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ガロワのソラの下で  作者: 友枝 哲
20/66

∫ 3-2.Secret base dt

まえがきは割愛させていただきます。

毎日0~1時の間に次話投稿いたします。


 

 放課後、レイが図書館の奥に入っていった。


 図書館とはいえ、ほぼ全てがデジタル化されており、本はほとんど置かれていない。


 奥に設置されているウォールディスプレイは数式でびっしり埋め尽くされていた。


 五限目がなかったミライがすでに図書館に来ていて、レイの論文に関する展開式を検算していた。


 そこにレイが近づいていった。


 ミライは集中していて、レイの接近に気がついていなかった。


「夏目さん」


「うわっ!」


 突然レイが話しかけたことで、ミライが飛び上がるほどビックリした。


「ごめん。驚かすつもりはなかったんだけど。。。」


「えっ?もうそんな時間?」


「五限目終わってきたんだけど。」


「そうなの?あー、思ったより全然進んでないな。。。」


 レイが式を見た。


「時空次元の基底からのヒッグス座標差で重力が力を失うところだね。」


「そう。あんたの理論のキモのところよ。」


「ここは。。。」


 レイが式を書こうとしたが、それをミライが制止した。


「待って。これはあたしが自分で解くから。それよりもテーマのこと、どうするか話しましょ。」


 そういうと、ミライは自分のBCDをウォールディスプレイの中央の小さい台の上に置いて、BCDの横に掌を乗せた。


 BCDの持ち主であることの認識が完了した表示が出た後、ウォールディスプレイ全体を保存する操作を行った。


 すると、ウォールディスプレイの表示が全てBCDに吸い込まれた。


 保存が完了したBCDを再びミライが取り上げ、自分に装着して、レイに話しかけた。


「どうするかっていうか、結局、あんたの教授はたぶん今のテーマ以外認めないと思うわよ。」


「なんでそう思うの?」


「当たり前じゃない!こんな世界が注目するテーマで、且つよ、あんたが部下にいるのよ?


 誰がどう考えても、6次元の謎が少しでも解明できれば間違いなくノーベル賞でしょ?


 あの教授、あんたのテーマで自分がノーベル賞取ること考えてるに決まってるじゃない!」


 レイは内心やっぱりそうなのかなと少し気まずそうな顔をして話し始めた。


「まあ、何となくは気がついてた。


 今まで利用されることが多くて。たぶんそういうことに敏感になってるんだと思う。


 今回の大学進学の話が教授から来た時も薄々だけど、それを感じてたんだ。


 そこから衝突実験が少し嫌になって。。。」


「まあ、天才の宿命ね。あたしもそういう経験いっぱいしてきたし。


 あたしは逆にそういうやつ、つまりこっちを利用しようとするやつを利用してきたけどね。」


 ミライが少し笑みを浮かべてレイに言った。


 ミライの言葉を聞いてもまだ気まずそうな顔のままだった。


「まあ、いいんじゃない? あんたにはそんなの向いてなさそうだし、あんたがそんなんだったらあたしも。。。」


 ミライがはっとして言葉を止めた。


「???」


 レイがその続きを待っていたが、場を書き消すように言葉を続けた。


「とにかく教授は認めないんだし、もうあの子のでやるしかないんじゃない?」


「うん。そうかもしれない。」


「じゃあさ、Strike while the iron is hot!! もう一度みんなで集まりましょうよ。」


「そうだね。」


 レイがそう返事したのが先か、ミライが掌を自分に向け、BCDの表示をオンにしてメッセンジャーを打ち始めた。


 レイとミライ、そして小林と浜辺を入れた四人のグループを作り、メッセージを送った。


(昨日の続きで今から集まれない?)


 すると数秒後に小林から返事が来た。


(場所は?)


(昨日と同じワークステーションルームでどお?)


