表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
輝石の楽園  作者: Butler
第2章~引き継がれる意思~
42/46

Ep.21 汚泥の大槌 -1-


 先に動いたのは【汚泥の大槌】の方だった。

土人形は大槌を持っていない方の腕を地面に当てると、

足元の地面から、鋭いトゲが隆起して私と黒雷に襲い掛かる。

「っ……」

幸い、私の目でも捉えられる速度だが、

向かってくるトゲはいくら撃ち込もうとも壊れない。

多少削れはするものの、間に合わなそうだ。

息を吐き、眼前ギリギリまでひきつけてから横に回避すると、

トゲは真っ直ぐ後ろに伸び続けて壁に激突した。


ちらりと黒雷の方を見れば、難なく避けて服の埃を払っている。

「まったく……雨といい泥といい……服が汚れてしまいますね」

「黒雷は余裕そうですね……少し羨ましいです」

「何言ってるんですか、主。余裕などないですよ?

 それよりも、あちらを……」

黒雷に言われた通り、壁に衝突したトゲを見れば、

先程の強固さは何処へ行ったのか、ボロボロに崩れて消えてしまった。


「これは……」

「あまり持続力が無いのかもしれませんね」

「時間か……何かに衝突した場合、とか?」

「だとすれば、弾丸の様に小さいモノは含まれないのでしょう。

 ある程度大きな何かで庇えば……」

『主! また来ますよ!』

白炎の声に前方に目を向けると同じようにトゲが向かって来ていた。

今のうちに色々と情報を集めた方がよさそうだ。


「……調べてみましょうか。暫く回避重点で」

「御意」


それからトゲを観察して以下の情報が分かる。


・壁や石筍に追突すると直ちに脆くなり消える。

・トゲが消えてから、次が伸びるまでクールタイムがある。

 大体10秒前後。

・トゲはおそらく最大2つまで。

 どちらかが障害物に隠れている場合、一人に対して二本飛んでくる。

 対象が居ない場合は移動を始める。

・トゲは、必ず土人形の足元から隆起する。

・偏差は無く、真っ直ぐ対象の位置に着弾する。

 多少左右に動くが、追尾は弱い。


(こんなところですか……)

石筍の裏で、端末に記した情報を見ながらどうしたものかと呟いた。。

相手の行動は単純だ。だが、それゆえに不信感が募っている。

遠距離はあくまでおまけ程度の性能しかないのではないかと。


(ですが……これ以上考えても、何も分かりそうにないですね……

 今は距離を離しながら適度に銃を撃つしか……)

