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第152話 海老で大騒動


「やれやれ。ガブリエルが片付いたんなら、美人コンテストも中止でいいな」


クリス様が、甘い雰囲気を漂わせるガブリエルとオルランド様に辟易したようにコンテストの中止を口にした。


そういえばそうだ。

ガブリエルの婚約者探しが主な目的だったんだから、もうやる必要がなくなったもんね。


「そうですね。ちょっと面倒だなって思ってたのでよかったですね!」


「校長を説得するのも大変だし、体育祭に美人コンテストをやるのはやっぱり企画に無理があるよ」


なんなら体育祭自体中止でいいと思う!

代わりに修学旅行とか行きたいな!


「美人コンテストとは? 何の話だい?」


オルランド様の耳にも私たちの会話が聞こえたようだ。


「ええ、魔力が強い美人を決めるコンテストを開催しようかという案があったんです。ガブリエル様のーーむがっ」


突然私の口をふさぐのは誰っ!?

って、案の定ガブリエルかい!

まったく話の邪魔をしないでくれるかな!


「ガブリエル様の?」


ほら、オルランド様が話の続きを聞きたがってるから放してよ。


「私のっ、父が! 魔力の強い人材を確保したいと! そういう意味でのコンテストですから、力比べと言うべきでしょう。美人コンテストというのはいささか誤解があるようです」


え……、目的がガラッと変わってないか。

ガブリエルの婚約者候補を探すためのコンテストでしょ?


思わず非難がましい目でガブリエルを見ると、くわっと目を見開いて威圧するガブリエルの顔が間近にあった。

ちょ、怖い怖い!


なんなのよ!


「チェリーナが誤解していたようです。チェリーナ、ガルコス公爵の人材確保のためだそうだぞ」


クリス様は私とガブリエルをべりっと引き離すと、なだめるように私に言った。


「美人コンテストなど、そんなバカバカしいことをするわけがないだろう!」


「ははは、誤解でよかったよ。女性の外見を品定めするような催しは感心しないからね」


え……、そうなんですか。

オルランド様はこういうのは好きじゃないタイプだったんだ。


そういえばガブリエルの浮気しなさそうなところがいいって言ってたもんね。

それなのに、ガブリエルのための美人コンテストを開く予定だったなんて聞いたら、いい気持ちはしないか。


危ない危ない、悪気なく諍いの種を撒いてしまうところだった。


「はい、ちょっとした勘違いでした。それでは、みなさん! 張り切ってポルトの町へ出かけましょう!」





そして私たちは、お兄様とカレンデュラ、ジュリオとルイーザ、クリス様と私の6人で港へと繰り出すことになった。

ガブリエルとオルランド様は、2人きりになりたいとのガブリエルのたっての希望で私たちとは別で出かけて行ったからね……。


昼食も終わった中途半端な時間だから、まだ屋台が出てるかちょっと心配だったけど、まだ開いてる店が何軒かある。

もちろんお目当ては獲れたての海の幸!


「くださいなー!」


「おお、いらっしゃい」


とりあえず一番近い串焼きの店に声をかけてみる。


「焼きたてがいいのだけれど、今から焼いてもらえるかしら? 大きな海老がいいわ。それにホタテも。あとはお勧めの魚があればそれも」


「まだ火を落としちゃいねえから焼けることは焼けるがよ。どんくらい焼けばいいんだい?」


週1回はシーフードを食べたいよねえ。

滅多に来れないし、数か月分は確保しておきたい。


「多い方がいいわ。海老はあるだけ焼いてちょうだい。他は、そうねえ、30本ずつ? お兄様、足りますか?」


「そうだなあ、30本ずつじゃお土産用で終わりそうだな。自分達用にも少しほしいしね。倍は必要じゃないかな?」


うちはお父様がたくさん食べるしね。


「いやいや、30本ずつって。この時間にそんなに残っちゃいねえよ。ちょっと待ってな。 ーーおおい! こちらのお嬢さん方が海老を買ってくださるとよ! まだ海老がある店はどこだ?」


屋台のおじさんが大声で他の店に聞いてくれている。

その声に応えて、あちこちの店から返事があった。


「少しならあるぜ!」

「うちも少しなら」

「俺んとこは5尾残ってるぜ」


え……、どこも少ししかないんだ……。

残念……。


おじさんたちが焼きあがった串焼きを持ち寄ってくれたけど……、いろんな種類の串焼きを集めても全部で30本ほどしかない。

なんてこった、私の海老が……。


「これだけなのね……」


「悪りいな。今日と明日は、いい海老は買い占められてて、海老自体が品薄なんだよ」


おじさんが悪いわけでもないのに、しょんぼりしている私を見かねて謝ってくれている。


「えっ、買い占め!? そんな、酷いわ! せっかく王都からはるばるやって来たのに!」


いったい、どこのどいつが買い占めなんて!


