表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
輝石の楽園  作者: Butler
第2章~引き継がれる意思~
30/46

Ep.9 気まぐれ支部長の戦闘講座 -1-


 翌朝。美味しそうな匂いで目を覚ます。

身体を起こし、大きく伸びをしていると、

タイミング良く執事姿の女性が部屋に入って来た。


「おはようございます。我が主」

「ん……おはよう。黒雷……」

黒雷に暖かいタオルで顔を拭かれながら、

私は彼女に挨拶をする。


(……本当にダメになってしまいそうですね……)

完璧な従者に私の生活能力が擦り減っていく気がするが、

だからと言って止められるわけでもない……。


「朝食は既に用意できております」

「完全に従者ですね?

 もう少し自由にして貰っても……」

「それが私の生き甲斐ですので」

……まぁ、こうなる。

圧が凄い。断ってしまったら暴走しそうなくらいには。


せめて着替えだけは……とどうにか説得して彼女を部屋から出すと、

動きやすい服装に着替える。

サイズは少しだけ緩めで着心地は最高だ。

楽園内の服飾店が作ったらしいが、

一体この組織には、専門家がどれだけいるのだろうか……。


因みに服は、昨日の段階で白炎達が購入していたらしい。

私が寝た後に、必要な物を一式買ってくれているとは……流石である。


そんな完璧な二人にお世話されて朝の支度を終えた私は、

エリカ達と合流し、訓練の為に【忘却のコロセウム】へと向かった。



 広い円状の広場。

綺麗な青空と精密に並べられた石壁。

目的地にたどり着いた私達は、

中心に、ある人物を見つける。


「皆おはよう! よく眠れたかしら?」

「ダリアさん? どうしてここに?」

「もう……呼び捨てで良いって言ってるのに……」

少しだけ不服そうに彼女が呟くが……、

心の中ではともかく、面と向かって呼ぶのは少しだけ気まずい。


「まだ面と向かってはちょっと難しいですね……」

「全く……いつになったら呼んでもらえる事やら……、

 ん? ちょっと待って、じゃあ対面以外では呼び捨てだったり?」

「あ、そういう訳では……」

「……そうよねぇ……まぁ気長に待つわ」


「そんなことより! どうしてダリアが居るの?

 今日訓練って聞いたんだけど……また座学?」

私と違ってエリカは容赦ない。

心底嫌そうな顔をしているので、座学は苦手なのだろう。

運動の方をしたいだけなのかもしれないが。


「エリカ……座学も大事なのよ?

 相性とか弱点とか、覚えてるわよね?」

「そりゃあんだけ叩き込まれたら覚えてるけどぉ……」

「ふふっ、お利口ね。まぁ安心しなさいな。

 闘技場(ここ)に来ている以上ちゃんと運動もするから」


そう言って彼女はここにいる理由を説明してくれた。


簡単に言えば、今日の訓練の相手はダリアらしい。

理由は”私がやりたかったから”だとか。


「まぁ息抜きよ、息抜き。ちょっと仕事が忙しくてねぇ……」

その言葉に、エリカとカレンが溜息をついた。

「これが気まぐれ支部長か……」

「サルビア先輩が言ってた通りね……

 何するかわかったもんじゃないトラブルメイカー……」

「待って? 初耳なんだけど?

 副支部長には後で問い詰める必要がありそうだわ……」

何だかんだと言われてはいるが、嫌われてはいないのだろう。

エリカ達は少しからかう様な表情もある。


「あの……本当にやりたかったから来たんですか?」

「んー……そうよ。

 だって新人ちゃんの成長を見守るのは私の義務だもの」

少し気になって聞いてみたが、

彼女の答えは屈託のないサムズアップと共に行われた。

仕事は良いのだろうか……。


「そんなことより、早速訓練を始めましょう?」

ダリアさんが空気をかえる様に手を叩いたので、

私達も切り替える事にした。


「うん。良い子ね。

 じゃあ皆【色】を出してくれるかしら?」


ダリアの言葉に従い、

「おいで、黒雷、白炎」

「こい、ヴェスピナ」

「ナナ。出て来て」


三者三葉に、己の【色】を顕現させると、

ダリアは拍手する。


「うん。速度もいい感じね。

 じゃあこっちを見てくれるかしら?」

彼女の方を向くと、左側に四角い枠? みたいなのが現れる。

確か……ホログラム……だったか?


上部には今までのおさらいと書かれていて、

ダリアは長い棒の様な物で、指しながら説明する。


「まず、私達が扱う【色】。えっと、俗称、【作品(クラフト)】の事ね。

 そもそも【色】とは、私達の心、願望や意思が具現化した様なものなんだけど……」


講義の様な物が始まってしまった。立ったまま。

ちらりと黒雷の方を見ると、頷くように羽ばたいて、

ダリアを含んだ私達の目の前に机と椅子が現れた。

私達は感謝して椅子に座ると、丁度良いタイミングでダリアが振り向いた。


「あら……!?

