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月影のエレメンター~等活編Ⅰ~  作者: ハイエナ=エレメント
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魔獣・第三話

・属性

 監視役に任命された五神の属性を基本とし、分類される。つまり陰陽五行説に基づき、相生・相克の関係にある。暗黒世界のダークマターやオフラインも元はエレメンターのため、五気に基づく分類。

 属性にはそれぞれに裏属性があり、木は「電気」、火は「光」、土は「重力」、金は「風」、水は「音」とされる。

 ブラックワールドの裏属性は木が「生」、火が「死」、土が「魔物」、金が「時間」、水が「空間」である。

 しかし、エレメンター側も含めて、裏属性は相生・相克に含まれない。

 近年の研究では、これらの属性の派生、強化版が見られ、6つ確認される。トイラプス帝国では、木から「毒」、電気から「雷」。フレア帝国では、火から「炎」、光から「闇」。タートリア帝国では、水から「氷」を開発し、この3帝国の共同研究では「磁力」が生まれた。

 訓練が始まってニか月がち、戦闘、知識、身体能力、技術、魔力操作をスポンジの如く、吸収していった。いや、させられた。

 召喚者・訓練生は百二十人いたが、今では全員の名前も覚えられた。

 僕は、召喚者への説明役と指南役を担っていたクロウ、玄羽くろう=ヴァトリーに弟子入りし、仙術を修得していた。




「なあ、やま石田いしだ中村なかむらがどこにいるか分かったか」

 と言いながら近付いて来たのは、小栗臥龍おぐりがりょう。小さい頃からの付き合いがあり、気心の知れた仲だ。

 僕と同様に黒髪黒目ではあるが、その髪は普段から夜更しを繰り返しているせいか、はたまた遺伝なのか白い髪がところどころ混じってはいたが、不思議と違和感を感じない。髪の毛は短く刈られ、手を置けば突き刺さりそうな程に立っている。といっても五センチメートルもないので、目立つものではない。


「ああ。どうやら南西にあるフレア帝国にいるようだな。帝国同士で話し合って戦力を分割したみたいだ。師匠が教えてくれた。

そう言えば小栗おぐり、《vibration attack》の調子はどうだ」

「《振動増幅型攻撃》か。おかげで岩も砕けるようになったぜ。でもさ、まさかようやく勉強地獄から抜け出したと思ったら、また勉強地獄」

「まあ、しょうがない。勉強するということは生きるということだからな」


「でもやまは、アルティメットアクションで記憶力も運動神経も倍増できるじゃないか、チートだな。誰もいないよ、1つのタイプを極めた人なんて」

 そう言ってこちらに来たのは、木村捷きむらさとし小栗おぐり同様、幼い頃から付き合いはあるが、彼はどちらかと言えば、フレア帝国に居る石田いしだと仲が良い。

 外見はこちらもまた黒髪黒目であるが、僕や小栗おぐりとは違って、その髪はなかなか長い。さすがに肩までかかる程ではないが、パーマにできるのではないかと思う程の長さで、ふわふわしている。

 小栗おぐり木村きむらを比べると、今はまだ小栗おぐりの方が七センチメートルは高いが、成長期と言えば良いのか中学卒業時と比べて明らかに高くなっている。

 僕もいつか抜かれるかもしれないな、という危機感を人知れず抱きながら木村きむらの言葉に応える。


「いやどうも、でもまだ《鬼神変化》は使えないぜ」

「いやそれ手に入れたら、本当のチートだ。ニか月後の五神祭、ほぼ優勝確定になる」


 五神祭、それは地球で言えばオリンピックのようなもの、というより地球の、古代ギリシャのオリンピックを模して創られたのだから、エレメンターオリンピックか。

 魔境は地球の文化を積極的に取り入れているようで日本語も英語もドイツ語も通じる。

 通りで師匠と初めて会った時、会話ができた訳で最初は言語理解のスキルだと思ってしまった。流石にそんな都合の良いスキルも魔法も存在しない。そんなことを考えていると、休憩時間は終了した。




