1. 始まりの日
僕の名前はイツキ。正直に言おう、今、この状況の意味が分らないんだ。
そうだな、まず数時間前のことから話そうか。
-----遡ること5時間前-----
目を開いたら一面に広がる青色の空、そよぐ風、揺れる草木の音。
何だここは...このいかにも漫画や小説に出てきそうな場所は。確かさっきまで...ん?そうだ、車に乗っていたんだ。休日だったから久しぶりに家族で出掛けようってお父さんが言い出して、僕と妹とお母さんの4人でドライブをしていたはず。それでウトウトしていたら、なんか夢の中できれいなお姉さんに会って「ごめんなさいね」だの「その代わり色々とサービスはつけておくね」だの言われたな。あとなんだっけ?どこかに来てって言っていた気がするんだけどね、うん、思い出せない。
それにしても、右を見ても左を見ても言葉通り360度絵に描いたような大自然。
・・・
とりあえず、街を目指そう。状況が分らないことには何もできない。街って言っても見渡す限り見えないんだけど、森しか見えない方向と逆方向に行けば希望はある。誰かいるかもしれないし!
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そう、それから僕はひたすら歩き続けて今ようやく街の門の前まで来れた。あわよくば人とすれ違わないかとか期待していたんだけど見事に誰とも会わなかった。そこでだ、着いたはいいのだが何だこれは。いや街だ、確かに街だが問題はここにいる人たち、もはや人と言っていいのかすら分からない。動物が擬人化したような者たちばかりだ。
知識としてはある、おそらく獣人と言われる類いだろう。幼馴染みだった親友から毎日のようにアニメだのラノベだのの話を聞かされていたから思うのだが、ここは正にそう言った世界に似ているような気がする。でもでもでも、受け入れられないだろこんな状況、ありえない。物語であった時は楽しそうな世界だなとか思っていたが、いざ目の前にしたら怖いんだよ。未知のものに恐怖を抱くってのはこの事だったんだなと切実に思う。
だから街の付近まで来たものの、さっきからずっと門の影に隠れて様子を見続けている。様子を見始めてからおそらくもうすでに1時間を超えているの何で誰も出てこないんだ?それに入って行く人も誰もいない、街の外に誰一人としていないんだ。
「おい、おいそこの少年何している?」
驚いて声がした方を見たが誰もいない。
「どこを見ている。ここだよここ。」
「・・・・・。」下を見ると、なんか足元にちっこい犬の獣人が偉そうに立っていた。
「ここは街の者以外たどり着けないはずだが、見ない顔だなお前。どうやってここまでたどり着いた。」
「すまん、逆に聞きたいのだがここはどこだ?僕は気がついたら草原にいたんだ、一番近い街を探してここにたどり着いたんだが。」
「ふんっ!この俺が教えてやろう。ここは獣人の国、マルニア王国だ」