(了解)


 浜辺からはアイコンが送られてきた。


 ヘルメットを被ったカエルが敬礼をしながら(了解であります!)と書いているマークだった。


 レイとミライはそれを見て、変わったマークだなとだけ思った。


 特に気にせずミライが言った。


「行こう。」


「うん。」





 レイとミライがワークステーションセンターに入ってきた。


 昨日とは違い平日だったので、周囲に数人の人がいた。


 その奥に入っていくと、すでに小林が昨日話したところに立っていた。


 レイとミライが入ってきたことに気がついて挨拶した。


「ああ、こんにちは。」


「こんにちは。もう来られてたんですね。」


「早いのね。実はやっぱり一番興味があったりして。」


「そりゃまあ、興味はありますよ。柊先生のプロジェクトだし、夏目ミライさんもいるしね。」


「一応、あたしのことも付け足してくれるのね。ありがと。」


 小林がふふふと軽く笑った。


 その時、浜辺が少し息を切らせながら入ってきた。


 この日は水色のTシャツにスペースコロニーが都市の上に今にも落ちそうな絵柄だった。


「ほあっ、もう皆さんお集まりですか?一番乗りだと思ったのに。」


 レイとミライは特別何とも思ってなかったが、小林はその姿を見て驚いた。


「えっ?浜辺さんが五分で来るなんてありえない。奇跡だな。」


 ミライが鼻で少し笑って言った。


「そんなに遅刻魔なの?」


「そりゃもう。一度返事が来て、それでも来ないから連絡したらまた寝てたなんてこともあるくらいなんですよ。」


「そりゃまあ興味の差ですよ。だって今回は私が主役的なところまであるでしょ?」


「確かにそうですね。」


 レイも同意した。


 小林がそれを聞いて眉を持ち上げてミライにやれやれのアピールをした。


 ミライはそれを見て、またふふと鼻で笑った。


 小林がレイに問いかける。


「で、柊先生。どうするんです?」


「一応教授に掛け合ってみたんですけど、全然取り合ってくれなくて。」


 一度ミライの方を見て、続けた。


「それでさっきちょっと夏目さんとも話したんですけど、やっぱり浜辺さんの技術を使わせてもらおうかと思ってます。」


 浜辺がガッツポーズをして応える。


「そうこなくっちゃ。」


 そこからはレイが少し小さい声で話をする。


「で、やる上で、まず誰にも見られないところで開発を進めたいんです。


 場所を探したいんですけど、みなさん、どこか心当たりとかありませんか?」


「場所か。」


 ミライと浜辺は思い当たるところが浮かばなかったが、小林はふと思い付いた場所があった。


「あっ!旧研究棟、どうかな?」


「旧研究棟?ってIT管理センターの奥にある?」


「うん。あそこ、もう使われてないけど、結構資材は置かれたままらしいし。」


 小林の言葉に浜辺が聞く。


「端末とか椅子とか机とかもあるんですか?」


「うん。そう聞いているよ。電気もまだ来てるらしいし。」


 ミライが提案する。


「一度行ってみない?」


「そうだね。行ってみよう。」





 レイたちが旧研究棟の前に着いた。


 普通の建物と同じように入ろうとしたが、権限がないため、ドアが開かなかった。


「あれ?入れない。」


「権限がないのかな?」


 それを見て、浜辺がBCDを起動しながら言った。


「ちょっと待ってくださ、い、な。」


 宙に浮いたキーを叩きながらおまじないを唱えた。


「ちょいちょいちょいのちょい」


 最後にリターンを押す素振りをした。


 他の皆には画面が見えてなかったので、何のことか分かっていなかった。


「じゃあ、適当に決めちゃいますね。」


 浜辺が何かを見ながら話し、少し考えた後、ポチポチとボタンを押していく素振りを見せた。


「決めました。62951413。押してくださいな。」


 ミライが番号を口にしながら暗証番号を入力した。


 すると閉ざされていたドアが開いた。


「テロテロテロテロン♪」


 ミライもレイもその浜辺の効果音には?であったが、構わず中に入っていった。


 次に浜辺も入ろうとした。


「また、ハッキングしました?」


 小林が問いかけるが、浜辺は気にも止めず、建物に入った。


 小林も小言を言いながら浜辺の横に並んで入っていった。


 壁にはウォールディスプレイが貼られておらず、天井も全面照明ではなく、LED照明が一定間隔で備え付けられていた。その照明も一部光っていなかった。


