思いもよらない訪問者
俺は玖渚家を後にし、帰宅すると自宅の門扉に制服姿の女子がもたれ掛かっていた。
「よぉ~すぅっ!あ~きぃとっ、来ちゃったぁっ!」
俺に気付いた彼女が満面の笑みを浮かべ、片手を挙げた。
「何であおちゃ、蒼依が来てんの?連絡してよ、来るなら」
「したらサプライズになんないじゃ~ん!たまには驚かせたいなぁ~って。私が来たら都合悪いことでもあるの?なぁい~よねぇー」
「浮気みたいなことしてないって、蒼依!都合が悪いことないからっ......」
「怯えながら後退りしないでよ、冗談だってぇ~もうぅ~!」
「やめてよ、マジトーンで圧掛けるのぅー!生きた心地しないからぁ~」
「ごめんごめんっ!お邪魔して良い?」
玄関扉を開け、二人で並びながら自宅に足を踏み入れた。
「良いよ。今日って何かあった?」
「ううん、なぁ~んも!あっちゃんの声が聴きたくてきた」
「それなら通話でも──」
「あっちゃんは私と通話で充分だって言うのっ?ひどいよぉー、あんまりだぁー」
「ごめんってぇ!違う違うよ、そういうんじゃなくて......そのぅ、あおちゃんがぁっ......野蛮な奴に襲われでもしたらって──」
「ごめん......夜は危ないもんね、あっちゃんに会いたくて浮かれてた」
「分かってくれたなら......良かった」
「アキちゃん、おかえり~!アキちゃんったら蒼依ちゃんを待たせてぇ~ダメよぅー」
母親にのほほんとした声音で迎えられた。
「ほんとですよ~あっちゃんってば、抜けてるとこあるから困っちゃいますぅ~」
「母さんにのらなくていいから、あおちゃんっ!」
当然のように美浜蒼依がダイニングチェアに腰をおろした。
「たぁくさぁ~ん食べてね、蒼依ちゃん」
茶碗に白米をよそいながら彼女に言っている母親。
何だかなぁ......他人の家の食卓に放り込まれた気分がする。