「確かに、滉穎こうえい君のアルティメットは現段階では召喚者の中では最強だろうね。それは他人に頼らず、自分の力でこなす精神の強さから来ている。良く言えば、アクションの極みで最適な人物。悪く言えば、したたかさがないと言える。いつかは限界が来るだろう。仲間に頼ることもできるようにしておけ」

 神出で現れた師匠は、忠告、いや警告のような助言を言い残し、鬼没でその場を去った。


「仲間に頼る、か。これ以上どうすればいい? よく分からない」

「さあ? ・・・・・・」




 師匠の助言の意図が分からないまま、午後の訓練へと向かった。次の訓練では、熱帯雨林に近い形相の森、通称「魔獣の森」で初めての実践を行う。


 ここは、僕達が召喚されたトイラプス帝国から南、フレア帝国から東にある辺境地であり、地球の生物が魔力を持つことにより、「魔獣」と化した生き物が住みつく場所。

 放置した結果繁殖し、エレメンターでも手が出しにくくなったのである。今では、自身の実力を試す場所となっている。

 どうやら他にも、アトラ洋という大海、フレア帝国の南にあるレグリア砂漠、北極のインフェルト大陸という過酷な環境で魔獣は繁殖しているようだ。


 しかし、人の負の感情から発生する殺戮さつりく衝動を持つ魔物と違い、生物本能に従いつつも理性がある魔獣は、意思疎通が可能である。魔力の影響か、生物のほとんどが雑食になり、人も捕食対象となってはいるが。




「さて、そろそろ本番となるが、この瞬間から我々は戦友だ。君達はもうトイラプス帝国の客人ではない。地球での暮らしを捨て、魔境での戦いを選択したのは感謝申し上げる。

しかし、もはや一人前となりつつある君達には、自分の命は自分で責任を持ってもらう。命の保証はない。自身の生命を守るには力と知恵を付ける他ない。

この訓練は、その試験だと思ってくれ。魔獣の森周辺は何が起こるか分からない、私も何度か死にかけたことがある。しかし、私は戦いに一切干渉せず、君達を見守っている。仲間と共に協力して戦ってくれ。君達は既に勝てる術を持っているから、安心して勝負に挑みなさい」

 そう言い渡すと、訓練開始の合図である笛が鳴った。




 僕達の班は開始地点から南へ向かい、草原地帯を目指す。草木は意外と背が高く、姿勢を低くすれば隠れることができそうだ。


 魔物がオンライン型のスキル《知覚強化》の探知に引っかかった。スピードとパワーである「オンバトル」の小栗おぐりやマナタイプの池上いけがみ川相かわい木村きむらは気づいていないようだ。


「皆、もう既に魔獣が近くにいる。作戦通りの隊列に。東に三体、南に六体、西に四体、中型の魔獣。はやし池上いけがみ隊は東を頼む。俺達は南をやる。松尾まつお小川おがわ隊は西を」


 少し声を荒げたのが良くなかった。隠れても無駄だと分かった聴覚が鋭くなった魔獣、レオプラズマという電気属性を持った地球の獅子は帯電を始めている。草原地帯のようなこの場所は草木の背が高く、隠密には適している。

 しかし帯電により、黄色いや黒色のたてがみが美しく輝き、その利は無になった。いや、あれも一つの作戦か。「声東撃西」という言葉があるように。


 どちらにせよ、こちらには俺とはやし松尾冬輝まつおとうき小川魁人おがわかいとといった師匠にしごかれたオンラインがいる。十三体なら余裕で探知できる。魔法傾向の雄が五体か。