 周り見渡しながらミライが思わず言葉を放った。


「うわー、古い施設ね。自己修復もしてないじゃない。」


「昔、父さんの研究室に行った時、ちょうどこんな感じだったよ。少し懐かしい感じがする。」


 ミライはレイに父親のことを聞こうとしたが、少し躊躇った。


 レイが話している間、浜辺が興味深そうに先に歩いていった。


「本当ですね。確かに設備、古いのは古いですけど、まだ全然使えそうですね。」


「みたいだね。確か四階に情報端末室があったと思うんだけど、そこ行ってみる?」


 小林の提案にレイが反応した。


「そうですね。そこ行ってみましょう。」


 みんなでエレベータに乗り、四階に上がった。





 ドアを開け、四人が情報端末室に入った。


 机が並び、机の両脇に厚み、奥行きとも五センチくらい、高さが八十センチくらいの棒が立っていた。


 机の上にはキーボードと二十一世紀初旬にあったマウスの役割をするタッチセンサが備え付けられていた。


 それを見て、浜辺が少し興奮気味に走って中に入っていった。


「うわー!前時代的~!」


 そして、おもむろに一つの机に向かって座り、上に置かれたキーボードの中の起動ボタンを押した。


 両脇の柱から光が走り、それがディスプレイとなった。


 その画面にはOSのロゴが表示された。


(Welcome to QuantamGate22)


 それを見て、浜辺がうなる。


「う~ん。ふるっ。。。QG22ってもうサービス終了してますよね?まあ、いっか。」


 浜辺の周りに他の三人も集まった。


「ちょっとちゃんと動くのか確認しますね。」


 浜辺は何個かソフトを起動してそれぞれが正常動作していることを確認した。


「うん。大丈夫そうですよ。どうします?」


 レイは周囲を見回して言った。


「うん。ここならたぶん他の人は自由に出入りできないし、ちょうどいいかもですね。」


「じゃあ、ここが今日からあたしたちの『秘密基地』ね。ちょっとワクワクするわね。」


「確かにね。今までワークステーションセンター借りてたけど、こっちの方が快適そうだし、こっちに資料とかも移そうかな。」


 小林が満更でもない表情を浮かべた。


 一段落したように感じ、レイがその場を仕切るように言った。


「じゃあ、場所も決まったし、明日から本格的に取りかかりましょう。


 ぼくと夏目さんで素粒子物理の一般数式化、夏目さんはちょっと大変だと思うけど、小林さんとも化学物理の一般数式化もお願いします。


 それと浜辺さんはぼくと一緒に処理能力テストをやりましょう。」


「ふふふ、明日から忙しくなりそうですね。オラ、ワクワクすっぞ!」


 レイとミライの二人は頭の上に?が浮かんだ。


 小林は慣れているのか、すぐに言葉を発した。


「僕もちょっとワクワクしてきたよ。いよいよ明日からスタートだね。」


「うん。あたしはちょっとかなり頑張らないとだね。


 先が見えない感じ。正直不安でいっぱいなんだけど。」


「大丈夫。夏目さんならきっとできるよ。ぼくも全力でやるから。」


 レイの目に力が漲っているのがミライには分かった。


 その目の光がミライにはこれ以上にない安心材料となった。


<次回予告>

プロジェクト推進の秘密基地に心踊らせる4人。

各々が物理、化学の体系を数学に落とし込む。

そして、プログラム化が進んでいく。

無の世界にビッグバンを産み出すために!

次話サブタイトル「心を踊らせるチコの輝きと孤独を照らすグラナダの光」。

次回もサービス、サービスぅ!!



<あとがき>

もうすでにお気づきだと思いますが、浜辺が着ているTシャツの柄であったり、台詞であったり、実はいろんなアニメやゲームを題材にしています。

以前では、プログラムをスタートさせる時の掛け声をあるアニメ映画から取ってますし、今回も途中で旧研究棟のドアを開けた際に、Switchのオープンワールドで人気爆発したゲームの効果音を取っています。仕掛けドアなどを開けた時に効果音が鳴るあのゲームです。

今後もいろいろ書いておりますので、是非何を使っているのか考えてみるのも面白いかなと思います。

さて、本編ですが、とうとう秘密基地も決まり、宇宙創成が本格的にスタートします。

うまく行くのでしょうか。

次回、「心を踊らせるチコの輝きと孤独を照らすグラナダの光」。乞うご期待!!


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