新たな古き時代
あっちとこっちのワールドライフ 本編
(https://ncode.syosetu.com/n0936gv/)
第49部分 手芸都市クロト
と
第50部分 そして日常へ
の間に入れるつもりだった話です。
本編の方をとりあえず完結させたかったため
おまけという形で公開することにしました。
後付けする形となったため微妙な矛盾など発生するかもしれませんが、
これはこれとして楽しんで頂ければと思います。
ちょっと長めですが、一段落する部分までは毎日上がりますので、楽しみに読んで頂ければ嬉しいです。
微エロ多めのため苦手な方はユーターン推奨します。
「―――ん?……さぁん?…………おにぃさぁん?…………こ、これはたべ――。」
「――はっ!ミオ!ベル!ユン!……リネア……!」
起き上がる。
「――にゃっ!?」
近くには、ミオとベル、ユンが倒れている。
リネアは……見当たらない……。
辺りは、鬱蒼とした木々に囲まれており、すぐ傍には池……いや、湖だろうか……?
透き通った綺麗な水の小さな湖がある。
「……どこだ……?ここは……?」
「――こ、ここは、森の中よ。」
その声に振り向く。
「―――!?君は……?」
「――え!?わ、私!?私は……そうね……ネコ……――――そ、そんなことより!その娘たちは大丈夫なの?……あなたもだけど……。」
ネコとはまた変わった名前だ……。
いや、ある意味相応しい名前と言えるのかもしれない。
ネコと名乗ったその娘の風貌は……ミオと同じくらいの年齢……いや、少し年下かもしれない。
体つきはスラっとしていて美人さんだ。
何より特筆するべきは、ネコというその名の通り、猫のような耳と尻尾が生えていることだ。
差し詰め、猫娘とでも言ったところだろう。
辺りの様子からして、アトランティスでもクロトでもない。
となると、魔物の女の子という可能性もあるだろう……。
「……あ、ああ……俺は平気だよ。ミオたちも……平気だと思う。」
自分の体に問題はない。
ミオたちの様子も、意識こそ失っているが寝ている時のような落ち着いた呼吸をしている。
そのため、平気だと答えた。
「……そ、そう……それは良かったわ……。」
その返答に少し違和感を感じた。
返答そのものは身を案じてくれているような返答ではあるが、なんだか少し残念そうにしているようにも思えた。
まぁ、気のせいかもしれないし、あまり考えすぎないようにしよう。
「……えっと……君は何でこんなところに……?」
分からないことだらけではあるが、聞けることから聞いていく。
「ここにはよく来るの!そしたら、偶然あなたたちを見つけて……。」
「――――ん……あら?ここは……?」
ミオが目を覚ます。
「おはようミオ。」
「――あ、アイラさん。おはようございます……。」
体を起こしたミオは、目を擦りながら挨拶を返す。
「ああ、おはよう。どこか痛いところはないか?」
こんな状況であるにも関わらず、挨拶だけは律儀に返すミオに思わず笑ってしまいそうになる。
「……えっと……平気です……。ここは…………――あっ!」
どうやらミオも何か思い出した様子だ。
「……大丈夫か?」
「――は、はい!そ、それよりここは……ベルさんとユンさんは!?」
ミオは言いながら辺りを見回し、ベルとユンを発見する。
起こすために二人の体を揺すって声を掛ける。
「――ん……ここは……?」
ベルが目を覚ます。
「――ふぁ……おはようアイラさん……。」
ユンはまだ寝ぼけているようだ。
「ああ、おはよう。」
返事をする。
「……それで……ここは一体……?」
ミオが口にする。
それに関しては俺も知りたい。
「……えっと……すまない……。もしよければ、この辺りのことを教えてもらえないかな?」
俺はネコの方へ視線を向け話を戻す。
