小旅行の目的
「もうじき卒業だね、彰人。四年って思ってたより短かったねー」
「そうだね、蒼依。蒼依に島田以外にも友人が出来て安心した」
「どの口が言うのぅーっ!彰人に心配されずともすぐ出来たよ、友人の一人や二人なんてさぁ。彰人こそ谷津瀬や美月以外の友人が出来てたのが驚きだよー!」
ダブルベッドに横たわり、俺の左頬をつねりながら声を荒げて、柔和な笑みを顔に浮かべた美浜。
「ごめんごめん。僕だって友人くらい出来るさ、蒼依。あるとき勘違いして、口きいてくれなかったことあったよね。あの期間、ほんと焦ったなぁ〜」
彼女の手が頬から離れ、つねられた左頬を摩りながら効果のありそうな反撃を仕掛ける俺。
「しぃ、ししっ、仕方ないじゃん、あんなの見たら……ああなるって」
「そうだったとしても、確認してからにして欲しかったよ。突然口きかれなくなるって、ショックデカいって」
「ごめんって!あのときだって謝ったじゃん。根にもちすぎだって彰人ぉっ!」
「根に持ってるんじゃ……思い出したから、で……ごめん、蒼依」
「私こそごめん、旅行来てこんな言い合い良くないね」
「蒼依は悪くないよ。そうそう、陽が昇る前に土井ヶ浜海岸に行かない?」
「えー、なんで?」
「夜明け前の海を眺めるなんてそうそうないじゃん!こんな機会滅多にないんだし、良いじゃん。ね、蒼依?」
「そうだけど……うん、行こ彰人」
渋っていた彼女が一分程思い悩んで、提案に同意してくれた。
「ありがとう、蒼依」
山口県へ小旅行に来たある目的が叶うのは、目前だ。
美浜蒼依にプロポーズするのに絶好のシチュエーションだろう。
夜明け前の海で——というのは。




