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番外編 ハッピーバンケット①


王宮に到着し、クリス様と共に一室に案内された私は、早速魔法でお菓子を用意することにした。


「ええと、お菓子は日持ちするように飴とチョコレートにしますね。ーーポチッとな!」


ドスンッ!


人が入れそうなほど大きなダンボール箱が10箱現れる。

飴をこの国では食べられない珍しい味にしたのはもちろんだけど、チョコレートもミルクチョコ、ホワイトチョコ、ストロベリーチョコ、クランチチョコ、ナッツチョコなど各種取り揃えてみた。


ちなみに中のお菓子は1粒ずつ個包装になっています。

そうすれば、今日食べ切れなくても取っておけるからね!


「すごい量だな……。こんなにたくさん、どうやって分けるんだ? まさか一粒ずつではないんだろう?」


箱の1つを開けて中身を確かめていると、クリス様が分け方を聞いてきた。


分け方かあ。

さすがに1粒ずつじゃ、いくらなんでもささやか過ぎる。

こんなことなら最初から1人分ずつ小分けした、バラエティパックを出せばよかったよ……。


でももう出しちゃったしな。

つかみ取りだと子どもに不利だし……。

よしっ、1人当たりコップ1杯分ずつすくって配ってもらうことにしよう!


「ーーポチッとな! このコップ1杯分ずつ分けることにします」


使い捨てのプラコップでいいかとも思ったけど、強度が足りない気がしたからハードタイプのプラコップを出してみた。

これで量ってハンカチにでもザラッと移せばバッチリだ。


「へえ、軽い。ガラス製ではないのか、おもしろいコップだな」


クリス様が10個入りのパックを持ち上げて、その軽さに驚いている。


「これは落としても割れないんですよ」


「酒飲みにはちょうどいいかもしれないな。そういえば、あんなに大勢の人に酒を配るコップ、王宮にあるのかな?」


……ないでしょうね。

私の魔法でポチッと用意しますか。


持って帰れば家でも使えるし、ハードタイプにしてちょうどよかったかもしれない。


「ーーポチッとな! こっちの箱にコップも用意しました。誰か王宮前広場まで持って行ってくれますか?」


「かしこまりました。こちらで手配させていただきますので、アメティースタ公爵夫妻は披露宴の前に王宮広場前バルコニーにお出ましになられてくださいませ。お手元のお花はこちらでお預かりいたしますわ」


え……?

エステル、何を言い出したの?


孤児院の子ども達からもらった花束をエステルに渡しながら、いまいち状況が飲み込めず首を傾げた。


「バルコニーですか?」


「はい。国王陛下が、披露宴前に民衆に手をお振りになられるようにと仰せでございます」


ああ、そう……。


「俺はもう王族じゃなくなった筈だけどな」


クリス様も国王陛下の無茶振りに苦笑いだ。


「国王陛下はお二人の人気ぶりがご自慢なのですよ。お美しい新郎新婦のお姿を民衆も楽しみにしております。さあ、どうぞこちらへ」


エヘ、美しいなんてそんな……!

みんなが待ってるならしょうがないね!


「せっかくですから行きましょうか、クリス様」


「そうだな」





わああああああああー!


す、すごい歓声!

聖堂前に集まった人を見て驚いたけど、王宮前広場にはさらに多くの人々が集まっている。


「こんなに大勢の人に祝福されて、俺たちは幸せだな」


「本当に……、ううっ、なんだか感動して涙が出そうです」


「マルチェリーナ様、笑顔で! お手をお振りくださいませ!」


私たちの背後に控えるエステルから、私の感動を断ち切るように鋭く指示が入る。


分かってますよ、この顔を死守しないとね……。

さすが王妃様の筆頭侍女を務めるだけあってデキる侍女だ。


「では奥様、一緒に手を振りましょうか?」


「ふふっ。はい、旦那様」


私たちは微笑み合うと、民衆に向かって手を振り始めた。


そのまま方向を変えながら5分ほど手を振り続けていると、広場の両端にお酒とお菓子が運び出されてくるのが見えた。


……この人数分足りるのか心配になってきたな。


「あの、エステルさん。もしお菓子やお酒が足りなくなったら教えてください。すぐに補充できますから」


「かしこまりました。さあ、そろそろ披露宴会場へご案内いたしますわ」


エステルに先導されて後を付いていくと、バルコニーからそれほど離れていない場所に披露宴会場が設けられていた。


私たちが会場に足を踏み入れると、着席して私たちが来るのを待っていてくれた招待客が一斉に拍手をして出迎えてくれる。

拍手に笑顔で応えながら、私たちは一番奥の長テーブルへ着席した。


綺麗な花が飾られたテーブルの上には、ナプキンやカトラリーがすでにセットされている。

食事の用意を見たらお腹が空いて来たかも!

