを高橋が察して言った。


「この二人は柊くんにはまだちょっと刺激が強すぎたかなぁ?」


 レイを下から見上げるような姿勢で高橋がレイを見る。


「いえ、そんなことは。。。」


 レイの少しどぎまぎしている様子をミライがじっと見ていた。


 その視線に気付き、レイがミライを見た。


 レイはミライがすごく輝いて見えた。


(なんだこれは!?)


 その時、波多野が大きいチューブを二つ担いで戻ってきた。


「おっ、二人とも出てきたんだね。


 おー、二人とも水着がまぶしいね。


 こりゃ、他の男子に声かけられないようにしっかり付いとかないとな。なっ、レイ。」


 波多野がレイに同意を求めながら、チューブの一つをレイに渡した。


「うっ、うん。そうだね。」


 答えを聞くか聞かないうちに、波多野が高橋の方に寄っていき、わざと高橋を少しチューブで押した。


 その反動で高橋がミライを押す形になり、ミライがレイに接近した。


 そうなる様子を見ながら、波多野がみんなをプールに移動させるように言った。


「じゃあ、プール入ろうぜ!まずは定番の流れるやつからで良いよな!?」


 そう言いながら流水プールの方に軽く走っていった。


「ちょっと待ってよ~。」


 高橋が波多野の後をついていき、その後ろにレイとミライがついていった。


 波多野は人がまだあまりいないところに行き、何の躊躇もなく、チューブをプールに投げ入れ、そのチューブの輪っかに入るように足からダイブした。


 見事、チューブの中央に身体がすっぽり入った。


 高橋も波多野ほどの勢いではないが、水に飛び込んだ。


 レイとミライは水辺で少し水を触って、温度を確かめた後、足からゆっくり入った。


 そして、二人でチューブに掴まって、流れの方向に歩いていった。


 波多野たち二人はチューブに掴まって、流れにまかせたまま、移動していた。


「まだちょっと水、冷たいね。」


 ミライがレイに言った。


「そうだね。りょーじ、良く飛び込めたね。」


 そう言って、レイはミライの方を見た。


 同じチューブに掴まっているため、ミライの顔がいつもより近くにあった。


 レイはちょっとドキドキしていた。


 流れている間、時々人が密集したところや、人が移動する波しぶきで身体が押され、チューブを持つお互いの手が触れたり、直接肌が触れることがあった。


 その度に二人には斥力が働いているかのように、サッと離れた。


 レイには(ミライも同じだが)こういった経験がほとんどなかったため、何をどうすればよいか少し困惑していた。


 周りを見渡すと、家族連れもいたが、カップルも多く、そのほとんどが手を繋いでいた。


 そんな光景を二人ともソワソワしながら見ていると、ミライが水中で水が放出されているところに差し掛かり、急に身体を持っていかれた。


 突然の出来事にミライの手がチューブから離れた。


 が、その瞬間、レイが流れていくミライの手を咄嗟に掴んだ。


 レイは掴んだ手をグッとチューブに引き寄せた。


 そのおかげでミライはまたチューブのところに戻ることができた。


 強い力で引っ張られたミライはそのレイの腕力に少し驚いた。


「あっ、ありがと。」


「水出てるところってこんなに流れが急なんだね。」


「うん。ビックリした。急に身体が流されたから。」


 レイは咄嗟にミライの手を掴んだが、女子と手を繋ぐという行為自体が初めてで、レイの心臓は今までにはないくらい高鳴っていた。


 ミライに音が聞こえるのではないかとちょっと心配になって、ふとミライを見た。


 ミライもレイを見た。


 二人は一瞬目が合い、二人ともさっと視線を反らした。


 冷たかった水温も今では全然冷たさを感じなくなっていた。


