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女性のヒップラインが好きな魔王の話

作者: 守 秀斗

 私は魔王だ。

 まあ、実際のところ、私よりも圧倒的に強い妃である嫁がこの世界の事実上の支配者だけど。

 私は魔王の間で椅子に座っているだけだね。


 さて、我が魔王城にはメイドさんたちがいる。

 彼女たちは、以前は嫉妬深い嫁のせいで、浮気防止のためか上下ダブダブの黒ジャージ姿をしていてみっともなかったが、私の意見で今はかっこいいスーツ姿になった。


 下はスカートではなくズボンを履いているがね。

 まあ、正確にはパンツスーツ姿って言うのかな。

 どうでもいか、そんなことは。


 このスーツ姿がなかなかいいのだな。

 スタイルの良い女性がスーツ姿で歩くのを後ろから見たときの、キュッと上がるヒップラインが特によろしい。


 ん? なに?

 女性を性的対象でしか見れないこの変態魔王め! って罵声が聞こえてきたぞ。

 まあ、そう固いこと言うなよ。

 男って、どんなに真面目ぶっていても、実はそんな生き物だよ。


 それに、もし男が女に全く興味を持たなくなったら大変なことになるぞ。

 人類がそうなったら滅びるぞ。

 少子化対策うまくいっているのか。

 って、なんで魔王が人類の将来を心配しなきゃならんのだ。


 それはともかく、私が普段過ごしている魔王の間の召使は全員男である。

 女性たちは階下で働いている。


 ほんのごくたまに廊下とかでスーツ姿のメイドさんを見るだけだな。

 これも嫉妬深い嫁のせいだ。

 やれやれ。


 なんとか魔王の間でもスーツ姿の女性を常に見られる状況にしたいのだが。

 私は一計を案じ、夕食中に嫁に提案した。


「君にボディガードを付けたいんだが」

「そんなのいらないわよ」

「まあ、万が一ということもあるし」


 実際は億がゼロと言いたくなるほど嫁はすごく強いのだが。


「妃にボディガードもつけないとは、ひどい魔王だと世間の連中に思われたくない」

「しょうがないわね。わかったわ」

「ただし、男はいやだな」

「どういう意味よ」

「君がもし、他の男に取られるんじゃないかと思うと夜も寝られない」

「なに言ってんのよ、浮気なんてしないわよ」

 嫁が笑った。


「いや、私は嫉妬深いんでね」

 本当は、嫁の方が私より一億倍嫉妬深いのだが。


 そんな時、私と嫁の会話聞いていた部下が進言してきた。

「そういえば、階下のメイドさんたちにも実は格闘技など一流の人もいるそうですよ。その方たちの中から採用したらどうですか」

「それは知らなかったわ。じゃあそうしましょう」


 実はあらかじめそう言うように部下に頼んでおいたのだ。

 もちろん、私は素知らぬふりをした。

 

 さて、魔王の間に候補者のメイドさんたちが来た。

 採用試験のようだ。

 全員なかなか美人でスタイルもよいぞ。


「さて、私は邪魔にならないように部屋の隅にでもいってるよ」とさりげなく魔王の間の端っこに行く。


 お前、魔王なんだから魔法を使えばいくらでも見れるだろって? 

 いやいや、以前にも言ったが魔法なんか使うと嫁に気づかれてしまう恐れがあるんだよ。


 ここは原始的な方法を使おう。


 私は窓際に行って、ぼんやりと外の様子を見ているふりをした。

 夕方なんで、外は暗いので部屋の中の様子が窓ガラスに映る。

 そして、窓ガラスに映るメイドたちの姿態を堪能する。


 なにやら、嫁の前でいろいろと格闘の手合わせなんぞをしている。

 ムフフ。

 ヒップラインが目立って、よろしい。


 さて、どうやら決まったらしい。

「魔王様、これからどうぞよろしくお願いいたします」と片膝をついて挨拶をするメイド改めボディガード。

 私は無表情でうなずく。


「これからよろしく頼むぞ」

「は、魔王様」

 そのメイド改めボディガードは下がって行った。

 

 その後、嫁が私に言った。

「てっきりあなたが魔法を使って、メイドたちをジロジロ見るんじゃないかと思ってたんで、探知魔法を引いてたんだけど何もしなかったわね」

「あはは、そんなことするわけないじゃないか」


 やっぱり嫁の奴、見張っていたか。

 魔法を使わなくてよかった。

 危ない、危ない。


 さて、ある日、また嫁が支配地域の視察に行くと言い出した。

 そんなに視察が好きなのかね。

 どうでもええわ。

 

 見送るとき、大げさな恰好をしている嫁の後ろをついていく、ボディガードの尻もばっちり見れた。

 今日はいい日だなあ。


 ん? お前、魔王のくせにそんなしょーもないことくらいで喜んでいるのか。

 情けないと自分で思わないのかって?


 まあ、他に楽しみがないんだよな。

 笑ってくれよ。


 しかし、若いころは女性を見ると最初に顔に目が行ったもんだが、次は胸。今は腰やら尻だなあ。なぜかだんだんと下がっていく。最終的には足首とかに興味が移るのだろうか。

 おっと話がそれた。


 さて、とりあえず私がウキウキしていると、部下が飛び込んできた。


「勇者が城に侵入してきました!」


 また勇者の連中かよ。

 もう飽きたぞ。

 なんだよ、せっかくいい気分だったのに。

 腹が立つ。

 ボコボコしてやろう。


 魔王の間で待ち構えていると、入ってきたのは男性四人組だ。

 剣士、闘士、弓使い、魔法使い。

 今回は珍しく本格派か。


 ただ、よく見ると全員美形だね。

 冒険者じゃなくて、俳優かアイドルグループでもやったほうがいいんじゃないかってほどだ。

 まあ、私は男には興味はないからどうでもいいけど。


 私は空中に浮かぶ。

「覚悟しろ、魔王!」と先頭の剣士が叫ぶ。

「ハッハッハ! かかってこい、勇者ども」


 バシッ!


 あっさり全員やっつけた。

 なんだか、ずいぶん弱いね。

 拍子抜けしたぞ。


 すると、倒れていた勇者たちが消えてしまった。

 あれれ、これはどういうことだ。


 私がとまどっていると、嫁が入ってきた。


「おい、今、勇者たちが乱入してきたんだが、なんだかスッと消えちゃったんだよ」

「そいつらは私が魔法で出した幻よ」

「え、何でそんなことしたんだよ」

「だって、もしかしたら、あなたが実は男が好きなんじゃないかと思って」


 どうやら女との浮気だけではなく、男とも浮気をするのはだめらしい。

 男と浮気する気なんて全然ないけど。


「何言ってるんだよ、私が愛するのはお前だけだよ」


 そんな嫁をギュッと抱きしめる。

 女ボディガードは遠慮したのか、抱擁する私たちからはなれて魔王の間から退出した。

 嫁を抱きしめつつ、こっそりその姿を見る。

 やっぱりいいね、スーツ姿。


 思わず興奮して、嫁を押し倒そうとすると、

「ちょ、ちょっと待って。何、興奮してんの。とりあえず寝室に行きましょう」


 女ボディガードの尻に刺激されて興奮したことは、嫁には黙っておこう。


(終)

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