私は、白炎経由で黒雷に指示を出すと石筍から身を乗り出し、

【汚泥の大槌】を中心に横移動をしながら対象に弾丸を打ち込み始める。


土人形は、トゲを伸ばす対象が居ないと移動する。

その動きは亀の様に遅いものの、手に持った大槌の存在が大きすぎる為に、

圧迫感が凄まじいのだ。

勿論、あれをわざと喰らう等と言うような愚考も冒せない以上、

トゲを対処しながら遠くで撃っている方が望ましいだろう。


また、流石に一人で二本を対処するのは辛い為、黒雷も表に出す。

こうする事で、トゲを一本ずつ相手しながら相手の動きも封じる事が出来るはずだ。


「っと……」

地面に足を取られないように。

対象の攻撃時に身を隠さないように。

伸びて来るトゲを避けながら、射撃を続ける。


戦法と言うには稚拙ではあるが、動き続ければ当たらない攻撃。

変わった事をしてこない以上は、このまま攻撃していた方が安全だろう。

それに、動かない的であれば、こちらが動いていても当てる事は出来る。

故に、銃弾は寸分違いなくそれの体に吸い込まれていった。

だが……。


 あれから暫くトゲを避け、銃を撃つ。それを何度か繰り返しているが……。

「このまま倒れてくれればなんて……甘かったですね」

私は祈りにも似た呟きを漏らし、つい顔を顰めてしまう。

状況が、全く変わらない。

かなり撃ち込んでいる筈なのに、一切の変化が無いのだ。


私は、一度距離を大きく離して石筍に隠れると、

その場にへたり込む。

すると、黒雷も傍に飛んできた。


「主、怪我はありませんか?」

「少し疲れてはいますが、問題ないです。ただ……」

ちらりと、【汚泥の大槌】をみればゆっくりと移動を始めている。

その動きは、こちらが攻撃を始める前と何ら変わらない。

「敵はあの通り……銃弾が効いていないようです」

「となると……今の私達ではどうにもなりませんね」

成す術なしかと思い、私と黒雷が撤退について話していると、

静かだった白炎が異を唱えた。

『いえ、銃弾は効いていると思います』


「……白? 何か分かりましたか?」

『私は、主様に使われている間、じっくりと敵を観察する時間がありました。

 その私の観点からするに、効いていないというよりも……、

 自己修復能力が高い。と見るべきかと』

「つまり……私の攻撃よりも先に回復していると?」

私の質問に、白炎が頷くように震える。

そして、言葉をつづけた。

『それに、弾丸が貫いた後、体の中に何かが見えたんです。

 何か丸くて小さいモノです』

「ふむ……それだけではよくわかりませんが……?」

『ですが、意味が無いものでもないでしょう?

 例えば……弱点とか……』

「成程……可能性はありますね。主様、どうしますか?」

「では、それを核と仮定しましょう。

 そして、その核にダメージを与える為には、

 相手の修復よりも先に攻撃する必要がありますね」

「なら、私も銃になって手数で攻めますか?」

「……いえ、そうなるとトゲを避けるのに意識を取られて威力が出せないでしょう。

もし成功しても禄にダメージを与えられないのであれば意味が無い」

『ベストは主様が攻撃を全く受けない状況ですか……。

 いっそ近づいてみます?』


白炎の提案に息をのむ。あまりにも危険すぎるからだ。

だが、彼はもはやそれしかないとでもいうように理由を連ねていった。

『相手の攻撃方法、覚えてますよね?片手を地面に伸ばしていました。

 なら、近づいてしまえばトゲも伸ばせないかと』

「しかし……」

それは想定していた事だが……そうなると大槌の範囲内だ。

だが、それすらも問題ないという様に白炎は話を続ける。

『えぇ。大槌が襲ってくるでしょう。

 ですが、回避のみに集中すれば何とかなるかも?』

「それでも……!」

『どちらにせよ、私と黒のどちらかが陽動して

 主様に高威力を叩きだして貰う必要があるんです。

 いま、体力があるうちに、やれることはやらねば』

手元の銃を胸に抱きしめて黒雷を見つめれば、

彼女もまた、決意にあふれた瞳でこちらを見ている。


本当に、それしかないのだろうか……。

だが、それよりも良い案が浮かばないのも確かだ。


「分かり……ました。それで行きましょう」

『では黒の出番ですね。交代してください』

私の不承不承と言った答えに白炎は頷くと、

彼はメイドの姿に変わり、黒雷が私の手元に収まった。

そして、白炎は大きく伸びをしてにやりと口元を緩ませる。

「……久しぶりに体を動かすとしましょうか。

 いつも、黒ばかりが主様と共闘しているのですから、

 多少嫉妬していたんですよ?」

『それを言うなら、私ももっと主様のお傍に居たいのですけどね……。

 今度から交代制にでもしますか?』

「名案です。そうしましょう」

二人の掛け合いに気が抜けそうになる。

こちらは不利で、未だ対抗策はあまりない。

だというのに……彼らは勝利を疑っていない。

なんとも頼りになる仲間達だろうか。


「白炎、決して無茶はしないように。危険だと思ったらすぐに退避を」

「フフッ、かしこまりました。ですが……」

「主様はただ、私達を信じれば良いのです。

 必ずや……隙を見つけてまいりましょう」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