吐き気がこみあげる笑い声に
翌日の放課後、友人の谷津瀬に呼び止められた。
「おぅ~いっ鴻上ぃっ!一緒に帰ろうぜ、今日はさっ」
「わりぃ、今日もやめとくよ」
「はあ~っ!彼女もほぅ~っぽいて毎日どこに通ってんだよ、鴻上っ!」
「そんなんじゃねぇって、谷津瀬。彼女だって部活で忙しいんだし、良いんだよ。おまえだって彼女と帰ってねぇじゃんか、自分を棚にあげて責めんなよ」
「はぁー......話をすり替えんなよ。親友である俺に話せないようなことか?」
あきれたようなため息を漏らし、再び訊ねてくる彼。
「浮気......ってわけじゃないから。ただの......いや、何でもない。いつか......いつか、話せるときがきたら話すから」
「お、おう......わ、わりぃ。大事にしろよ、彼女」
「谷津瀬こそ。じゃあ、また明日」
「ああ、また明日」
彼の遠ざかる後ろ姿を見届け、歩き始めた俺。
俺と谷津瀬には恋人がおり、遊びに出掛けるほど仲の良い四人である。
玖渚は恋人の存在を知らない。
昇降口の下駄箱が近付いたと同時に聞き覚えのある笑い声が聞こえた。
他人を嘲笑う甲高い笑い声だ。
あいつらだ、玖渚を酷い目に合わせた連中の笑い声。
関わらないのが吉だ。
昇降口を抜けて、足を踏み出した。