〜第1章 4つの力〜 ∫ 1-1.物理界の超新星 柊レイ dt
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山梨県北杜市大泉町のある和風建築の一戸建てで葬儀が執り行われている。
家の周りには葬儀に参列する人、そして、報道陣がいる。
家は玄関から入って、右側が居間、左側が和室に繋がっていた。
居間の奥には四十台半ばの男性の遺影、それより少し若い女性の遺影が二つ並んでいる。
その横では小学生低学年の男の子が制服を着て、放心状態で座っている。
目は泣き明かしたのか赤い。
美人系アンドロイド報道員が家の前でカメラに向かって話している。
「今、柊博士夫婦の葬儀が執り行われています。
果たしてあの惨劇は柊博士の受け取ったデータによるものなのか、未だにはっきりとした証拠は上がっていません。
謎は深まるばかりです。」
ふと意識を戻した男の子の耳に、控え室として使っている和室で話す親族の声が入ってきた。
「誰が引き取るのよ。今もう決めないといけないんでしょ?」
「律、そりゃお前のところだろ。蓮はお前の弟じゃないか。」
「そんな急に言われたって、うちは無理だよ。
あいつのことでうちだって迷惑被ってんだから。これ以上は無理無理。」
「でもあの子、親の血引き継いでんのか、すごい数学の才能あるらしいじゃん。
将来金になるかもよ。」
和室の入口襖戸から大人たちがふと男の子の方に目をやる。
そして再び柊博士の兄の方をみんなで見る。
柊博士の兄が視線を受け、少し身を引きながら言った。
「ああっ、ダメダメ。うちは子供が二人もいるんだから。」
そんな親族たちの横をまだ若い青年が通りすぎる。
そして、放心状態の男の子の前に膝で立ち、その若い青年は男の子をぎゅっと抱きしめた。
「何も心配いらない。大丈夫。君は一人じゃない。」
青年の体温が伝わってくる。男の子の心がなぜかすごく落ち着いた。
(一人じゃない)
なぜだか本当にそんな気がした。
(朝ですよ。起きてください。)
AIによって作り出された聞き心地の良い声が骨伝導で身体の中に響く。
一人の男子がフッと目を覚ます。
ベッドに組み込まれた生体センサが覚醒を感知し、聞き心地の良い目覚ましの声が消える。
それまで無機質だった壁全体がいつの間にか海辺の朝日の映像に切り替わっていた。
波や浜辺のヤシの木などが壁から少し飛び出して、映し出されている。
画素毎のピエゾ偏向板が光干渉を引き起こさせ、実際に映像を壁から数10cmほど立体化させていた。
「またあの夢か。。。」
彼は幼い頃の記憶を夢に見ていた。
これまでにも幾度と繰り返しこの辛い夢を見ていた。
ベッドの頭側に付いている装置『Sweet Dreamer』も彼の心の闇をほどくことができていなかった。
彼にとって辛い夢だが、いつも決まって最後の抱擁と言葉で救われる。
瞬間ではあるが、深い闇の中にいる孤独感からほんのわずかだけ解放されるような感覚。
あれがあったから今まで生きてこられたような気もしていた。
彼は自然と流れ出ていた涙をぬぐい、上体を起こした。
身体の動きを感知し、パジャマに描かれた羊の絵が柵を飛び越える動作をしはじめた。
彼はそんなことは気にも止めず、ベッドの横に置いていた白っぽく薄型の四角いウエアラブルデバイスを二個取り、両耳の後ろに装着した。
デバイスの表面に(gene certification… Complete)と緑色の文字が表示されると、上体を起こした男子の目の前の空間にも文字が現れた。
(柊レイ Log-in)
その表示と同時に柊レイが手を上げて、壁の一部を二点指差した。
「ウォールスクリーン。ライブニュースチャンネル。」
そう言うと、指を指した二点を対角とした四角形がディスプレイになった。
ちょうどコマーシャル中でディスプレイからはハンバーガーとMの文字が数十cmほど飛び出していた。
