*美浜蒼依
美浜蒼依視点です。
私の恋人は、何かと女々しい。
女々しい、とは言わないのかな……世間では。
私の瞳には、彼がそう映っている。
根が真面目だからなのか、彼はその……いかがわしい話題には頬や耳を真っ赤に染めながら、話題を逸らそうと必死な様子を見せる。
そんな彼の慌てふためく姿が、抱きしめたくなる衝動をかりたてる。
一度、衝動を抑えられずに彼に抱きついたら、彼に腕を引き剥がそうともがかれたので、名残惜しそうに「だめぇ〜彰人ぅ」と甘えた声で抵抗したが、彼の瞳に吸い込まれて腕を解いた。
彼は、いかがわしい行為……指を絡められたり、耳もとで囁かれることなどでも敏感で拒絶することが度々ある。
まあ、強引に攻めて、行為に及んじゃうけど……行為って言っても、一線は踏み越えてはいない。
私が強引に攻めても、突き放すことはしない……彼は。
私が一糸纏わぬ姿——全裸を彼に晒しても、彼は一度も手を出さない。
幾度と誘惑を試みるが彼が手を出すことはない。
私の身体に、女性としての魅力が無いのかと不安に襲われる。彼を前にすると。
彼の奥底に沈むナニカが生物の本能を、理性を、阻んでいるのかという考えに到達した……彼と交際して、二ヶ月ほどで。
彼は、か弱く、儚く、脆く、そして、愛しさを併せ持つ、手離したくない恋人——それが鴻上彰人、そのひとだ。
そんな鴻上彰人とひとつのベッドで、眠りにつけるなんて……私は。
すぅすぅ、と寝息をたてる彼の横顔を見つめながら、彼に気付かれないように手の甲にひとさし指の指先だけを触れてみる。
何で鴻上彰人以外の男子に見られるのを恥ずかしがるか、解る?
それはね——
無防備で可愛い顔した彼を、瞳に焼き付ける。
誰にも返されないことを分かっていながら、そっと呟いた。
「おやすみ」
と。