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第67話 マーニの正体


朝食を終えると、サリヴァンナ先生は授業が始まるまでの間、調べ物をすると言って自室へ引き上げて行った。

調べ物ってなんだろう?


よくわからないけど、そういえば私は今日から勉強するのかな?


「おかあさま、チェリーナは今日はべんきょうするのですか?」


「そうね、疲れているなら今日は休んでもいいわ。でも、マルティーナの世話係は見つかったから、明日からはまたお勉強しましょうね」


「はい。つかれていないので、チェリーナも今日からべんきょうします」


お兄様たちは授業があって、マルティーナには世話係がいるんじゃ私の遊び相手がいないし。

それなら久しぶりに授業を受けてみるよ。




食後のお茶を飲みながらみんなに土産話を披露していると、サリヴァンナ先生が足早に2階から下りて来た。

なぜか大興奮しているようで、本を抱えながら顔を紅潮させている。


「みなさん! この本に書かれていることを聞いてください! 

”ーー赤毛に琥珀色の目を持つ偉丈夫、火魔法使いプリマヴェリオを守護する不思議な生き物は、一見小さな狐のようにも見える。豊かな純白の被毛に覆われ、宝石のような青い目を持つこの類まれなる美しい生き物は、強力な結界の力を駆使してプリマヴェリオをあらゆる敵から守った。


神出鬼没なその生き物は、姿を消すことが出来るのではないかと噂され、人の言葉を理解する知能を持っているとさえ言われていた。かつては人々に神獣と崇められていたが、プリマヴェリオの死と共に歴史の表舞台から姿を消し、その後その姿を見たものはいない”」


えっ、神獣ってマーニが!?

ええーっ、マーニってだいぶ意地悪なんだけど。

この性格で神様だなんて信じられないな!


「おおっ! 火魔法使いプリマヴェリオとは、戦闘時の功績が認められてこの辺境伯領を賜った、我がプリマヴェーラ辺境伯家の始祖ではないか! そういえば俺も、初代辺境伯は神獣の庇護を受けていたと聞いたことがあるが、神話のようなものだと思っていたよ。


この長い時を経てまた神獣とめぐり合えるとは……! もしや、マーニがマルティーノを助けたのは、プリマヴェリオの子孫だと分かっていたからなのか?」


お父様は、サリヴァンナ先生の思いがけない話に感無量といった様子で捲し立てている。


「マーニ? 俺がプリマヴェリオの子孫だと分かっていたのか?」


マルティーノおじさまも驚きに目を瞠っていた。


「キャンキャン!」


マーニは、そうだよと言わんばかりにしっぽを振っている。

素早くマルティーノおじさまの肩まで駆け上がると、頬をぺろぺろと舐めだした。


「なるほど。だからマルティーノにも俺にもすぐに懐いたのだな」


え、それなら私にまったく懐かないのはなんでなの?


「チェリーナにはなついてません……」


「ああ……、そう言えば、なんでだろうな?」


お父様は首を傾げた。

やっぱりマーニはおじさんが好きなんだと思うな。


「魔法属性に関係があるのかもしれませんね。プリマヴェリオと同じ火魔法使いに惹かれるのではないでしょうか?」


「キャン」


サリヴァンナ先生の仮説に、同意するかのようにマーニが鳴き声をあげる。


「僕のことは? マーニ、僕もプリマヴェリオの子孫だよ?」


お兄様はそう言ってマーニの方へ手を伸ばした。

ああっ、うかつに手を出したら噛み付かれるかもしれないよ!


「ーーあっ、舐めた! 僕の手を舐めましたよ! 可愛いなあ!」


マーニはぺろぺろとお兄様の手を舐めている……。

えーっ、なんでなん?


「あら、属性は関係ないのかしら? 血筋だとすると、チェリーナにも懐いていいと思うのだけれど……」


「プリマヴェリオの男の子孫だけということなのか?」


マルティーノおじさまの質問にマーニがこてんと首を傾げているところを見ると、そういう訳でもないようだ。

まさか……何かしらのルールがあるわけじゃなくて、完全に好き嫌いで決めてるとかじゃないよね?


