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第156話 唐突な事後報告


「俺、結婚したから」


……脳内で?


楽しかった旅行から戻って10日ほど経ち、久々に学院でガブリエルの姿を見たと思ったら。

変人ぶりが一段とパワーアップしてないか。


オルランド様と再会したその日のうちに、妄想の挙式を済ませたらしいとは気付いてたけどさ。

現実ではまだ婚約したばっかりでしょ!


「つい先日婚約したばかりで何を言っている。俺達はまだ学生の身だし、学生じゃなかったとしても準備に半年はかかるだろう」


みんなが面食らって目をパチクリさせる中、いち早く我に返ったクリス様がもっともな指摘をする。


ほんとだよ!

いくら妄想でも展開早すぎだから!


「教会で祝福を受けて届けを出すだけなら、そんなに時間はかからないぞ。大勢の客を招待するから準備に時間がかかるんだ」


ガブリエルが訳知り顔で反論してるけど……。


「え……、まさか、本当に結婚を?」

「したのか?」

「ガブリエルが結婚!?」


うっそでしょ!

なんでそんな話になったの!


「ジャルディーニ伯爵は、俺たちの婚約を二つ返事で了承してくれたんだ。だが……、俺の父上が……」


やっぱりあのお父さんが何かしでかしたんだ?

いかにも何かやらかしそうだもんね。


「ガルコス公爵がどうしたんだよ? まさか、反対されたのか?」


「いや、そういう訳じゃないんだが。父上がジャルディーニ先輩……、いや、オルランディーヌを自分の部下にすると言い出してな……」


はっ?

婚約の許しをもらいに行ってるのに、なんでそこでスカウトが始まるの!?


「意味が分からないな」


「俺だって分からなかったよ! なんでも、オルランディーヌが卒業する前に、王宮魔術師として出仕するようにと申し入れたが、オルランディーヌは家を継がなくてはならないからと言って断ったそうなんだ。それが今回、オルランディーヌが家を継がないと分かった途端に、俺の話もろくに聞かず熱烈に誘い始めてな……」


オルランド様……、ガルコス公爵のお眼鏡にかなってしまうなんて気の毒に。

まあ、主席で卒業するような優秀な人なら、あちこちから声がかかってもおかしくないもんね。


「だからと言ってなんで急に結婚なんだ?」


「父上が、結婚するまでは何が何でも自分の元で働くようにと言って譲らなくて……。すぐに結婚するしか阻止する方法がなかった」


え、そんな理由!?

すぐに結婚すればガルコス公爵のところで働かずに済むからって……。

別に婚約期間中くらいなら働いたっていいんじゃないの?


「ガブリエルが卒業するまで1年足らずだぞ。それくらいの期間なら働いたっていいじゃないか」


「あの父上が、一度自分の部下になったオルランディーヌを易々と手放すと? 本気でそう思うか?」


……思いません。

あの手この手で結婚の邪魔をして、自分の手元におこうと画策するでしょうね。


「あー……、なるほど。確かに心配だな」


クリス様は腑に落ちたように深く頷いた。


「まあとにかく、結婚おめでとう」

「おめでとうございます!」

「ぜひお式に参列したかったですわ」


あまりの展開の早さに付いて行くのが大変だけど、おめでたいことなんだから祝福しないとね!

それにしても、私たちの中で唯一婚約者がいなかったガブリエルが結婚に一番乗りするとはねぇ。


「教会へは2人だけで行ったんだ。婚約披露パーティもする暇がなかったし、俺が卒業する頃にでもパーティを開こうと思っている。その時はみんなを招待させてもらうよ」


「まあっ、後から結婚パーティがあるのですね。それはよかったですわ。花嫁らしいことが何もないのでは、あまりにオルランド様がお気の毒ですから」


ガブリエルのことだから、なんにも考えてないと思ってたよ!