 二人は少しぎこちない感じで流れるプールを一周した。


 二人にとって、この一周はあっという間の時間であった。


 波多野と高橋がちょうど最初にプールに入ったあたりで待っていた。


 レイとミライを見つけて、二人で手を振っていた。


「二人、もう最初のところに着いてるね。」


「うん。もう上がるのかな。」


「そうかもね。」


 レイとミライが波多野と高橋のところに着いた。


 そうして、波多野が言った。


「次、サーフィン行かない?」


「サーフィン?」


「ああ、水がシャーって出てさ、上手く乗りこなしてると本当の波みたくなって、さらにこなしてるといい時の波みたいに輪っかができるんだぜ。


 その水の上でサーフボードに乗るんだよ。結構面白いぜ!」


「うん。面白そうだね。夏目さん、どうする?」


「うん。どうせ来たんだし、やらないと損だよね。」


 ミライも賛成した。


「洋子ちゃんも良いよね?」


「うん。面白そう。」


「良し、決まり!じゃあ、行こうぜ!!」


 そういうと波多野は左手にチューブを持って、右手で高橋の手をぐっと引き寄せて、二人で先に移動を開始した。


 ミライもそれに遅れまいと移動しようとした。


「レイ君、行こう!」


 レイは、ミライの口から自分の名前が発せられたのを初めて聞いて、すごくドキドキした。


 そのドキドキからか、身体が緊張で動かなくなった。


 それを見て、ミライがレイの腕をさっと掴んで、波多野と高橋が走っていった方に走り出した。


 引っ張られながらレイはじっとミライに掴まれた腕を見ていた。


 流れるプールの時と同じく、いや、それ以上にレイの心臓がミライに聞こえるのではないかと思うほど高鳴った。


 どこを走ったかも覚えてなかったが、人の列ができているところに到着して、ミライがはっと腕を離した。


 何食わぬ顔で波多野がみんなに話しかける。


「やっぱ人気だな。でも二十五分待ちはまだいい方だな。」


「そうなの?」


 レイが少し驚いた。


「レイは知らないか。これさ、午後来ちゃうと一時間は平気で待たされるんだぜ。


 だから朝のうちにさ、流れるやつ一周だけで走って来たんだよ。」


「りょーじ、研究し尽くしてるんだね。」


「いやいや、これくらいは職業遊び人の常識だぜ。」


 そう言ってグッドの合図を出した。


「みんな、サーフィンの経験ある?」


 そう言いながら波多野は高橋の方を見た。


「ううん。私一度もないよ。できるかな?ちょっと心配なんだけど。」


「そうだな。一発目から立つのは結構難しいかもな。


 最初はさ、感覚つかむまで寝そべって重心移動の練習をして、何となく安定してそうだったら立ってみると良いよ。


 寝そべったままでも十分すごい気持ちいいからさ、無理することないと思う。」


「なるほど!さすが遊びの達人!」


「レイと夏目さんは?」


 夏目もレイの方を向いた。


「ぼくも全然やったことないよ。


 動画とかでたまに見かけるけど、やっぱり難しいんだよね?」


「そんなことないよ。


 実際のサーフィンより人工波だから安定しててさ、そこまで難しいってことはないよ。


 さすがに最初一発目からは難しいと思うけどね。」


「夏目さんは?」


 波多野が問いかけた。


「あたしはお父さんがなくなるまで、結構色々連れていってもらってた。


 サーフィンもやってたよ。まあ、小さい頃だけどね。


 身体が覚えてくれてるといいんだけど。」


 そんな会話をしつつ、レイはふととなりのアトラクションに目が行った。


 四人で輪っか型のボートにのって上の方から滑ってきて最後は蟻地獄のような形のところに流れ着き、グルグル回りながら中央の穴にボートごと落ちる仕掛けになっているものだった。