そこまで嫌われるようなことした覚えないし!


私がじーっとマーニを見ていると、私の視線に気付いたマーニもこちらを見て、フンという顔をしてきた。


「……とにかく、マーニは我がプリマヴェーラ家ゆかりの大事な神獣だということが分かったのだ。みんな仲良くしてほしい。マルティーノ、俺たちはそろそろ仕事に行くぞ。付いて来い」


「わかった。それじゃあ、ティーナ。いい子にしてろよ?」


「はあい! おとうさん、いってらっしゃい!」


そしてマルティーナの頭をひと撫でして、マルティーノおじさまはお父様と一緒に食堂を出ていった。





午前の勉強を終えた私は、ポルトの町で買ってきたお土産を渡すため、アイテム袋を片手に意気揚々と食堂へ向かった。


「おまたせしました! これがポルトの町のりょうりですよ!」


私はそう言って、テーブルの上に屋台で買った食べ物をどんどん出していった。


「ええっ!? そのカバンの中からこんな量の料理が?」


「しかも湯気が出ているぞ!」


「まあっ!」


気付いたら、みんなの視線がお土産ではなくアイテム袋のほうに集中していた。

そうだ、まだみんなはアイテム袋を見たことがなかったね。


「これは、なんでも入るカバンです! ほら!」


私はそう言って、野宿したときに使った大きなクッションを床の上に置いた。


「ええーーー!」


「どうしてあの大きさのものがあのカバンに入るんだ!?」


ふふふ、みんな驚いてる。

あー気分いいなあ!


「本当にすごいんだよ。あのカバンは、トブーンを2機と寝床代わりの大きなクッションを3つ入れてもまだまだ物が入るんだ。あのクッションも寝心地が良くてな。今回はかつてないほど快適な野宿だった」


お父様がアイテム袋について熱く語っている。

もしかして結構気に入ってたのかな?

それならお父様専用のアイテム袋をプレゼントしてあげるね!


「おとうさませんようのカバンを出しますか? あっ、そうだ! もし誰かにぬすまれても、おとうさまの元にもどってくるカバンはどうですか?」


お父様はたぶん大事なものとかたくさんあるんでしょうし。

金庫代わりにお金を仕舞ってもいいよね。


「えっ、俺の元に戻ってくるカバン? すごいな、そんなことまで出来るのか?」


字を書き足すだけだから、きっといけると思います!


「はい! ちゅうしょくのあとに出しますね!」


「そうか、頼むよ。ーーそれじゃあ、みんな。食事を始めよう」


ポルトの町の料理はみんなにとても好評で、おいしいおいしいと言ってあっという間に食べ尽くされてしまった。


「食べたりないな……。滅多に行けないんだし、もっと買ってくればよかったなあ」


そう言うと思ってちゃんと考えておきました!


「ポチッとな! はい、どうぞ」


「チェリーナ、それはおやつの箱?」


見た目はお菓子の箱と同じサイズですけど、書いた字が違います!

箱の一つには、"Lサイズピザ ハーフ&ハーフ マルゲリータとペパロニ"、もう一つには"Lサイズピザ ハーフ&ハーフ てりやきチキンと海老アボカド"と書いてあるんです。


「ポルトの町のチーズやきをヒントにしました! 食べてみてください!」


私が箱の蓋をあけると、おおーっと言う声があがった。

うんうん、おいしそうでしょ!


私はまずは海老アボカドにしようかな。

いただきまーす!


私があーんと大きく口を開けると、目の前で大きな海老がふっと消えてしまった。

ああっ、いま食べようと思ったのに!


なんでっ?

どこいった!?


こんなことをする犯人は一人しかいない!


「マーニッ!」


「うわっ、急に大きな声を出してどうしたの?」


お兄様がビックリした顔で私を見ている。


「マーニがチェリーナのえびをとりました!」


「ええ? 気のせいじゃない? テーブルの上にマーニが乗ってたらみんな気付くよ」


「自分で落としたんじゃないのか? 神獣が人の食べ物を横取りしないだろう」


くっ、私に味方はいないのかッ!






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