「――にゃ!?え、えっと……。」
急に話を戻したせいで驚かせてしまったようだ。
間が空く……。
「……ダメ……かな……?」
「…………わ、わかったわ……。とりあえず、私の家まで来なさい。」
そう言ったネコの様子は、ツンツンしているようだ。
「――ああ、よろしく頼む。」
「――ここが私の家よ。入って?」
先に家の中へと入ったネコが、俺たちを家の中へと手招きする。
ネコの家は、森からそんなに離れてはいなかった。
というよりも、家の周りは木々に囲まれており、他の家も見当たらない。
森の中にあると言ってもいいような場所だ。
まるで、他の人間から隠れて住んでいるようにすら感じられる。
「……えっと……お、お邪魔しまーす……?」
そんなことを言いつつ、少々遠慮がちにネコの家に入れてもらう。
ミオたちもそれに続く。
「――おかえりー!」
そんな声と共に、パタパタと走ってくる音が聞こえる。
いや、音は一つではないため、ドタドタと言った方がいいかもしれない。
「ただいま。」
ネコがそう声を掛けた視線の先には、三人の女の子が立っていた。
とても可愛らしい。
見た目としては……ネコよりも若い。
というよりも、ベルよりも幼く見える。
「えと……。」
その内一番大人しそうな女の子が、オドオドしながら上目遣いで何かを言いたそうにしている。
「――あ、えっと……お客さんよ。」
「お邪魔します。」
そう声を掛けると、その子はネコの後ろに回り、俺の視線から隠れる。
「……えっと……こ、この子たちは……。そうね…………ネネとシキとユキよ。」
ネコは女の子たちを端から順に紹介する。
名前を紹介する前に妙な間があったが、まさか名前をド忘れでもしたのだろうか……?
まぁ、三人もいれば呼び間違えることなんかもあるだろうし、気にすることでもないか。
ネネと紹介された子は、白い帽子を被っていた。
小さなツバの付いている帽子で、見ようによっては頭の上に皿を乗せているようにすら見える。
シキと紹介された子は、おかっぱ頭で、頭には大きな黄色いリボンを付けている。
鮮やかな色の着物がよく似合う女の子だ。
ユキと紹介された子は、髪の色は白……いや、薄く水色にも見える。
とても大人しそうな女の子だった。
シキとは違う真っ白な着物を着ており、これまたよく似合っている。
「……えっと……この子たちは――。」
「――こ、この娘たちは…………!」
俺が言いかけると、ネコは俺の言葉を遮るように口を開く。
まずいことを聞かれたといったような顔をしているようにも見える。
「――も、もしかして……ネコの子供なのか!?」
「――にゃ!?ち、違うわよ!!バカじゃないの!!シャーーー!!!」
どうやらネコを怒らせてしまったらしい。
爪を立てて、今にも飛び掛かってきそうだ。
「――す、すまん……!違ったのか……!」
俺はすぐに謝る。
「――まったく……それに、この娘たちはあんたたちなんかよりよっぽど年上……。」
俺の謝罪を聞き、ツンとそっぽを向きながら言う。
「――え?何て?」
そっぽを向いてしまったせいでよく聞こえなかったが、おかしなことが聞こえた気がして思わず聞き返してしまった。
「――な、なんでもないわよ!!それよりほら!!さっさと中に入りなさいよ!!」
ネコは俺たちを案内する。
俺はそれについていく。
うしろからは三つのジト目の気配……。
きっと気のせいだろう。
家は広かった。
広いが、物は少ない。
必要最低限といった様子だ。
部屋は三部屋程度といったところだろうか?
寝る時はみんなで一緒に寝ているのかもしれない。
案内された一番大きな部屋の中央には、囲炉裏がある。
その周りに座るように促された。
「……こ、これ……どうぞ……。」
この子は確か……ユキといっただろうか?
