*おねだり
「ねぇ〜彰人ぅー、してよ。してくんないと、解放しないよ」
「でも……キスは、ちょっと……」
私のおねだりに彼は後頭部に片手を伸ばして掻きながら、躊躇している。
「キスはフリでいいから。ねっ、フリでいいから一連の流れはやれるでしょ。あっちゃん、お願いっ!ねっ、あっちゃん」
私は多少の妥協をしながらも懇願した。
「いい、の……?あおちゃんはそれで満足するの?傷付かない、よね?」
「良いよ。満足するからおねだりしてるの。傷付かないから、遠慮なくして」
不安そうな彼の表情を見据えながらコクコクと力強く頷いてみせる私。
「ぅう……わ、分かったよ。じゃ、じゃあするよ。ふぅー」
深呼吸して、顔を引き締めた彼が、あのキャラの顔を再現して片手を私の顎に伸ばす。
彼のひとさし指の横と親指が私の顎を挟みクイッと押し上げる。
そして、
「おまえの恥ずかしい姿、俺にだけ見せろよ」
と荒々しく顔を近づけられた至近距離のままでセリフを発した彼が、更に顔を近づけ、お互いの唇が触れ合う寸前に——彼が後方へと退がる。
「ふぅー、これでいい……の?」
「っはぅ……あ、ありがとう。うん、彰人のあの表情とセリフにぞくぞくした!興奮した!彰人っ、好きぃっ!」
私は机の上に載せたお尻を浮かし、距離をとる恋人に飛び付いた。
私の好きな漫画の好きなシーンを再現してくれた鴻上彰人がもっと好きになった私だった。
満足した。