 アトラクションの中段にディスプレイが設置されていて、今滑っている人のボートが流れていく様子や乗っている人の心拍数などが表示されていた。


 ちょうど最後の蟻地獄のところに差し掛かっていて、ボートがグルグル回りながら中央に近づくにつれて角速度が上がっていく様子が見て取れた。


 そのモニタをじっくり見てたレイに波多野が声をかける。


「どした、レイ?あれ、乗りたいの?」


「あー、いや。何か気になって。」


「そっか、じゃあ、この次あれに乗ろうぜ。」


「いいね~。」


 高橋も波多野の提案に賛成した。


 ミライはレイがじっくり見てるのを見て、そちらの方向を見た。


 ミライが見た時、ちょうどボートが中央の穴に落ちるところだった。


 ボートに捕まっていた四人は落ちた勢いで、ボートから手を離してしまって、下のプールにドボンと突っ込む形になっていた。


 そして、その落ちた人をマーメイド型アンドロイドが拾い上げていた。


 ミライはレイが何かを感じ取っているような気がした。


 そうしているうちにサーフィンの順番が回ってきた。


 波多野がお手本を示すように先陣を切った。


 寝そべった状態からスタートし、波多野はなれた手つき、身体捌きでさっとボードの上に立ち上がった。


 そして、右に左にと移動しながら、さらにはぐるっと一回転させたりした。


 周囲の人たちも波多野の上手さに声を挙げていた。


 待っている高橋が一言言った。


「次、すごくやりにくいね。。。」


「そうだよね。波多野ももうちょっと気を利かせてくれればね。」


 ミライもチクッと一言言った。


 波多野のサーフィンは大盛況に終わった。


 次、高橋がボードの上に寝そべった。


 高橋は終始寝そべったままで滑っていたが、それでも楽しそうだった。


 途中一度だけ立ち上がろうとしたが、バランスが崩れてボードが揺らいだので、それからはトライせず滑っていた。


 次はミライが志願した。


 ミライは最初こそ寝そべっていたが、すごく安定した滑りを見せた。


 その後、すくっと立ち上がり、滑り始めた。


 回りがおーっと歓声をあげたところで、ボードが揺れ始め、転びそうになった。


 咄嗟にしゃがみこみ、ミライは上手くバランスを取り戻した。


 そして、再度立ち上がり、上手くボードをコントロールしていた。


 最後は波の輪っかの中で安定して滑っていた。


 波多野ほどパフォーマンスはしなかったものの、他の客からも歓声を受けていた。


 最後にレイの番がきた。


 レイは波多野とミライの滑る姿を脳裏に焼き付けていた。


 寝そべって滑るところは難なくクリアした。


 次の立ち上がるところもさっと立ち上がり、上手く出来た。


 少しの間、バランスを何とか保ち、文字通り波に乗っていた。


 レイは初めてであったが、ここまで出来たことに少し興奮を覚えた。


 その時、波多野が声をかけた。


「レイ、スゲーじゃん!」


 そして、ミライもレイの姿に少し興奮した様子で叫んだ。


「レイ君、すごいすごいすごい!」


 そのミライの様子が目に入った。


 とても嬉しそうに無邪気に跳び跳ねているミライが見えて、少しレイは気が緩んでしまった。


 その瞬間、ボードのバランスが崩れて、一瞬でレイはきれいにボードから投げ出されてしまった。


 大きな音と激しい水しぶきを上げ、レイが波に飲み込まれた。


 マーメイド型アンドロイドがレイを引き上げ、脇の手すりまで移動させた。


 レイはもう一度と思ったが、宙に示されている掲示板の残り時間がほとんどなく断念せざるをえなかった。


 アトラクションのブースから出てきたレイに、ミライが心配そうに聞いた。


「どっか打ってない?大丈夫?」


「うん。全然大丈夫だよ。」


 それを聞いた波多野がレイに声をかけた。


「っていうか、レイ、すげーな。本当に初めてかよ?」


「うん。自分でもちょっとびっくりした。」


「ちょっと才能あるんじゃないの?私なんか怖くて立ち上がれなかったのに。」


 高橋もレイに声をかけた。


「いや、でもりょーじや夏目さんにはかなわないよ。」


「まあ、おれは何十回もやってっからね。


 これでレイに負けたら、おれ生きていけねーよ。」


 波多野はそういって笑った。


「夏目さんもマジで上手いよね。ほら、回りの男どもが見てるじゃん。」


 レイやミライが周りを見てみると確かに男たちが数人ミライの方を見ていた。


「ちょっ、次行こうよ。」


 男たちの目線に気付き、急に恥ずかしくなってミライはあわてて移動しようとした。


 レイがまだ回りを見ていて動く気配がなかったので、ミライはレイの腕と高橋の腕をぐっと引っ張って移動し始めた。


 レイは走りながらも自分の腕を掴んだミライの手をじっと見つめていた。