「すまないが変更だ。池上いけがみはやしは後方から指示を頼む。南と東のレオの気を引くから。先週の作戦の準備を。小栗おぐり()をよろしく」

「「了解」」

「自己強化魔法、身体能力強化、《speed up》」

 自分達の間を通り過ぎた獲物を追って3,4体が後ろを向き、注意がれた。

「範囲魔法、《leopard》展開」

 池上いけがみが得意とする範囲魔法により、高度7メートルに雨雲が発生し、雹が落下する。しかし、流石は魔獣。雄が勇ましく太い声で咆哮しながら放電する。雹は光りながら粉々に砕け、範囲魔法が散った。光る六花がレオに降り注ぎ、幻想的に彼等を飾った。


 さらに、咆哮を聞いた途端、体が一瞬動きを止めてしまい、鳥肌が立った。周囲の人は硬直し、放電を少し浴びた者もいるが、命に別状はない様だ。想定内だ。

「自己強化魔法、身体能力強化、《筋力強化》、属性影響、《振動増幅型攻撃》」

 黒雲は単なるカモフラージュ、狙いは死角から繰り出す小栗の音属性を利用した《vibration attack》。グシャ、と地面に叩き潰された1体に加えて、振動による揺れが、数体の体勢を崩した。


 動けるようになった俺達は、その反撃開始の合図と共に動き出した。

「ナイッスー、臥龍がりょう。後ろにもう1体」

 はやしの指示で、間髪入れずにもう1度繰り出す。

「もう一発」

 立て直そうとするレオが小栗おぐりの攻撃を頭に食らう。鼓膜の破壊で、耳から毛を通って血が垂れ、強い振動波で頭蓋骨が破壊される。つまり、即死攻撃。同時に俺も、

「属性影響、《mineralization》、《mass conversion》」

 石化した右手の質量を増加させ、距離を詰めた雌の頭蓋骨にパンチを入れた。続けて、隣で利他行動に出ようとする雌が《筋力強化》、《速度上昇》を使い、反撃の姿勢を見せる。


 残り六体、こっちに向いた三体を潰せば何とかなる。さらに身体能力強化を使用し、スピードとパワーの近接戦に持ち込んだ。そうなれば、こちらの勝利は約束されたも同然だ。

 初撃をかわし、カウンターを打ち込み、頸部を破壊。ニ体目も間をすり抜け、肘を腹部に入れる。三体目の攻撃は、放電。こちらの方角なら小栗達に当たらないが、アクションは物理攻撃耐性特化とも言える。《電撃》をまともに食らえない。

 雄がバチバチ、と音を鳴らして電気をまとう。

「知覚強化、中枢神経強化、《perfect vision》」

 感覚器官などの強化と共に《Perfect vision》を発動させる。これは自身の脳を強化し、空間の分析や脳内時間の加速を可能とし、刹那の動きと判断力で戦闘を有利にする。

 この《perfect vision》に関しては、この手記の後ろのページにその原理を書いておこうか。


 雄の放電が大気の電気抵抗を超え、迫り来る。目前に迫る網の穴を見つけると共に走り出す。予想外の出来事に、《獅子吼ししく》を咄嗟にしようとするが、咆哮を出す時には、喉に石と化した右手が突き刺さる。

 ニつに分離した体が、真紅と漆黒の液体を己の敵に浴びせながら、ゆっくりとずり落ちる。残り三体。


 小栗の攻撃から反撃の姿勢を整えたレオは、帯電を開始し、ニ体の雌は左右に分かれる。師匠に教わった戦闘の基本、一撃離脱でその場を離れた小栗おぐりは、池上いけがみはやしと合流する。

 雌は完全に気配を草木に隠し、その目は明らかにオンラインであるはやしの姿を捉える。全体を指揮する役割を持ち、戦闘力が低そうな者を狙うのは賢いが、駆け引きはこちらの勝ちだ。

 雄が放電し、連携された動きで、雌が死角から首を狙って飛びつく。が、

「変化魔法《イオン操作》、ナトリウムイオン、カリウムイオン」

 その瞬間、レオが動きを止めた、いや正確に言うなら、筋肉、神経がはやしの支配下に入ったのだ。はやしの得意な変化魔法により、守備を捨てた雌ニ体の動きを捉える。


 人間、動物が電気信号で身体を動かすのだから、魔獣も同様。その際、ナトリウムイオン、カリウムイオンが使われる。それを支配下に置いてしまえば、脳から身体へ出される命令を阻害し、動きを止めることも可能なのだ。


