過去・第四話
・アスタグレンス=リヴァイン
フレア帝国第3皇女。容姿が整った銀髪の美少女。玄羽=ヴァトリーに大胆かつ狡猾な食わせ者と評される。
現皇帝を選出しているリヴァイン家本家の生まれであり、勉学から六芸に至るまで仕込まれており、何もかもが一流の域に達している。
その夜、場所を移した僕達は訓練二日目に向けて休息を取っていた。
皇女様は、どうやらフレア帝国に召喚された人達の訓練に付き添い、迷ったそうだ。
当然だろう。猛者でさえ一度入ると方向感覚を失い、数十日は迷うこの森で、出てこられたのが奇跡とも言うべきだ。
我々も、明日入るが深入りはしない。
そして、全く懲りずに今度は僕らの訓練に付き添いたい、とおっしゃっている。その意志の強さに、諦めて同行をしてもらう事にした。
まあ、北の帝国、タートリア帝国に女性陣が多く召喚された結果、この隊でたった一人の女の川相には良かっただろう。
「なるほど、じゃあグレンスは全部のタイプと光と音の属性を使えるんだ」
「はい。昼頃使ったみたいに《光学迷彩》と《消音》といった魔法から攻撃魔法、範囲魔法が得意ですよ」
「技も使えるという事は、何か武器も持っているのですか?」
「そうですね。この子が主です。私の属性に合わせた帝国の特注品で、"ウラノス"と言います。魔力を注ぎ込む事により、光線銃、火炎放射器、水圧銃、波動銃等にも変形可能です」
そういってグレンスが出した拳銃、ウラノスは簡素で性能に重点を置いている、というのが素人目にも分かった。
しかし、そのシンプルさが日本男児には受けが良いらしい。特に眼鏡をかけ、いかにもオタク、というのは偏見になるだろうが、その様な風貌の小松は、
「素晴らしい。十七世紀頃のスペインの銃みたいな見た目なのに、変形ができる利点に加えて、圧倒的な軽さ。素晴らしいと思わないか」
「そうだな。ウラノスという名に合う見事な黒色。夜みたいだな」
「その通りです。ウラノスは地上に熱、光、雨を与える天空神、私の属性そのものです。そのイメージに合わせた色にするよう職人に命じました」
三人で盛り上がるが、小松とグレンスの会話域が現在の知識を越えたため、脱落する。しかし、夕食ができたと知り、それもすぐに終了した。
ちなみにエレメンターはタイプと型、属性で分けられる。自己強化の「アクション」、それは「パワー型」、「スピード型」、「オンライン型」に分類され、俺の様にすべて使えるのを「アルティメット」と呼ぶ。
「マナタイプ」は魔力を形にすることによる直接攻撃。
「技」は武器を使用したり、物に魔力を与えたりすることによる間接攻撃のタイプ。
属性は五気に基づき、それぞれ裏属性が存在する。技は特殊なタイプで、裏属性を独立しているものと見なし、「物理系属性」と呼ばれる。
しかし、マナはアクションと違い、裏属性を扱うには試練を達成する必要がある。
俺は土だから、重力関係も理論上は使用できる。
「そういえば、まともな自己紹介ができていませんね。山と希望、臥龍は知っていますので、他の方お願いします」
「小松正也、マナの金です。あとでウラノスをゆっくり見せて下さいよ」
「林佑聖、感とマナの金です」
「稲垣翔祐、技の金です」
「稲垣、それは日本刀ですか?初めて見ました。後で見せて下さいね。あっ、・・・・・・失礼しました。続きをお願いします」
「小川魁人、オンライン、マナの土です」
「池上逸樹、マナの水です」
「松尾冬輝、感にマナの水です」
「木村捷、マナの木です」
「ありがとうございます。それにしても、あなた方は戦いに慣れている、そう思えたのですが何故でしょう。希望達と同じ出身地の方々も同様でした」
「・・・・・・」
しばらく沈黙が続き、皆が僕の顔を見る。まあ、あれに一番関係していたのは虎武龍麒と俺だし、あまり人に触れられたくない事だからな。
「すまないがグレンス、今は話したくない。また今度、五神祭で会った時に話せれば話す。それと、フレア帝国に虎武龍麒はいるかな」
「そうですか。仕方ありませんね。・・・・・・、虎武龍麒という名の人はいませんね。タートリア帝国か南半球の共和国にいると思います。何故ですか」
「そうか、いや何でもない。ありがとう。もう寝ようか」
急に場の空気が重く感じられた。今はまだ人に言いたくない、この手帳にも書きたくはない。2年前の事など、今は過去でしかない、そう自分に言い聞かせても、心は落ち着かない。
まだ乗り越えられていないのだろうか、地球から離れても付いてくるのだろうか。
天気は快晴で星が美しく輝いている。しかし、星座は当然一つも当てはまらない。月が二つも存在しているのに山沿いの雲に隠されている。
まあ、月光がないからこそ、星が綺麗に見えるのだが。
アクションタイプ
体内で魔力を利用する身体強化を得意とする。
パワー型、スピード型、オンライン型の三つに分類される。
漢字表記にすると、パワーは「力」、スピードは「速」、オンラインは「感」、アルティメットは「極」である。アクションの漢字表記は「内」。
パワーとスピードで、「オンバトル」、パワーとオンラインで「オンパワー」、スピードとオンラインで「オンスピード」、3つの型全て使えるのが「アルティメット」と呼ばれる。
自己強化魔法を使用する際に、自分が扱える属性により意識的または無意識に付与される効果のことを「属性影響」と言う。
また、短時間で発動可能な魔法のことを「スキル」と言い、アクションに多い。
1.パワー型(力)
魔力を筋肉等に使い、一時的または継続的に攻撃力・防御力を上昇させて戦う。戦闘術、護身術、自然治癒などに焦点を置く。
2.スピード型(速)
魔力を体内でエネルギー等に使い、瞬間的または長時間、身体能力を向上させて戦う。パワー型との広義での区別はそこまで明確ではない。
3.オンライン型(感)
魔力を感覚器官や中枢神経の強化に使うことで、五感や第六感を鋭くする。パワー・スピード型との区別がはっきりしていない部分もある。
4.アルティメットアクション(極)
力、速、感全ての能力を使える者に贈られる称号。魔境の中では将軍として活躍する者が多い。鬼神に認められると、《鬼神変化》(自身が鬼神に変化し、能力を使用する究極技)が使える。
・鬼神変化
五神またはその他の鬼神に認められることで使用可能な究極魔法。
鬼神の固有能力をそのまま使えるが、姿も酷似したものになる。使いこなせると一部だけ変化も可能で、青龍は電気(雷)を踏み場にでき、朱雀は飛行能力、麒麟は重力操作による浮遊、白虎は気流による浮遊、玄武は冷気を放つことによる氷河化などが可能。
ステータスが大幅に増加するが、変化時間は魔力量と体力に比例し、短い。