 流れるプールの時と同じく心臓がすごく高鳴っていた。


 それほど時間がたたずに、次はレイが気になると言っていた四人乗りの丸い形のゴムボートに乗るジェットコースター型アトラクションのところに来た。


 階段を登り、上からレーンを見下ろした。


 レイはやはり蟻地獄の形に気をとられた。


 じっとそれを見ているレイにミライが問いかけた。


「どうしたの?気になるの?」


「うん。何か分からないけど。」


 今回も少し話ながら時間を潰し、順番が来て、四人でボートに乗り込んだ。


 レイはジェットコースター的なものに乗るのが初めてだった。


 今日は何から何まで初めてのことが多くて、レイの頭の中では終始新しいシナプスが繋がっている感じがした。


 ゴムボートが勢い良く滑り出し、四人は投げ出されまいとぎゅっとボートの手すりに捕まっていた。


 横に押し付けられるようなGを感じたかと思うと、途中内蔵がフワッた浮くようなむず痒い感じも初めてで不思議な感覚だった。


 最後に蟻地獄の形に流れ込み、回りながら回転半径が小さくなり、その分角速度が早くなり、最後は中央の穴にに落ちこんだ。


 その時、レイの頭に中に何かが閃いた。


 が、水に落ちた瞬間、それが消えてしまった。


 落とされた深いプールではマーメイド型アンドロイドが待機しており、すぐさま救助された。


 上がったあと、レイはミライに訴えかけた。


「何かが閃いたんだ。でもすぐ消えちゃった。。。」


「閃き。。。って?」


  高橋さんがレイに聞いた。


 波多野が気を利かせて高橋に伝えた。


「レイはさ、ブッ飛んだ科学者じゃん?


 だからさ、おれたちの常識では計り知れないことを思い付いたりするんだよ、きっと。」


 波多野は再びレイの方に向き直した。


「レイ。なら、もう一回乗るか?」


「うん。いい?乗っても?」


「もちろん!」


 そういってもう一回乗ったが、次の時には、何も思い浮かばなかった。


 助け出されたあと、ミライがレイのところにすぐに駆け寄った。


「どう?」


 レイは首を振って答えた。


「今回は何も。。。」


「じゃあ、もう一回乗るべ!」


 波多野が提案し、再度乗ったが、それでも思い浮かぶことはなかった。


「なんだったんだろう、あれは。」


「もう昼になっちゃったな。昼めしでも食べながら考えようぜ。」


 そう言ってフードコートで昼御飯を食べた。


 レイはいつものごとくカレーを食べていた。


「もう一回乗りにいく?」


 ミライがレイに聞いた。


「いや、大丈夫だよ。ごめん。何か付き合わせてしまって。」


「別にいいんだぜ。レイの気がすむまで乗っても。あれ、面白いしな。」


「あっ、ありがと。でもホント大丈夫だから。」


「じゃあさ、午後は普通のアトラクションの方に行こうぜ!」


 ミライはレイが何を気にしていたのか気になった。


「うん、そうだね。」


「私、ローリングストーン乗りたかったんだよね。」


 高橋が言った。ミライも高橋の意見に同意した。


「あたしも実は気になってたんだよね!」


「よし。じゃあ、午後はそっちにいこう!」


「それはそうとさ、レイ。ちょっと俺の話、聞いてもらっていい?」


 波多野が少し真剣な顔をして、レイに話しかけた。


「うん。もちろんだよ。どうしたの?」


「じつはさ、、、おれ。。。」


 波多野は少しうつむいて言葉を詰まらせた。


 その様子にレイは少し心配そうな表情を浮かべた。


 が、次の瞬間、波多野は明るい表情になって言った。


「四年からさ、おれも糸魚川教授の研究室に入ることになったんだよ!」


 それを聞いて、一瞬キョトンとしたが、すぐにいい知らせだと分かって、祝いの言葉を波多野に投げかけた。


「おめでとう、りょーじ!!


 とうとう念願が叶ったんだね。


 本当に良かった!おめでとう!!」


「夏休み明けから研究室に入るからよろしくな。」


「ぼくの方こそよろしくね。」


 嬉しい知らせにレイの心が少し晴れやかになった。


 レイはりょーじのそういう目標に向かって本気で頑張るところがとても好きだった。


 話を終えて、フードコートの外に出ると光が午前よりも眩しかった。


 その後も四人でいろんなアトラクションに乗って遊園地を満喫した。





 帰りの電車内は午後のアトラクションの話題で盛り上がった。


「ローリングストーンズ、あれ、すごかったね!」


 高橋が思い出しながら、少し興奮気味に言った。


「うん。ホント、怖かった〜!夢に見ちゃうかも。」


 ミライも思い出しながら話していた。


「ぼくはちょっともうあれはいいかな。」


「そうだね。レイ君、乗った後、ちょっと青ざめてたっぽかったもん。」


 ミライが心配そうな声で言った。


「いやー、それよりもやっぱり夏目さんのエアロカートだろ〜!