中背で華奢な身体をすっと持ち上げ、ベッドから立ち上がる。
おもむろにパジャマを脱ぎすて、部屋の角にある四角く窪んだエリアに入る。
「シャワーとその後、乾燥も。」
四角いエリアの入り口がガラスで区切られた。
壁に映し出されている映像がそのガラスにも映し出された。
区切られたエリアにシャワーが降る。
シャワーが終わると、次にエアシャワーに変わった。
シャワーをしている間にシャワー室の横に埋め込まれた小型ロボットが出てきて、脱ぎ捨てられた服を回収し、元の場所に戻っていった。
服の羊がまた動作を感知して動き出していた。
柊レイがシャワーをしている間にコマーシャルが終わり、ニュースが流れていた。
「ほぼ光の速度に加速した電子、陽子を四つ衝突させる世界初の国際実験施設を日本の箱根外輪山に建設することが決定し、代表者である第二新東京工科大学の糸魚川教授が記者会見を行いました。」
教授が意気揚々と話をしている。
「2074年に完成した超統一場理論を実証できる実験がとうとうこの日本で実施できるようになります。
世界にはまだ見ぬ6次元が隠されています。
この実験はその6次元の謎を解き明かす可能性を秘めています。
世界の本当の姿を発見できる日がすぐそこまで来ているのです。」
無限大の記号のように丸を二つ携えた直径4kmの円形加速器が映し出されていた。
二つの輪っかは九十度の設置角度差があり、輪っかが縦になっている方は山の中に造られるCGが映し出されていた。
そして、その中で加速した電子、陽子が衝突するアニメーションが流れていた。
シャワー開始から約10分後には柊レイの髪が少しだけ濡れた状態でガラスの仕切りが取り外された。
柊レイは部屋に備え付けられたクローゼットの方に行き、パンツを履き、特に悩むでもなく、蒼い半袖の襟付きシャツ、ジーンズ柄のハーフパンツ、白く短い靴下を取りだし、履いた。
靴下は右側から履くのが習慣だった。
動きを感知し、袖の先に付いている小さい馬のマークが走りだしていた。
柊レイは服を着ながら誰に向かって言うでもなく声を出した。
「コーヒーラテ入れて。」
どこからともなく返事が聞こえた。
「かしこまりました。」
そして、柊レイは鏡を見ながら自分の顔色を確かめた。
鏡には2075年9月6日 7時55分という日時、そして寝ていた時の健康状態が表示されていた。
自律神経推移、血液中酸素濃度推移のグラフ、そしてストレス過多状態が続いていることも表示されていた。
それをちらっと見たあと、再び自分の顔を見た。
心の中で(大丈夫)と自答した。
そして掌を自分の方に向けた。
視野の横にアイコンが出てくる。
耳の裏に張り付けたデバイスBrainConnectedDevice=BCDが、脳の視覚神経に直接信号を送り込むことで、空中にアイコンを可視化させていた。
指でアイコンをクリックし、今日受ける講義の時間、場所を再確認した。
コーヒーラテが小さいダイニングテーブルの上に出てくる。
それを飲みながら、指で宙に表示されている別のアイコンをトントンっと叩いて実行した。
すると目の前にキーボードが可視化された。
柊レイは可視化されたキーボードで何かを打ち込み、(Run)を指でクリックした。
そして、掌を裏返す動作をして、アイコンやウインドウ、キーボードなどの表示を消した。
「うん。行こう。」
柊レイはコーヒーを飲み干して、靴を履く。
靴は自動でサイズ調整され、ブーメランのようなマークが靴を一周して元の位置に戻った。
柊レイはその靴の模様の動きも気に止めることもなく、部屋を後にした。
壁のディスプレイが消え、壁の色そのものが少し暗い色に変わる。
コーヒーカップが自動で片付けられ、ベッドが収納された。
生徒達が講堂に入っていく。
100人程度が裕に入ることのできる階段状の扇型講堂であった。
前方の壁が全てウォールディスプレイになっていて、新入学の時期であるので、そこには大学の課外部活動に関する情報が目にうるさいほどに立体化され、流されていた。
