神はどうにかして両思いの男女をくっつけたい!!
「あ、あの!!」
「は、はいっ!」
とある学校の廊下で男女がそう会話をしていた。お互い恥ずかしいのか少し照れている。
「え、えっと...」
「あ...はい」
男、ヒロは今まさに告白をし用としているところだ。相手の女、エミはクラスのマドンナ的存在だった。ヒロは地味な感じだがエミもどうやら好意はあるようだった。
もじもじしながらヒロが告白の言葉を言おうとしたその時、別のところから声が聞こえた。
「ねえエミィ、何してるのぉ?行こうよぉ」
「あ、今行く」
女友達の呼びかけにエミと呼ばれた女の方は行ってしまった。
それを見ていたのは神様。その神様は残念そうな顔でそれを見ている。
「うーむ、あいつら絶対両思いなのだが...」
この神様は恋を叶える神様だ。ヒロとエミの恋を成就させようとしている。神様の力で何度も何度も鉢合わせるように仕組んだ。その度に何か会話をしようとするがお互いに照れていてなかなか進まないのだ。
事実、ヒロとエミはは明らかに両思いで、今のような状況で男が告白をしていたら、必ずと言って良いほど成功していただろう。
「だがなあ、あの女がなあ」
神様が言っているあの女は、「ねえエミィ、何してるのぉ?行こうよぉ」と言ってこの男女の邪魔をした女。こいつはエイ子と言って必ずと言っていいほど邪魔をしてくる。
もちろん彼女もわざとやっているわけでは無い。良いところでタイミング悪くエイ子が来てしまうのだ。もちろんわざとでは無いのでエイ子にとって邪魔しているなどとは全く夢にも思っていない。
もちろんこの力でくっつける事はできるが、それでは面白くない。なんとかくっつける口実がいるのだ。
「くそ、あのエイ子とか言う女が本当に邪魔だな...よし次は!」
そう言って神様は持っている杖をひょいと動かす。すると場面は一気にお昼になった。
「よし、エミは購買に行ったぞ!お前も早く追いかけるんだ!!」
そう言いながらヒロを追わせるように神様はその力でヒロを促す。これで「俺と一緒に弁当を食べてください!!」と言わせれば距離がグッと近づくに違いない。
「よし、おいかけたぞ」
神様が様子を伺っていると、ヒロがお弁当を持って廊下を走っている。ヒロはエミを発見すると声をかける。数分モジモジして、言葉を詰まらせる。「一緒にお昼を食べよう」と言うだけなのに数分ほどモジモジしてなかなか切り出せないでいたヒロ。
やっとの思いでヒロは「よかったら...一緒に...お昼を...!」と言うがもうそこにエミはいなかった。エミはヒロが言い出す頃には用を思い出してどこかに行ってしまった。そしてそこに偶然いたのはやはりエイ子。
「わたしと食べたいの??いいわよお!」
「え...違...!」
そう言うが半ば強引にひきずるようにエイ子はヒロを連れて行ってしまった。それを見ていた神様は「はあ」とため息をついた。
2人の食事の様子はエイ子がうまいうまいと言いながら食べている場面。エイ子の弁当を食べたヒロも「う。ウマ..!」とその味に舌鼓していたz
「やはりあいつが邪魔をするな。いっそのことあいつを...いやダメだ!恋愛している2人以外のやつに干渉してはいけないんだ!」
恋愛の対象...今回でいえばヒロとエミ以外のやつに力を使うのは御法度なのがルールだ。破ると色々と面倒なのでエイ子には手を出せない。
「くそ、今度は...そうだ!体育館の倉庫に閉じ込められるって言うありがちなイベントを...!」
人に干渉してはいけないがモノにはそう言う制限はないため、神様は体育館に呼び寄せて倉庫の鍵をかけてしまおうと言う作戦に出た。
場面は体育の終わりに変わった。エミとヒロは片付けに入る。そこであらかじめ男女が入ると勝手に倉庫が閉まって開かなくなると言う仕掛けを杖の力で施して様子を見ていた。
「アタシが片付けておくよぉー」
エイ子だ。ヒロが入りエイ子も入る。これではヒロとエイ子が閉じ込められてしまうでは無いか!すぐに仕掛けを解除しようとしたが時すでに遅く、2人は閉じ込められてしまった。
「やーなにぃ!?」
「なんで開かないんだ!!」
神様はため息をついて見ていた。こうなってしまったらもう神様でもどうしようもない。
「閉じ込めらちゃったよーどうしてアンタなんかと!!」
「えぇ...」
そう言うエイ子に戸惑うヒロ。冬というだけあって中はとても寒く体育館なので半袖で大丈夫だとたかを括ったエイ子は体を震わせる。するとヒロは体操着の上に来ていたジャージをエイ子に着させる。
「あら、イイところあるじゃ無い」
そう言って少しの間耐えていた。
「はあ、なんであのエイ子とか言うやつは邪魔をするんだ?」
神様は色々と仕掛けるがことごとくエイ子に邪魔をされるのでため息をつく。それからもずーっとエイ子の邪魔が入った。図書館で同じ本を取らせると言うシチュエーションも試したがエイ子が「自分がとってくる」と言ってエイ子とヒロの手が当たった。
「くっ...」
虫を仕向けて「大丈夫だよ..?」と男が支えるよくある奴をしようとしてもエイ子がその風貌に似合わない声をあげるし散々だった。
「くそ...なら、もういっそのこと!!」
そう言って神様は2人を人気のないところに移動させる。これで大丈夫だろうと神様も安心してその様子を伺う。2人はいい感じの場所で2人っきりだ。場所OK!邪魔な奴もいない!2人っきり!!このままいけば...!!神様も期待も眼差しでその様子を見る。
「あの...えっと...」
今度はエミが告白しそうだ。その様子を「いいぞ..!」と見ている。
「好きです!!!」
「ごめんなさい!!」
神様は「はい!?!?!?」と言いながら目を丸くしながら2人を見る。それは振られる瞬間だった。おかしい。この状況なら成功するんじゃ無いのか!?いやおかしいだろ!!!そう叫んでいる。
ヒロはその場から出て真っ先に向かうところがあった。そこは教室で、誰かがいる。
「エイ子ちゃん」
「何??」
「君が好きだ!!!」
そう言いながら手を差し伸べるヒロ。エイ子は少し照れながらその手と自分の手を繋いだ。
30年後、神様が写しているのは3人の子供と幸せな家庭を築いているヒロとエイ子だった。それを見ながら神様はこう呟いた。
「あーあ、結局こうなるのか。まあでも本人達が幸せそうだし、これはこれで良いな。愛の形は様々だからね」