COOKIE
「あと三十分だよぅ、彰人ぅ〜!次なに歌う〜?」
酔っぱらっているような調子の甘ったるい猫なで声で聞きながら、デンモクを渡してきた実羽羅。
「えーっとぉ、そうだねぇ……」
俺はデンモクを受け取り、歌おうとする曲の曲名を入力する。
彼女が肩に腕を回してきて、撫で続けてきた。
「うっ……」
友人でありはするが、スキンシップが度を越えているように感じて、思わず声が漏れた俺だった。
机に置かれたマイクを掴んで、コップに注がれている爽健美茶で喉の渇きを潤した。
「そんな反応しないでよー」
デンモクに入力した曲の曲名と歌手の名前がテレビの画面に映った。
『COOKIE 尾崎 豊』
前奏が流れだし、マイクを口元に近づけた俺。
テレビの画面に歌詞が出てきて、歌い始める。
〜♪♪♪〜
俺が尾崎豊の『COOKIE』を歌い終えると、彼女が拍手をして、「意外と刺さんね〜」と短い感想を述べて、皿に取り残された小ぶりのから揚げを手で摘んでいた。
「親世代のも聴いてるんだね〜意外だわぁ。尾崎のも聴いてるなんて、範囲ひろー!渋いけど、意外と沁みんねーこれぇ!」
「うん……俺が尾崎さんのに触れて、まずハマったのが、この『COOKIE』だったんだよね。ほとんどの人が知ってる曲よりも、何故か『COOKIE』を聴いてたんだよ。その頃は歌詞の意味も分からずに聴いてたんだよなぁ……」
「へぇ〜そうなんだ〜!ウチも帰ったら聴くわ、尾崎の。他にもオススメとかあったら教えて。彰人」
「いいよ、夏杞先輩。夏杞先輩だって、モー娘歌ってたじゃないですか〜」
「マイナーなのは歌ってないけどね……彰人につられてね」
「そうですか。次なにします、夏杞先輩?」
「そうだなぁ、次はぁ——」
実羽羅はデンモクを携え、十数秒程悩んでタッチペンで入力を始めた。
俺と実羽羅は三時間パックを終え、カラオケ店をあとにして、彼女のマンションの近所にある居酒屋に足を運ぶことにした。
居酒屋による直前にコンビニに寄って、酒の肴など諸々の食べ物を購入した。
居酒屋の開店を過ぎた18時過ぎに、暖簾をくぐって入店した俺と彼女。
ダラダラと二時間も酒をあおった彼女は舌足らずな調子で頭を揺らしていた。
足取りがおぼつかない彼女を自宅まで送ることになった俺だった。
美浜に知られたら、ただでは済みそうにない……