座る直前、ユキが俺に座布団を差し出す。
「ありがとう。」
「……い、いえ……。」
俺がお礼を言うと、恥ずかしそうに顔を背けてしまう。
ミオたちにもこの家の他の子たちが座布団を渡している。
そのあとすぐに、シキが湯飲みに入ったお茶を持ってきてくれた。
「……それでネコ、ここは……どこなんだ……?」
まずはそれを聞きたかった。
少々不躾かもしれないが、分からないことだらけだ。
許して欲しい。
「……どこって言われても……。」
ネコは言葉に詰まる。
ネコたちも知らないのかもしれない。
「……えっと……じゃあ……近くには何があるんだ?」
質問を簡単にしてみる。
何か目印になるものがあるかもしれない。
「近く?近くには……川があるわ。」
「川か……。」
「川よ。」
沈黙。
「……川の名前とかは……分かるか?」
ようやく次の質問を思い付き、口を開く。
「そんなの知らないわよ。」
「……困ったな……。」
手掛かりがなさすぎる。
この様子じゃ何を聞いてもいい答えは得られないことを悟り、考え込む。
「――ああもう!!でも川の上流に行けばもっとたくさんの人間がいるわ!!何か知りたいならそこへ行けばいいじゃない!!」
俺の様子を見て、ネコはイライラした様子で教えてくれる。
ツンツンしているところもあるが、根は優しくていい子なのだろう。
「……川の上流か……ネコたちはなんでこんなところに……?」
ネコの返答を聞いたことによって、ネコたちがなぜこんなにも人気のない場所に住んでいるのか、改めて気になってしまう。
「――べ、別にいいでしょ!そんなの――!!」
私たちの事情も知らないで勝手なこと言わないでよ!!
今にもそんなことを言い出しそうな様子だ。
「……すまん。……もしかして……何か困ってることでもあるのか?」
ネコの様子を見て、思わず聞いてしまう。
「…………もう!!その川の上流で人間たちが争ってるのよ!!それで私たちは逃げてきたの!!」
なるほど。
それでイライラしてたのか。
自分たちが住んでいた場所を追い出されれば誰だって頭にくるだろう。
「そうか……それはすまなかった……。」
「――ふん!別にいいわよ!……でも、ここもいつそれに巻き込まれるか分からないわ!逃げるなら、すぐに逃げなさい!!」
「……だったら、ネコたちも一緒に逃げればいいんじゃないか……?」
「――な、なんで私たちまで!!いやよ……!これ以上……逃げ続けるなんて……。」
急にネコの声が小さくなる。
今までに色々なことがあったのかもしれない。
ネネやシキやユキも俯いてしまっている……。
「……そうか……じゃあ……ネコたちは、俺が守ろう。」
ネコたちの様子を見ていたら、自然とそう口にしていた。
「…………え?――な、なに言ってんの!?」
あまりにも予想外の言葉だったのだろう。
沈黙を挟んでネコがようやく口を開く
「いや、だからネコたちは俺が守るよ。」
俺は同じことを言う。
「――ちょ、ちょっとアイラさん!」
ミオが口を開く。
「ここがどこかも分からないし、他に行く所があるわけでもないだろ?」
「そ、それもそうですけど……。」
ミオが押し黙る。
「――あ、あんた何言って!!それに私たちは――――!!」
ネコが何かを言いかける。
もしかすると、ネコたちは魔物の類なのかもしれない。
でも、そんなのはどっちでもいいことだ。
「……じゃあ……ネコは、俺たちを助けて家まで連れてきてくれただろ?だから、そのお礼だと思ってくれればいいよ。」
ネコにとっては、倒れている人間に声を掛けて……いや、あるいは何か他の思惑があったのかもしれない。
でも、それでも親切に家まで連れてきてくれた。
それは、何も分からない俺たちにとって結果的に大きく助けられることになっている。
それに、話していて悪い子じゃないことは分かる。
それ以上に理由はいらないんじゃないだろうか?