 あれはすごかった!!もうすごい何てもんじゃなかったよね。」


「うん、ぼくもびっくりしたよ。」


「だって、最初って柊君が運転してたよね?」


「そうです。でも全然上手く出来なくて、そしたらミライさんが代わってって。」


「あたしね、小さい頃からお父さんに良くエアロカート場に連れていってもらってたんだよね。


 そこの人にセンスあるって言われて一時期すごい練習したんだ。


 でも数学の方が面白くなっちゃって。。。」


「コーナリングがとにかく速かったよね。


 ほぼ最後だったのに終わってみれば優勝してんだもん。」


 そう言いながらみんなコーナリングをする姿を思い出していた。


 レイは特に一緒に乗っていただけに強烈な印象を持っていた。





 レイとミライの乗っているアトラクション用エアロカートは二人乗りで前にレイが、後ろにミライが座っていた。


 エアロカートの前方と後方の左右両端に四枚のディスクのような部位があった。


 その四枚のディスクが上面は青紫に、下面は赤褐色っぽくぼんやりと光っていた。


 ディスクは周囲にある空気をイオン化し、下からは斥力が、上からは揚力が得られるようになっていた。


 そのイオンクラフトという技術により、二人用バイクのような形のそれは空中に浮いていた。


 カート場全体でカートに大容量無線電力供給がされているため、そのカート場内だけカートを浮かすことが出来ていた。


 膨大な電力が必要となるため、こういったアトラクションやプロスポーツの場でのみイオンクラフトは実現されていた。


 レイが運転するエアロカートは誰がどう見ても安全運転で小さい子供以外みんなに抜かされていた。


 それとは対照的に波多野はこのエアロカートにも何度も乗っていて、うまいコース取りでトップを走っていた。


 ミライはもしかしてレイが自分に遠慮してゆっくり走ってるのかと思い、聞いてみた。


「レイ君、もしかしてあたしに遠慮してゆっくり運転してる?」


 ちらっと横を見ながらレイが答えた。


「いや、運転ってしたことがなくてさ。正直、ちょっと怖いんだ。。。」


 レイが苦笑いした。


 それを見て、ミライが提案する。


「良かったらさ、あたしに運転変わってくれない?」


「あっ、全然良いよ。お願い。」


 そう言うと、レイはエアロカートを横に止めて、ミライと前後を入れ替わった。


「しっかりベルトしてね。」


 カチャっとベルトがしまる音と共にミライが小さい声でエアロカートに話しかけた。


「あんたに生命を吹き込んであける。」


 そういうと、エアロカートを一気に加速させた。


 カートに取り付けられている四枚のディスクが強く発光し始めた。


 レイは驚いて少し横に顔を出して前に座っているミライを見た。


 ミライは目をキラキラさせてハンドルを握っていた。


 そして、すぐにコーナーに差し掛かった。


 ミライはすごい勢いでハンドルを回して、さらに自分の身体も左に傾けた。


 ミライの身体に応じて車体が少し傾いた。


 しかし、レイは身体がついていっておらず、慣性のまま曲がる方と逆側に身体が傾いていた。


 それを感じ取って、ミライが叫ぶ。


「レイ君!身体思いっきり左に傾けてー!!」


 後ろに乗っていたレイも身体に力を入れて、ミライと同じように傾けた。


 次の瞬間、浮いている車体のディスク左エッジが路面に少し擦れて、火花が散った。


 ギャギャギャギャと金属と路面が激しく擦れる音が鳴り響いていた。


 速度も少し落ちてはいるが、急な角度でコーナーを回った。


 次の瞬間、ミライが再び叫ぶ。


「身体、戻して!」


 その声を聞いて、レイは急いで身体をもとに戻した。


 ぐんっと加速しつつ、コーナーを抜けストレートに入った。


「頭、しゃがめて!」


 レイはそんな指示にしたがって身体を動かした。


 レイはモータースポーツがこんなに身体を動かすものとは知らなかった。


 どんどん先行していたエアロカートを追い抜かしていく。


 ほぼトップスピードを維持したまま駆け抜けて、最後の一周のラストコーナーで波多野たちのカートと一騎討ちになった。