サッカーや野球、テニス、そして合気道、ロボット研究会など、多種多様な映像が映し出されていた。
数人単位の固まりがその映像を見ながら講堂の好きな位置に座っていった。
柊レイも講堂に入っていった。
先週開催されていた編入学生向けのオリエンテーションに参加しなかったため、まだ知り合いはいなかった。
その事に関して、柊レイはむしろ積極的に参加しなかった。
人と関わることであまり良い結果が得られていないことから来る習性のようなものだった。
柊レイは周りを見回した後、教壇前方の中央ライン、前から二段目の端に座った。
先生の前の席というのはいつの時代も人気がない。
それでも時間が過ぎていくうちに、ほぼ席は埋め尽くされていった。
学期の最初の授業ならではだ。
大学の講義は、一時的流行した伝染病のため、不可避的にオンライン化され、その後、ウイルスの弱毒化により落ち着きを取り戻したが、その時の流れから大学や会社も一時的にオンライン化が進行、定着した。
ところが、オンライン化によるものと思われる学力の低下、コミュニケーション能力低下が顕著に現れだし、結局はオフラインに戻っていった。
ザワザワした雰囲気のなか始業のチャイムが鳴り響く。
前方のドアから教授が入ってきた。
シワだらけのYシャツ、ズボン、無精髭で髪も少し脂ぎって、教授室ではきならしたスリッパのまま、教壇に立った。
誰がどう見ても横柄な印象を受ける、そんな態度だった。
その態度にいつの間にか講義室のザワザワがかき消されていた。
「さて、私は今期、君たちに関数解析学3を教えることになった真鍋だ。よろしく。」
教授はBCDを通して視野前方に教科書を映し出した。
その教科書のページを指でペラペラとめくった。
めくる度になぜか指を嘗める仕草をする。
それに女子生徒が嫌悪感を示していた。
しばらくページをめくったかと思うと教授は鼻で笑って、教科書のウインドウを閉じた。
教授はクルッと振り向き、ポインターデバイスで壁の左上から右下を指して、壁の大部分を電子ボード化した。
そして喋りながら数式を書き出した。
「正直言って、こんな幼稚な内容を君たちに教えるのは時間の無駄だ。
うちの大学の三回生にもなる君たちがこのレベルを教えてもらおうということも気に食わん。
こんなのは教育系動画を見たり、図書館にでも行けばいくらでも学べる。
第一私がそれを教えるこの時間自体が最も無駄だ。
時間の浪費以外の何者でもない。」
数式を書き終えた教授が生徒たちの方に再び振り向いた。
「この問題についてのレポートを今期の課題とする。
これ以上、授業は行わない。
それがお互いにとって最も有益だろう。」
最後に皮肉混じりの一言を付け加えた。
「誰かこの問題の、『意味』が、分かるヤツ、いるか?」
書いている内容のあまりの難解さに周りがざわつき出す。
教授はドヤ顔をした。
柊レイはその問題を見て、純粋に数学の探求心をくすぐられた。
が、回りの様子を少し伺った。
誰も反応する様子がない。
(答えてしまって良いもんだろうか?)
柊レイは問題への興味に負け、少しおどおどしながら手を挙げた。
袖の馬も動き出した。
「お前、本気か!?」
「…何となく解けそうな気がします。」
「はっ?解けそうだ!?お前、これが何か分かってるのか?」
教授は腹の中で勘ぐった。
(こいつ、その場しのぎか、目立ちたいかでとんでもない嘘を言ってやがるな。)
教授はニヤケ顔で続けた。
「はあ。。分かった、分かった。じゃあ、前に来て解いてみたまえ。」
皮肉さが言葉ににじみ出ている。
柊レイは席から立ち上がった。
そして、言われるがまま電子ボードの前に歩いていき、一旦目を閉じる。
教授は、柊レイが目を閉じたのを見て、してやったりな表情を浮かべた。
(やっぱりブラフかましてやがったな、こいつ。
どうやって懲らしめてやろうか!?)