 それに対しレオが抵抗力を高めて支配を打ち消すが、既に勝敗は決した。

 《振動増幅型攻撃》によりニ体がほぼ同時に地に倒れる。

臥龍がりょう、もう少しその技の威力は抑えられないか。耳がおかしくなる」

「いや、すまん」

「二人共、放電が来る」

 雄が最大限に溜めた電気を林達に向けて放つ。

「範囲魔法、《pure water wall》」

純粋な水の壁に放電が遮られ、水が蒸発する。

「ナイッスー池上。助かった。動きを止める。《イオン操作》」

「よし、最後の一体。振動増幅型・・・・・・」

「悪い。《握力強化》」

 後ろからレオの頭に右手を置き、頭蓋骨を握力で粉々に砕く。これでプラズマレオは全滅だろう。戻って来た小川おがわ松尾まつお川相かわい達も四体のレオを背負っている。これでコンプリート、しばらくは食事も困らないと考えつつ、解体を始めた。




「しっかし、恐ろしいな。何で笑顔のまま、頭蓋骨を破壊するんだよ」

「食材になってくれた感謝を込めただけだ。それより、ライオンというかこのレオは夜の狩りが主流なのに何故昼に会えたんだ? それに力の差を見せても逃げなかった」

「環境が変わったからじゃないか」


「違いますよ。レオプラズマも夜の狩りが主です。逃げなかったのはきっと、この近くに彼等の子供がいるのでしょう。さらにここは彼等のナワバリです。侵入者を排除する行為は、地球の動物よりも魔獣の方が強いのです」


 突如声がした方向を見ると、銀色の背中まであるロングヘアを持つ佳人かじんがいた。

 その容姿は男の目を釘付けにするほどに美しい。あかい眼をしており、その眼を見ると石化魔法でもかけられたかのように動けなくなる。

 機能性を重視しつつも、華麗な銀と白の生地にくれないの線が入った服は一層彼女の魅力を高める。


 しかし、オンラインが誰も気配に気付けない、エレメンターだとすぐに分かった。見惚れると同時に警戒を強める。

「申し遅れましたね。私の名はアスタグレンス=リヴァイン、グレンスと呼んでください。そうですね、フレア帝国の第三皇女と、名乗りましょうか。さっきの戦闘もずっと見ていました。

ニか月前に訓練を開始してここまで上達するとは、玄羽くろう=ヴァトリーの指導力は想像以上のようですね」

①木―電気属性

 青龍の力であり、植物等の有機物が源とされる。有機物の構造の組み立てや、電気の使用等を得意とする。

 ダークマターだと裏属性は「生」となり、新たな精神の製造から生物を作ったり、人々の精神支配ができたりする。


②火―光属性

 熱や太陽を源とする朱雀の力。炎の操作や摩擦、光、電磁波の扱いを得意とする。

 ダークマターは「死」で、肉体を持たない魂のコントロールや即死系の魔法が使える。


③土―重力属性

 麒麟の力。土や石、地球、月を源泉とし、土魔法や重力が扱える。

 ダークマターは「魔物」。人の負の感情から直接魔物を製造したり、人をアンデッド化したりでき、魔物の強化も可能。


④金―風属性

 白虎の力で、金属を源とする。錬金や風の操作が得意。

 ダークマターは「時間」属性で、時間加速、重加速じゅうかそく時間遡行じかんそこう等ができるが、未来へは行けない。時間停止等は自身の命も危険になる魔法。


⑤水―音属性

 水や冷たさを源とする玄武の力。水や氷、音による魔法、攻撃が得意。

 ダークマターは空間。瞬間移動等の空間操作による魔法が使える。

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