「なんでも、伯爵様の大事なお客様が海老が大層お好きだそうでよ。そのお客様がいらっしゃる時は毎回品薄になるんだ」


え……、もしかしなくても、それって私のこと!?

ひええ、私、毎回そんな迷惑かけてたの?


「あ、あら……」


「チェリーナ、海老ならきっと夕食にも出るわ。私たち家族はいつでも食べられるから、私たちの分をお土産用に用意させるわ」


それは……。

せっかくのルイーザの提案だけど、いくらなんでも人の分を横取りしてお土産に寄越せなんて、そんな要求は出来ないよ……。


「そんな事をしていただくわけにはいかないわ……」


「伯爵様のお客様っていうのはお嬢さん方のことだったのかい? 伯爵家でも食べて、外でもまた食べるなんてよっぽど好きなんだな。そんなら、まだ戻ってきてない船もあるから、もう少し待ってみちゃどうだい? もしかしたら海老が獲れてるかもしれねえよ」


なるほどっ、海老がないなら獲って来ればいいじゃない!

目の前に海があるんだから、シャッと行ってシャッと帰ってくればいい。


「私、ちょっと海老を獲りに行ってきます!」


「はっ!? 馬鹿なことを言うなよ。お前、海老なんか獲ったことないだろ」


クリス様が驚いて目を剥いている。


そんなに驚かなくても。

すぐそこの海で、獲り放題だよ?


「私にはトアミンがありますから! トアミンはもともと魚を取るための網ですし」


たくさん獲れるように大きな網を出せば簡単に取れると思うな。


「チェリーナ、いくらなんでも1人で漁に出るなんて危険すぎるよ」


漁って?

船でってこと?

いや、船にはのりませんよ、お兄様。


「船じゃなくてトブーンでちょっと行って獲ってくるんですよ。お兄様、操縦をお願いします。私はトアミンでたくさん海老を獲りますね!」


「えぇ……、チェリーナ本気なの……?」


「海老のためですよ、お兄様! 力を合わせてがんばりましょう!」


獲れたての新鮮な海老を焼いてもらって、いっぱいお土産を持って帰りたい。

たくさん獲れたらうちの騎士たちにも食べさせたいな!


そうだ、魔法でお醤油を出して、串焼きにバター醤油を塗ってもらってもおいしそう。


「仕方がないなあ。少しだけだよ。無理そうならすぐに戻ってくるからね」


「はい! トアミンならあっという間に大漁間違いなしです!」


ん?

心なしか、周りのみんながドン引きしている気がするけど……、どうしたのかな?


屋台のおじさん達まで気は確かなのかと言いたげな顔をしている。

みんな、トアミンの実力を知らないね?


まあ、みんな楽しみに待っててよ!

そして、私とお兄様はみんなに見送られてトブーンに乗り込むと、さっそく沖の方へ向かった。


「お兄様、海老はどこにいるんでしょうね?」


「えっ!? チェリーナが知ってるんじゃないの? 知らないのにあんなに自信満々だったのか……」


海にいることは知ってるけど……。

海老ってその辺を泳いでるのかな?


「ーーポチッとな! とりあえず、トアミンを投げ込んでみますね」


「うん……」


お兄様、元気を出してください。

さて、トアミンを落とさないように、ロープの端を手にぐるぐる巻きつけてと。


「そぉーれ!」


うんうん、綺麗に広がった。

何がかかるかなー。


「……う? うわあっ、お兄様っ!」


トアミンを投げ込んだ途端に、グンッと急激な力が加わった。


海の方にものすごい力で引っ張られてるよ!

どうしよう、引きずり込まれる!






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