だが次の瞬間、柊レイはパッと目を開き、突然人差し指をペンにして、式を怒涛の勢いで書き始めた。
意外な行動に教授の口がぽっかり開いた。
柊レイは書きながら話し始めた。
「これは端的に言うとヒルベルト空間に不可換ノイマン環を内包させられるかという試みですね。
実に面白い試みだと思います。」
柊レイの書き込む数式でどんどん電子ボードが埋め尽くされていった。
柊レイは先生に問いかけた。
「すみません。電子ボード、追加してもよろしいでしょうか。」
先生は口をあんぐり開けたまま、教壇の上のポインターデバイスを指差した。
柊レイはポインターデバイスで今書いていた電子ボードの上に別の電子ボードを作り、上下を入れ換えた。そして、さらに書き出した。
教授は途中からその式を追いながら記憶しようと必死だった。
彼のプライドがコピーをすることを拒んでいた。
生徒の中の1人が小さい声で言った。
「あっ、私あの子知ってる。確か去年、あれ?一昨年だったかな?
重力まで含んだ超統一場理論作ったって話題になってた子じゃない?」
「えっ、それ、私も見たよ。何だっけ。。
うーん。そう。レイ理論!!流行語になってなかった?」
みんな即座に手のひらを自分に向けて自分のBCDを起動し、検索していた。
すぐに動画がヒットする。
今まさに電子ボードの前に立って、教授に話しかけている男子、それより少しだけ若い子が映っていた。
ノーベル賞確実との見出しがその技術の高さを物語っていた。
『レイ理論』・・・詳細には今話の最後に掲載。物理が好きな方はそこで。
物質に対して働く物理界4つの力(強い力、弱い力、電磁気力、重力)を全て統合した超統一場理論。
柊レイの理論の前までは、世界は11次元で出来ているという超弦理論と、空間は飛び飛びの値を持ち、時間という概念を持たないループ量子重力理論の2つが有力理論であった。
柊レイは、この2つの理論の利点を活かし、欠陥を補完し、加えて、それまでとは全く異なる次元『空間の歪み軸=ヒッグス軸』と全く異なる前提条件『重力子の存在位置』を用いて、全てを簡潔に美しく数式化したのだった。
この理論によって、今まで謎であったブラックホールの持つダークエネルギー、ダークマターの一部までもみごとに数式で導き出すことができた。
また、レイ理論では、超弦理論と同じく、11次元の世界を支持し、空間を表すXYZの3次元、時間の1次元の他に、空間の歪み軸=ヒッグス軸1次元があるとした。
残りの6次元は未だに不明であったが、そこには大きく分けて2つの世界があることが数式から示唆されていた。
未知の部分はあるものの、この理論は最新理論として、取り上げられ、若干15才の若き青年が物理界の新たな一歩を作り上げた事実に誰もが驚愕したのだった。
教授は教壇に立つことへの興味の薄れから、今期の生徒の名簿を見ていなかった。
まさかこんな生徒が入ってきていたとは全くの想定外であった。
教授はぐうの音も出なかった。
自分が数年かけてもまだ解けていない問題を年端もいかぬ若造が今まさに目の前で解こうとしている。
無力感と立つ瀬の無さに汗が止まらない。
あれよあれよと言わん間に電子ボードには複数のウインドウが重なって、それぞれのウインドウ全面にびっしり数式が書き記されていた。
終業のチャイムが鳴る。
次の講義に行くために講義室から出ていく生徒もいれば、教授の落胆ぶりを見たくて、残っている生徒もいた。
休憩時間に入ってもまだ柊レイは書き続けていた。
そして、次の授業を受ける生徒が入ってきていた。
入ってきたのは数学科の生徒たちだった。
その中に夏目ミライがいた。
「できた!!」
柊レイが少し上を向いて息を大きく吐いた。
そして教授の方に振り向いた。
「すみません。思ったより時間がかかってしまいました。」
ふと教授が柊レイの方に目をやる。
そして驚きを通り越した落胆の声でつぶやく。
「パーフェクトゥ…」
