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第一章 2話 なんか変異種弱くないか?

俺が走っていった先には……王女様がいた。王女様を追いかけているのはスーパースライム…いや違う。明らかに知能と敏捷に特化している。きっと変異種だろう。


「やばいやばいやばいやばい!なんでスーパースライムごときがこんなに速いのよ!あんたたち、なんとかして頂戴!」

「すみません、速いうえにこちらの攻撃を読んでいるかの如く正確に避けてきまして…手の打ちようがありません!」

「あんたたちそれでも王女の護衛隊なの!?私が魔法でバックアップするからどうにかしなさい!」

「か、かしこまりました!!」


そうなのだ。あの王女に限った話でなく、最近の王族は魔法の使い手、しかもスペシャリストであることが多い。あの王女は俺と同級生のフラン・ゼファー。俺に次ぐ魔力量と卓越した魔力コントロール、有り余る才能を遺憾無く発揮しており、学園内では、

「一千年に一度の天才」

「才色兼備のハイパースペックお嬢様」

「歩く美人魔導書」

「神様の最高傑作」

とか言われている。俺とは対極の位置にある、いわゆる優等生である。ちなみに通り名の数は半端なく多いらしく、まじめに数えていたら寿命が尽きるとか言われている。どうも魔法科の人間は通り名をつけたがる傾向にあるらしい。


そんなフランだが、実は心ない侮辱から俺を擁護してくれた数少ない同級生の1人だった。本来ならば王族を後ろ盾につけている俺が攻撃対象になることはないのだが、王立の学校だったこともあり、是正の指導は不徹底だったという。無論、これを知るのは当分後の話だが。


とにかくだ。俺を守ってくれていた同級生(しかも王族ときた)が命の危機に晒されている。俺の身を賭して助けに行く以外の選択肢は有り得ない。俺は走り出す。


「おいフラン!こっちに向かって走ってきてくれ!」

「ギ、ギーヴァ!わかった!そっちに行くね!」


物分かりのいいフラン(と護衛隊一同)は無策な逃げをやめ、こちらに駆けてくる。俺はフラン御一行を俺の後ろへと逃し、スライムの変異種と対峙する。


一瞬の対面でわかった。こいつは俺が今戦っていい相手じゃない!格が違う。そう俺の中の『常識』が告げている。


しかし、俺の今の戦い方は常識の範疇外といっていいだろう。ならば活路はあるはずだ。少なくともフランたちが逃げる時間は稼げるはずだ。俺は意を決してスライムの懐に突っ込んでいく。


「うおおおおおおお!!」

今まで見せたこともない気迫にスライムは一瞬たじろいだようだが、気を取り直して俺を呑み込みにかかってくる。通常ならばここでゲームオーバーといったところだ。


でも俺は負けない!俺は魔力を鎧のように全身に薄く纏わせている。んで、より多くの魔力を纏わせた右拳でスライムに殴りかかる。


「グギイイイイイイイイ!」

スライムは予想外且つ致命的なダメージを喰らった様子で、苦悶の表情を浮かべながら塵となっていく。いくら人に危害を加える魔物だとしても、この瞬間だけは少し心が痛む。


何はともあれ、俺は有り余る魔力を存分に活用して小銭を稼ぎ、王族の同級生を助けることに成功した。人の役に立てるとはこういう気持ちなんだとわかった。


〜〜〜


後ろで見ていた王女、フランは絶句していた。


「あの『魔力だけ』と罵られていたギーヴァがこんなに強いなんて…あの力は間違いなく学園一よ…」


そう呟くフランに護衛隊の隊長が寄ってくる。


「王女様、護衛隊一同力及ばず、王女様を危険に晒すこととなってしまい、申し訳ありませんでした!」

「さっきの件は仕方ないわ。なんてったってあのスライム、変異種のようだったもの。貴方達が無事で何よりよ」


彼女は口こそ厳しいところがあるが、誰にでも裏表なく分け隔てなく優しいのだ。


「ありがたき幸せです。ところで王女様、ひとつご提案があるのですがよろしいでしょうか」

「ええ、いいわよ。言ってみなさい」


そして隊長は言った。


「先程スライムを倒した男を王女様の護衛に加えてはいかがでしょうか?」


フランは多少面食らった。この護衛隊の隊長、実力がある分プライドがかなり高いことで有名なのだ。そんな彼が自分を差し置いて他の男を護衛に薦めるとは。よっぽどギーヴァの強さを認めたということなのだろうか。


「今日の件で私は思い知りました。強いと慢心していた私がスライムの変異種から王女様をお守りできなかった。そして、駆けつけた男は、謎の戦法ではありましたが、見事に変異種を討伐し、結果的に王女様の護衛をなさったのです。私にも先程まではちっぽけなプライドがありました。しかし、王女様をあらゆる危険からお守りするためにはこのプライドを捨ててでもあの男を迎え入れるべきだ、そう思いました」


フランは感心していた。一種の感動ともいえるだろう。隊長が自ら自分の愚かさに気づけたこと。状況を冷静に判断した上でギーヴァ勧誘を提案してくれたこと。そして何より、実力のみを信頼していた部下から、ここまで頼り甲斐のある台詞を聞けるとは思っていなかったこと。フランは自分は人から真剣に心配してもらえる幸せ者だ。そう心から思えた。


「よくわかったわ。私が勧誘しておくから貴方たちは帰っていて休んでいていいわよ。」

「護衛はよろしいですか」

「大丈夫。いざとなればギーヴァくん、さっきの男の子に助けてもらうから」

「知り合いの方でしたか。それではお言葉に甘えさせていただきます。どうかご無事で」

「ええ。…今日も護衛ありがとう」


最後の言葉が直接護衛隊に届くことはなかったが、心はしっかりと通いあったのだった。

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