∫ 2-2.孤独。。くしゃみ。。そして、約束 dt
まえがきは割愛させていただきます。
可能な限り、毎日0~1時の間に次話投稿します。
街の光が届かない神社の石垣の上で柊レイは父親と空一面に広がる星を見ている。
空気の澄んでいる冬場、空にはオリオン座が見える。
ベテルギウスと呼ばれていた星は、すでになくなっている。
「レイ、寒くないか。」
「うん。大丈夫だよ。」
コートに付いている暖房機能が働いているため、見た目には薄いコートだが十分に暖かかった。
「本当にすごい数の星だね。
この宇宙が検出できるだけでも900億光年もあって、銀河が何十兆個もあるなんて、考えるだけでも不思議でいっぱいになるよ。
ぼくたち人類はようやく30万km離れた月に工場を立てた。その程度なのに。」
「そうだな。本当に不思議だな。
父さんな、いっつも思うんだよ。
この宇宙のある意味って何だろうなって。
そんなことを考えると何かさみしい気持ちになる。」
星を見ていた父親はレイを見て、続けた。
「まだ発見はしてないけど、星から送られてくるデータにはもしかしたらその答えが、いや、まあ答えとは言わないまでも、その答えのヒントが書かれているんじゃないかって、そう思うんだ。」
「この世界のある意味?」
「レイや母さん、父さんもそう。人類が存在する意味って言ってもいいのかもしれない。」
「ぼくたちがいる意味?。。。さみしいって、母さんがいてもさみしいの?」
「母さんのことは大好きだよ。レイのことも。愛してる。これは何にも変えられない。レイも、母さんも。」
それを聞いてレイが微笑む。それを見て父親が続ける。
「でも、この『さみしい』は別次元の話なんだ。レイにはまだ分からないかもしれないけどな。
愛って言うのは残酷な言い方をすると、ただただ種の保存本能なんだと思うんだ。これはこれで大事だ。」
父親はレイを見ていた視線を再び星空に向けて続ける。
「でもそれとは違う。。。『さみしい』って言葉が合ってるかどうか分かんないんだけど、何で意味を教えてくれないんだろうって。
ある人の言葉を使うなら
『二十億光年の孤独に僕は思わずくしゃみをした』
かな。」
「孤独。。くしゃみ。。。」
ふふっと父親が笑った。
「時が来れば、きっとレイも感じる時が来る。レイは賢いからもうあっという間だ、きっと。」
「本当?」
「本当だよ。」
父親が優しい顔で答えた。
「じゃあ、ぼくが大きくなって、それが分かるようになったら、またここで一緒に星を見てくれる?」
「うん。約束だ。必ず。」
そういって二人は指切りをした。
はっと目が覚めた。何時間眠っていたのだろうか。
すでに朝だった。AIの目覚ましも鳴らなかった。
鏡の時計を見るともう八時過ぎだ。
「やばっ、遅刻!」
ベッドから飛び起きた。シャワーもする時間がない。急いで着替えようとした。
だが、その時思い出す。
「そうだ。アカウント停止。。。」
着替えるのをやめて、シェフAIに命令した。
「カフェラテ入れて。」
しかし反応がない。そして、すぐにその無反応の理由が何かを思い出した。
掌を自分に向け、アイコンを一つクリックした。
ウインドウが一つ展開される。
レイはそのウインドウに表示されている(処理停止)ボタンをクリックした。
部屋に埋め込まれている千個以上のセンサが再び動作を開始した。
壁が南国の海辺の映像に変化する。鏡に身体情報が表示される。
動作が正常に戻ったことを確認した後、その実行ファイルを削除した。
そして、改めてシェフAIに命令した。
「カフェラテ入れて。」
「かしこまりました。」
AIの柔らかい声が返ってきた。
アイコンの一つが明滅しており、何件かメッセージが入っていることに気がつく。
メッセージを開いた。
波多野から昨日の続きが入っていた。
「そう言えばさ」
「今日の四限なんだけど」
「いきなりレポートの宿題が出たんだ(ムンクの叫びマーク)」
「量子力学3(顕微鏡マーク)の教科書十五ページの問題を解けってさ。(学者マーク)」
「もし良かったら週末一緒にやらないか?」
そして最後のメッセージから十分後にもう一つ入っていた。
「大丈夫か~?(汗かきマーク)」
その後、通話履歴が一つ入っていた。さらにその五分後に再びメッセージが入っていた。
「もしかして風呂か?まあいいや。見たら連絡くれ~。(手振りマーク)」
少し考えて返事を書く。
「返信遅れてごめんなさい。いいですよ。時間と場所決めてくれたら行きます。」
送信をクリックした。
五秒もしないうちに既読がついた。すぐに返事が来る。
「さんきゅー!場所と時間また連絡するわ!っていうか敬語~!(笑いマーク)」
少し笑って返事をする。
「ごめん。了解!」
その後、糸魚川教授に三日間のアカウント停止になったこと、大学構内に入れないため、教授のところにいけない旨のメールを一通書いて送信した。
返事を見たくなかったので、メールアプリをそのまま閉じた。
<次回予告>
仲間と呼べるものができた柊レイ。
だが、彼の心の中の闇は拭われてはいなかった。
父親との楽しかった思い出と果たせなかった約束。
彼はずっとその想いを胸に歩き続けるのだった。
そして、届く波多野からの勉強の誘い。
彼はその誘いをきっかけに新しい世界へと歩き出す。
次話サブタイトル「柊レイ先生!!」。
次回もサービス、サービスぅ!!
<あとがき>
この回の最初に登場する場所『街の光が届かない神社の石垣の上で』幼い柊レイと父親柊蓮が星空を見上げている。後ろに小さい神社の社があり、満天の星空に月の上の工場の光が輝いている新月。
この風景が私の頭の中に数点ある『ガロワのソラの下で』のテーマ絵の1つです。
もの悲しい風景ですが、柊レイを支える1つの記憶となる風景ですね。
場所は山梨県北杜市大泉町の八幡神社という神社です。聖地になったらいいなと勝手に想像しています。(そこが出身地ではないです。(笑))
そして、勝手に決めているテーマソングはUruさんの「フリージア」です。
歌詞と曲がとてもこの内容にマッチしていると勝手に思っています。もし興味ある方は聴いてみてください。
さて、本編ですが、次回は柊レイが先生になります。どうなることやら。
次回、「柊レイ先生!!」。乞うご期待!!