残っていた生徒達はその声で彼が問題を間違いなく解いたことに気がついた。
大歓声に指笛、そして拍手喝采が起こった。
講堂に入ってきた数学科の女子、夏目ミライは式を見て、一言言った。
「へー、まあまあね。」
※「あとがき」に次回予告があります。
『レイ理論』(詳細。物理好きな方は読んでみてください。)
全ての物質に対しての力に関する法則を解き明かした超統一場理論。
世界は4つの力で成り立っている。
強い相互作用(力): 素粒子を結びつけ、原子核を作る力
弱い相互作用(力): 素粒子の崩壊を起こさせ、素粒子の種類を変える力
電磁相互作用: 電磁気力
重力相互作用: 重力
柊レイがこの理論を発表する前までは、超弦理論、ループ量子重力理論の2つが全ての力を内包する有力理論であった。
だが、この2つには大きな不確定要素があった。
超弦理論にはマルチバースによる重力の極小化表現に、ループ量子重力理論には空間の量子スピン変化による時間表現に大きな不確定要素があったのだ。
レイ理論は超弦理論と同じく「世界が11次元で構成されている」ことを示していた。
超弦理論の11次元の中には、空間を表すXYZの3次元、時間の1次元の他に、素粒子を作り出す弦(string)と弦(string)の間に強い力が働いた場合にのみ現れる1次元があると言われていた。
その弦と弦の間に働く1次元をレイ理論はヒッグス軸という軸、次元で表したのだった。
レイ理論では、そのヒッグス座標を空間の歪みの強さとして扱っていた。
だが、ある点において、レイ理論はそれまでの理論とは全く正反対の性質を持っていた。
それは重力子の存在する場所である。
超弦理論では時空を表すプレーンから離れて重力子の弦が存在するとしたが、レイ理論では非常に空間の歪みが強い、ヒッグス軸の基底座標にのみ重力に関する弦、重力子の弦があるとした。
そして、物質の素粒子が持つ弦は各々別のヒッグス座標があり、重力の弦がある基底座標からその物質の持つヒッグス座標までのエネルギーギャップ分のエネルギーが消費されて、人々が生活する空間内で重力が現れるため、他の力よりも極端に弱く発現する。(添付図左側)
しかし、物質がヒッグス軸の基底座標に近付けば近付くほど、重力は本来の力を取り戻す。(添付図右側)
つまり、大きく空間が歪んでいるところでは重力が強く発現するという理論、他の力に比べて重力が極端に小さいという謎をシンプルに解き明かした理論なのである。
加えて、レイ理論はヒッグス軸の持つエネルギーを階層的、離散的に示しており、且つ、時間を離散的、粒子的に捉えていた。
さらには、超弦理論のメンブレン、量子による空間形成を統合、つまり、全ての力をループ量子重力理論や超弦理論に対して、完璧なまでに統合させた理論であった。
その証明として、ブラックホールが実際の力以上に星々を引き付けている事実を、柊レイの示したエネルギーギャップ理論は美しいまでに、誤差なく計算しきったのである。
この点は、従来理論ではダークマターやダークエネルギーなど未知の粒子に頼るしかない部分であったが、その未知を打ち破ったのだった。
しかし、宇宙外縁に空間を引っ張るエネルギーに関しては、まだダークマターやダークエネルギーといった宇宙項に頼らざるを得ず、この理論を持ってしても説明不可能な部分があった。まだ11次元の中の6次元は未知のままであったのだ。
そして、レイ理論では、その6次元は従来理論の事象の地平面の奥にあるとし、そこには未知の2つの世界が存在することが示唆されていた。
<次回予告>
物理界の超新星、柊レイ。それを見ていた数学科の女子、夏目ミライ。
彼らの出会いは偶然か、はたまた必然か。
そして、新たに現れる化学界とソフトウェア界の天才たち。
そうして時は動き出す。
次話サブタイトル、「一人の准教授 && 一人のオタク」。
次回もサービス、サービスぅ!!