魔境・第二話
主要人物一覧
・山滉穎 15歳
・小栗臥龍 15歳
・木村捷 15歳
・池上逸樹 15歳
・林佑聖 15歳
・稲垣翔祐 15歳
・松尾冬輝 15歳
・玄羽=ヴァトリー 28歳
三ヶ月も前の事だろう、この「エレメンター」という言葉を知ったのは。辞典には載っておらず、インターネットで調べてもどっかの会社または商品ぐらいしか出てこないだろう。英語表記はおそらく、"element"に"er"を付けたもの。動詞等に"er"を付けると"player"のように人を表すから、元素者を意味するのか、九十日前のあの日はぼんやり、そう考えていた。
中学を卒業した我々五人は、四月二日、久しぶりに娯楽を解放していた。
日が暮れ始め、帰宅しようとしたその時だった。
ビリッと体に電流が走ったかと思うと、体が鉛のように重くなり、冷たい気流が肌に触れ、不協和音いや脳を揺らされるかのような高い音が鳴り響き、視界が徐々に狭くなっていった。
意識が遠のく中、心なしか、誰か助けを求めている。そんな気がした。
目が覚めると、青色の天井が見えた。鮮やかというべきか、目が疲れるというべきか、とにかく健康な目には痛いな、と思いながら横を向いた。
そこには、寝台で寝ている小栗臥龍、木村捷の姿と、一緒にはいなかったはずの元同級生、池上逸樹、小川魁人、林佑聖、松尾冬輝がいた。それだけではなく、見知らぬ顔も多くいた。
頭の中で状況整理をしていると、一人この病室のような部屋に入って来たのを感じた。
「お目覚めかな、滉穎君。他の人はまだのようだね。突然こんな場所に来て混乱しているだろうが、落ち着いて私について来てくれ。これから説明を行うのでね」
端から見れば独り言だと思うかのような静寂の中で話す。
抑揚と威厳がある話し方だった。
「すみませんが誰、ですか? 何故僕の名前を?」
と質問しながら、その人の動きや視線を観察した。
灰色の短髪で、僕が好きなライトノベル、第二位であるが、その主人公を思わせる整った顔つき、所謂イケメンであった。しかし、話し方からも分かる様に、威厳と矛盾するようだが穏やかで温かなオーラを身に纏っていた。何とも、人を惹きつける不思議な雰囲気であった。
「失礼。申し遅れました。君達の指導係になった玄羽=ヴァトリーだ。よろしく。他の人達も起こしてもらえないだろうか。君達の状況を説明するのでね」
どう返せばいいか分からず、苦笑いの様な感じで返した。とりあえず他の人達を起こし、クロウと名乗る人物に付いていった。
その後、食事を提供され、地球では神話となった歴史を聞かされ、この魔境という世界の説明、魔力という不可思議な力について。そして、何のために呼ばれたのか。いや、この展開だと召喚されたのか、が適切だろう。
我々に地球での居場所は「あれ」以来無かった。故に戻る理由もなく、魔境での生活と戦いを必然的に選択した。
エレメンターとしての訓練は最短で2か月、そこから自由に分野を選ぶことができ、活躍する場を見つけることとなる。
この魔境は北半球に三つ帝国が存在し、実力主義で人々は生きているようだ。
我々はトイラプス帝国、東の帝国に召喚され、中央政府の一員として、経済、社会、科学を発展させていくということになっている。正直、僕達が必要とも思えないが。
戦争に参加する訳ではないのか、と気落ちする者もいたが、軽率な発言として戒められた。戦争が頻繁に起こっては民が苦しむだけ。上策は「戦わずして勝つ」こと。
僕達はあくまで、魔境の発展、人口増加を目的に、ガブリエルの告知から始まった召喚に、何を考えているのかすら分からない「勝者」に選ばれただけなのだから。
トイラプス帝国(東の帝国)
北半球キトゥリノ大陸の東に位置し、建国2048年。日本人の召喚が多いため、文化等は大和からの輸入が非常に多い。128代皇帝プネウロ=龍驤が統治し、血族は一度も途絶えたことがない。
中央政府と議会で政治、法律を管理する。中央政府は、農省、海省、工省、商省、道省、魔省、財省、外省、法省等に分かれる。さらに東春軍が組織されており、陸軍、海軍、警備隊、罪罰隊に分けられる。
また、皇帝直属に近衛隊と特別諸般対策考案部隊があり、後者は東の帝国の中で指折りの実力を持つ玄羽=ヴァトリーが所属している。
・魔省
エレメンターの育成が主な仕事。
五神祭の企画、運営や帝国内のエレメンターの統括を担い、魔法の開発、強化に力を入れている。神格武器や一般の武器開発は工省に依頼している。
日本の文部科学省とほぼ同じ役割を持つ。
・特別諸般対策考案部隊(SVMDF)
影から全ての分野のサポートをする。
玄羽を隊長とした所謂便利屋の機関。皇帝直属の部隊で、場合によってはどこの機関よりも強い権限を持つ。主に、優秀な成績か皇帝又は隊長に気に入られた者が所属する。彼等の功績は群を抜くもので、故に民からは尊敬されている。
簡潔に言えば、天才という狂人集団。