今日はどんな料理が出てくるんだろう?


「クリス様、どんな料理が出てくるか楽しみですね」


「ずいぶん前から料理長が張り切ってメニューを考えてくれたらしいぞ」


おおー、期待が高まる!


「わあっ、楽し」


「マルチェリーナ様。お化粧が取れてしまいますので、お食事は最低限にお願いいたしますわ。できれば何も召し上がらず、お飲み物だけにしていただけると助かります」


え……、うそでしょ!?

ご馳走を目の前にして食べられないの?


「でも、せっかく料理長が私たちのために……」


「花嫁様はお食事は召し上がらないのが普通でございますよ。お食事は取っておきますので、披露宴の後でお召し上がりくださいませ」


うう……、そ、そんな……。


「わかりました……」


「そんなにガッカリするなよ。俺も後にするから一緒に食べよう。アイテム袋に入れておけば暖かいまま食べられるだろ?」


そうか、その手があった!

なんだかクリス様、今日はすごーく優しい気がする!


「はい!」


私がクリス様に微笑んだところで、披露宴でも司会進行を務めてくれる宰相が立ち上がった。

同時に、たくさんの給仕係が各テーブルでワインを注ぎ始める。


「それでは、新郎新婦が到着されましたので、ただいまより披露宴を始めたいと思います。まずは、国王陛下、乾杯の音頭をお願いいたします」


宰相に促された国王陛下が立ち上がった。


「うむ。今日は我が息子夫婦の結婚式に集まってくれて感謝する。みなグラスをあげ、息子夫婦のために乾杯してくれ。ーー乾杯!」


国王陛下は短く挨拶をすると、私たちに向かってグラスを掲げた。


「乾杯!」

「乾杯!」

「おめでとう!」


招待客も祝福の言葉と共にグラスを掲げ、ワインを一くち口に含む。


「国王陛下、ありがとうございました。続きまして、お二人の母校であるボロニア魔法学院の校長が挨拶をしてくださいます。ミネルバ校長、お願いいたします」


スピーチのトップバッターはミネルバ校長だ。

昨日の卒業式でも式辞があったのに、連日になってしまってすみません。


「ただいまご紹介に預かりました、ボロニア魔法学院校長のマーゴ・ミネルバです。アメティースタ公爵、公爵夫人、この度はご結婚おめでとうございます。心よりお祝い申し上げます。振り返ってみれば、お二人は入学されたときから特別な生徒だったことが思い出されます。特に、ボロニア魔法学院創立1000周年記念パーティで披露されたエイガというものは、それはそれは大変な衝撃でーー」


ミネルバ校長はさすが普段からスピーチに慣れているだけあって、私たち二人にまつわるエピソードをユーモアたっぷりに話してくれている。


へえー、撮影中の出来事もいろいろ知ってたんだな。

先生方には知られてないと思ってたよ。


「ーーどうもありがとうございました。ミネルバ校長のお話にもありましたエイガですが、なんと本日は新郎新婦の馴れ初めを再現したエイガを上映するとのことです。みなさま、どうぞお楽しみに」


そうなのです!

この後私たちの出会い再現VTRが上映されるんです!


はじめは、写真を使ったスライドショーを考えたけど、私たちが子どもの頃はカメラがなかったから肝心の写真が残っていない。

さすがに18歳になった今、8歳のときのコスプレで本人が再現するのは痛すぎるし……。


ということで、子役を起用して出会い再現VTRを作成することになりました!

病気のせいで私には出会ったときの記憶がないって言ったら、アルフォンソがクリス様の証言に基づいて再現してくれたのだ。


実は私もまだ見てないから楽しみにしてるんだよね。

私の中ではブス呼ばわりされたときが最初の記憶だから、本当はどんな出会いだったのか気になるな!






Special thanks to 里見しおん様!

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