「――――な……。」
ネコは何かを言おうとしているが、言葉が出てこないようだ。
「――あ、じゃあ……その代わり、寝床と食事だけはもらってもいいかな?」
あえてこちらからも見返りを求めてみる。
「……はぁ……。もう!仕方ないわね……!その分、ちゃんと私たちを守ってよね!」
ネコの顔が綻び、出会ってから最高の笑顔を見せてくれた。
「――おうさ、任せとけ!」
俺はネコにニヒヒと笑って見せる。
ミオたちは諦めた様子で俯き、仕方がないとでもいうように微笑みながら俺の方へと視線を向けた。
食事は煮物だった。
魚や野菜がたくさん入った煮物。
優しい味だ。
味付けも丁度良く、スッと喉を通った汁が体を温めてくれる。
栄養も満点だろう。
わいわいと賑やかだった食事を終え、寝る支度を整える。
夜の明かりは心許なく、真っ暗になってしまう前に寝床に就く。
布団の数には余裕があったようで、俺たち全員の分を用意してもまだ余りがあるようだった。
みんなで同じ部屋で眠る。
俺だけはみんなと少し離れた所に布団を敷き、そこで眠ることになった。
別の部屋の方がいいのではないかとも提案したが、ネコたちは俺のことを監視すると言い、ネコたちが俺のことを監視するなら、ミオたちも俺のことを監視する必要があるということで、結果的にみんなで同じ部屋で寝ることになってしまった。
うとうととし始める。
色々なことがあったため疲れていた。
ミオやベル、ユンは寝息を立てていて、既に眠ってしまっているようだった。
――ガラガラ。
家の戸が開く音だ。
……誰か……入って来た……?
トントンと足音が近付いてくる。
「帰ったえー。」
女の声だ。
声の聞こえた方へ首を向けると、暗闇の中、ぼんやりと姿が見える。
身長は……ネコよりは少し高い程度だろうか?
そして、暗闇であるせいなのかもしれないが、そのシルエットがなんとも色っぽい。
「――ヤコ!帰ったのね?」
ネコの声だ。
「帰ったえ。」
喋り方も聞きなれない話し方で、それもまた色っぽさを引き立てる。
「……ちょっと、静かにして!」
ネコは小声で注意する。
「……あら?人間の臭い……?今日はご馳走かえ?」
「――ちょ、やめて!と、とにかく静かに――!」
「もう、ネコちゃんはホンマに愛らしゅうて……!」
「――ちょ、やめ!やめなさい!抱き付くなぁ!」
その後は何も聞こえなくなる。
ネコと……ヤコと呼ばれた誰かは部屋から出て行ったのだろう。
ダメだ……。
俺は眠気に逆らえず、真っ暗な中、眠りへと落ちていく。
「――んふふ……美味しそうやわぁ……。」
俺は体の上に重さを感じて目を覚ます。
……あれ……?目、開けてるよな……?
自分が目を開けているのか閉じているかも分からない程に辺りは真っ暗だ。
真夜中なのだろう。
俺は、重さの原因があると思われる方へ視線を向ける。
すると、キラリと光る二つの光を見つける。
――目だ。
光の中心は縦に細長く暗くなっていた。
人間の目ではない。
「――なっ!」
その状況に驚き、声が出なかった。
「――あら?起きてしまわれたん?寝ていれば楽にできたんに……。」
女の声だ。
「――お、お前は……!」
「そないなこと気にせんで、うちに身ぃ任せて下さいまし。」
そう言うと、あっという間に俺の着ていたものを剥いでしまった。
「――な、なにを……!!」
「……んふふ……。」
艶めかしい笑い声が聞こえる。
「――ひふっ!?」
ぬるりと濡れていながらも、ざらりとした妙な感触を感じ、変な声が出てしまう。
その感触が俺の首元までぬるぬると登ってくる。
「……んふふ……可愛ぇなぁ……。」
「――や、ひゃめ!」
ら、らめら……くしゅぐったいようにゃ変な感触のしぇいで声が裏返りゅ。
「……んふふ……美味しく食べてやりますわぁ……。」
女の声は楽しそうな様子になっていく。
「――や、ひゃめ……。」
「……女々しゅうて愛らしい声で鳴いて。可愛ぇなぁ……。」
「――ヤコ……やめて。」
別の声が聞こえる。
この声は……座布団を持ってきてくれたユキちゃんだ。
「――このボンはうちが頂きます。」
「……そうじゃないの……。やめて。」
そう口にするユキちゃんからは強い圧を感じる。
それと同時に、部屋の温度が下がるような錯覚を覚えた。
「……はぁ……興が削がれたわ……。ここまでにしときましょ。」
「――ゆ、ユキちゃん……?」
「……大丈夫?」
「……ありがとう……。」
俺がそう口にすると、ユキちゃんは頬を赤らめて照れくさそうにしていた。
いや、真っ暗だったけれど……そんな気がした。