「オルランディーヌ」


「えっ?」


「名前は、オルランディーヌ・ガルコスだ」


ああ、そう……。

よかったですね、妄想が意外と早く現実になって。


「失礼しました。オルランディーヌ様でしたね」


「結婚祝いはやっぱりトブーンかな。ここは移動手段を確保しておくべき……、いや、録画機も捨てがたい。何がいいか悩むな」


え……、まさかの催促?

お祝いって、贈る側の気持ちじゃなかったっけ?


まあ、ガブリエルとオルランド様の結婚を祝いたい気持ちはあるから、言われなくても何か贈ったでしょうけど。

でもさあ、催促されるとあげる気なくすよね。


オルランド様……、これからこんな人と結婚生活を送るなんて……。

日々修行でしょうけど、がんばってください。






「お父様ー、お父様ー! こちらチェリーナ隊員です、どーぞー!」


『ああ、チェリーナか。期末試験はどうだった?』


ううっ……、試験ね。

体育祭と期末試験の間隔が短かったせいで、満足に試験勉強の時間が取れなくて……。

時間があっても勉強しなかったとは思うけど……。


「えーと、まあまあ? そこそこ普通でした」


『そこそこ普通ってなんだ?』


「得意な科目は大体できましたけど、不得意な科目はあんまり……。ですので、平均すると普通なのではないかと」


100点と40点を平均すると70点みたいな?

70点ならまあまあ普通だよね。


『チェリーナに得意な科目なんてあったのか?』


むっ、失礼な!

お父様ったら、自分の娘が才女だってことを忘れたのかな!


「私、算術は得意ですよ! なにしろ授業を免除になってるほどですから!」


『ああ、そう言えばそうだったな。チェリーナは小さい頃から算術が得意だった。試験が終わったなら、もう夏休みだろう? いつうちに帰ってくるんだ?』


そうだよ!

あなたの可愛いチェリーナがもうすぐ帰りますよ!

それを伝えようと思って電話したんです。


「明日、みんなで帰ります。朝早くに出る予定なので、お昼頃にはそちらに着くと思います」


『そうか。気を付けて帰って来いよ』


「はい! お父様、聞いてください。夏休み中に、クリス様がご自分の領地になる予定地へ連れて行ってくれるんですって! 私、すごく楽しみです」


お父様もお母様もお兄様も、みんな私がどのあたりに住むことになるのか気にしていたから、予定地が分かったらきっと喜んでくれるはずだ。


『おお、そうか! いよいよだな。なんだか俺まで緊張してきたよ』


「毎日うちに帰れる距離だといいなあ」


『お前、結婚したら毎日実家に帰るのはさすがに無理だろう。あまり無茶を言って、クリスティアーノ殿下を困らせるなよ?』


そうですね、自分で言ってて毎日は無理だと分かってました……。

名物料理の研究・開発もしないといけないし、領民たちと交流もしたいし、結婚したら何かと忙しくなるだろう。


「はい……。たまにはお父様とお母様の方からも遊びに来てくれますか?」


どこに住むのか分からないけど、いつでも遊びに来てください……。


『チェレスがこっちに戻ってくれば、俺たちが数日くらい領地を離れても問題ないだろう。チェレスの火と風の複合魔法は、かなり強力だからな』


私は見たことがないんだけど、お兄様は火魔法を放った後に風魔法を使って火力を増幅させることができるらしい。


火を扇いだら、そりゃ火力が増すわな。

そんな使い方があったとは、お兄様のアイデアには感心したよ。


「万が一魔物が襲ってきても、お兄様がいれば安心ですね」


『ははは、そうだな。これで俺もいつでも引退できるな。いい跡継ぎに恵まれて、うちの領も安泰だ』


それなら本当に引退して、私と一緒にクリス様の領地に住んでくれたらいいのになあー。

すぐには無理だけど、領主の仕事をしっかり引き継いで、お兄様に子どもが出来た後くらいなら可能性はあるかな?






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