 波多野は抜かれまいときれいなアウト-イン-アウトのコース取りをしていた。


 波多野機に対してミライがインから攻め込んだ。


 波多野はインに寄せてコースを塞ぎにかかった。


「夏目さん、悪く思うなよ!」


 その時ミライが叫ぶ。


「レイ君、あたしの腰に捕まって!」


「はい!」


 レイは咄嗟にミライの腰に手を回した。


 ミライとレイの身体が密着した。


 すぐに再び、ミライが叫ぶ。


「いくよ!せーので左前に重心移動ね!!」


 波多野機がインに詰め寄った瞬間だった。


「せーのっ!!」


 ほぼ二人同時に、倒れ込むほどの重心移動を左前に行った。


 車体の前方左側ディスクのさらに左前一点が地面についた瞬間、ミライは思いっきりハンドルを左に切った。


 車体が斜めに保たれながら車体後ろ側がスライドするように動き、車体自体もシフトした。


 まさにエアロカートでのドリフト走行だった。


 ミライが運転する車体のお尻部分がインに入ろうとした波多野機をグイッと外に追い出した。


 そして、インを取ったミライの機体は波多野機をアウトに追いやりながら自分もアウトにシフトしながら加速した。


 少し被せぎみに波多野機を押し出していたので、波多野機の加速力ももらいながら最後のストレートで波多野機よりも前でチェッカーをもぎとった。


「やったー!!」

「すごいよ!ミライさん!!」


 ピットに入った二人は大喜びだった。


 レイはミライの身体に密着していることに気がつき、思わずさっと手を離した。


 そして、レイはミライを名前で呼んだことにも気がついて胸が高鳴った。


 ミライも名前で呼ばれたことに少しドギマギした顔をしつつも、心の中ではすごく喜んでいた。


 そして、二人でハイタッチをした。





「あれはマジですごかったよ!最近じゃエアロカート負け無しだったのにな。」


 波多野のその言葉に対して、少し申し訳なさそうにミライが話した。


「実は一応、全日本エアロカート選手権小学生の部で優勝したことあるんだよね。」


「えーーー!マジか!!」


 みんな一斉に同じ反応をした。


「そりゃ勝てねーわ。どおりでスゲーわけだ。ははは。」


 波多野はそう話しながら、レイの楽しそうな表情を見て安心した。


(少しは気分転換になったかな。)


 ミライも波多野と同じような思いでレイを見ていた。


「ホント楽しかった。波多野君に感謝だね。」


 高橋も満足した様子だった。


「洋子ちゃんも楽しんでくれたみたいで、大成功だな。なあ、レイ!」


「うん。ホントにありがとう。誘ってくれて。」


 ひとテンポ入れたあと、続けた。


「明日からまた頑張れそうだよ。ありがとう。」


 その言葉に波多野がこの企画に込めていた思いをレイが察していたことに気がついた。


「あんま無理すんなよ。」


「うん。大丈夫。もう何があっても大丈夫な気がするよ。」


 そう言ってレイは屈託のない笑顔を見せた。


 ミライがその笑顔に安堵した。そしてミライも心に誓った。


(絶対に成功させてみせる!)


<次回予告>

加地教授に背中を押され、波多野に励まされ気力が充実した柊レイ。

彼は宇宙創成プロジェクトを何とか成功させようと気力を振り絞る。

そんな折りに夏目ミライと一緒にいるところを糸魚川教授に見られてしまう。

研究室の仕事を休んでいるくせにと柊レイに対して怒りを露にする糸魚川教授。

そして、柊レイにある仕打ちを下す。

だが、それはこの物語を大きく動かす分岐点となるのだった。

次話サブタイトル「衝突」。

次回もサービス、サービスぅ!!



<あとがき>

本当に波多野はいいヤツですよね。

実は私も波多野は浜辺の次くらいに好きなキャラクタです。

あと、夏目ミライの台詞。これはスプリガンやARMSで有名な漫画家皆川先生のDIVEという漫画から取らせていただいております。分かりましたでしょうか?

本編ですが、柊レイの気力がより充実しました。気は、いや機は熟してきているようです。

さて、どうなるのでしょうか。

次話サブタイトル「 衝突 」。乞うご期待!!


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