 いつの間に……というか私の前にもあるわね? ありがとう。

 ……確かに立ったままじゃ疲れるわよね……気付かなくてごめんなさい。

 座ってていいから少しだけ付き合って?」

表示された画面には、”【色持ち】の戦い方について!”と書かれている。

ーー


【色持ち】の戦い方は主に2種類。

【色】を武具に変形させて戦う装備形態と、

【色】に指示して共に戦う共闘形態がある。


これもアーティストとデザイナー等の別称があるが、

浸透していない上に固定されているわけではない為気にしなくて良い。


ーー


「アーティストとデザイナー……、【色】もそうですけど、

 名前を考えた人は色彩関係にこだわりがあるんでしょうか……?」

「いや、メリア。深く考えなくていいんじゃない?

 きっと何も考えてないから」

「な、なんでこっちを見るのかしら……

 言っとくけど、名前を考えたの私じゃないからね」


ーー


・装備形態

  重火器や刀剣、本やペン等、宿主が直接操作して戦う形態。


・共闘形態

  狼や、人型、果ては機械や植物等に変形し、サポートする形で宿主と共に戦う形態。


 それらの姿形は【色】の好みによって変わるが、大体三種類前後に絞られる。

 

注意:【異色】はその限りではない。


ーー


「じゃあ、私の場合だと、

 蝶と人型が共闘形態、拳銃が装備形態ですかね?」

「俺の場合は、蜂が共闘で、長銃が装備か……」

「んー……じゃああたしはどっちなのかしら……?」

エリカが難しい顔をしている。

「そうね……例えば本だけで動けるかしら?

 動けるなら共闘、動けないなら装備ね」

「成程……じゃあ装備型ね」

納得するエリカに私は疑問をぶつけてみる。

「ですが、そうなるとあの時の炎の拳銃は……?」

「それはナナの能力でしょ……あれ、なら共闘型……???」

「……何事も、例外はあるものよ」

「それは一種の思考放棄では……?」

「仕方無いでしょ? 何通りあると思ってるのよ。

 一つや二つ例外があった所で一々資料変えてたらキリがないの。

 一色につき、能力を除いて形態が最大三種類。

 考え方はそのくらいでいいのよ」


 「じゃ次は能力ね……これも大雑把に紹介するわ」

ともはや説明の意義を成しているのか怪しい事を言いだした。


ーー

【色】の持つ能力。


シンプルなものだと、火を吐く、水を操作する、斬った物を凍らせる等、

多種多様な能力が備わっている。


大体は、【赤色】は炎、【青色】は水と言った分かりやすい物が多い。


ーー

「……これだけですか? もっと具体的な物とかは……」

「そうね……うちの支部の子達の【色】を全部紹介してたら、

 夜どころか、月が替わるけど、良いの?」

それは困る。大事かもしれないが、

一か月も座学していたら体が動かなくなりそうだ……。


「もしかして支部長、飽きてきたんじゃ……」

エリカが怪訝な顔で彼女に言うと、

「違うわよ! 飽きたんじゃなくて難しいの!

 あなた達自分の【色】の能力完璧に説明できる!?

 言っとくけど私は無理よ!?」

と目を”><(このように)”して私達に投げてしまった。

いや、投げられても困る。


でも……言われてみれば能力について考えたことは無かった。

黒雷、白炎と言う名前の割には雷も炎も出るわけではないし、

普通に銃で撃つくらいしかしていない。

能力らしい能力と言えば……物体を作り出す力くらいだろうか?

椅子や机など簡単な構造の物を作り出すのは知っているが……。


「能力は千差万別。

 例えば、炎を生み出す能力があるとするじゃない?

 それだけでも、

 口から出るのか、手から出るのか。

 熱さは? 距離は?

 形だって自由。

 赤色だけじゃないでしょ、青い炎だってある」

「……」

「だから私は新人にいつもこう言うわ。

 ”考えるな。感じろ”と」

決め顔でそういう彼女には妙な説得感がある。

「……なる、ほど……?」

「メリア……納得する必要ないんじゃない?」

「ゴホンッ、私達は、相手に合わせて臨機応変に戦い方が変えられる。

 でも、それは向こうも同じなのだから難しいところよね」


それから、ダリアは説明を切り上げて机に寄りかかる。

「これで一旦おしまい。まぁ気になったら資料を読んでくれると良いわ」

「結局資料頼みなのかよ……」

「今までのは一体……??」

「慣れなさい。メリア……これが支部長だから」

困惑する私の肩を優しくたたくエリカは、

疲れたような表情をしていた。


「はいはい、じゃ次は実技よ。お待ちかねでしょ?

 一旦切り上げて運動しましょ?」

「待ってましたー! やっぱり体動かさなきゃよね!」

嬉しそうにエリカが両手を上げている。

余程先程の講義が堪えたのだろうか、

彼女の眼は、燃えていた。


「相手は何かしら? 

 闘技場って事は先輩? それとも仮想敵とか?

 何だって来いよ!!」

すっかり熱くなってしまったエリカに対し、

ダリアは微笑ましそうに言葉を告げる。

その言葉は多分、悪夢の始まりだった。


「やる気があって結構ね。相手は勿論、この私よ!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