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第148話 旅の再開


戻る時はそれほど時間がかからず、すぐに木々の間に街道が見えて来た。


ガブリエルが道の真ん中で、誰かに向かって大きく手を振っている。

どうやら迎えの騎士たちに合図を送っているようだ。


ドドドドドドドド!


小さく聞こえていた馬の蹄の音が、だんだん大きくなってくる。


「どうどう!」


おお、グッドタイミング!

こんなにギリギリだったとは、思っていたより長くおしゃべりしていたのかもしれない。


「やあ、ご苦労様」


「オルランド様、ご一緒だったのですか!」


顔見知りだったらしい騎士が、オルランド様に声をかけられ驚きに目を見開いている。


「私が盗賊を追っているところを、魔法学院の後輩たちが偶然通りかかってね。いろいろ手助けしてくれたのだ。おかげで盗賊は捕えることができたし、被害者も無事に救出できたよ。この先の道端の木に盗賊を縛り付けてきたから、誰か回収しに行ってくれ。賊は3名だ」


「はっ! ーーおい、お前たち5人で向かえ!」


頷いた騎士は、すぐさま後ろにいた部下らしい騎士たちに指示を出した。


「馬車は後から来るのか?」


「はっ、もう間もなく着くでしょう」


「そうか。実は、調べてほしいことがあるのだーー」


オルランド様は、話を聞くために馬から下りた騎士に近づくと、殺人未遂事件についての考察をかいつまんで伝えた。

騎士は真剣な顔で頷き、街に戻り次第捜査を開始すると約束している。


そうこうしているうちに、アディ一家を乗せる馬車も到着した。


「それから、私の馬も一緒に連れ帰ってくれないか。今日は後輩達と親交を深めて、明日家に帰るよ。父に伝えておいてくれ」


「えっ、外泊なさるのですか!? それは、急なお話で」


オルランド様が実はお嬢様だということは、騎士たちはみんな知ってるもんね。

そりゃ箱入りのお嬢様が急に外泊するなんて言い出したら、うろたえるのも無理はない。


「大丈夫だ。みな私よりも身分の高いやんごとないお方ばかりだからな、心配は無用だよ」


「はあ……」


おっと、こうしちゃいられない!


最後に、アディに何かおみやげをあげないと。

頑張ったご褒美だよ。


「アディ! 頑張ったあなたにおいしいお菓子をあげましょう。これは、いちごのロールケーキと言う食べ物よ。今日中……、は、ちょっと食べきれないかしら。あまり日持ちしないのだけれど、明日くらいまでなら食べられるわ。はい、どうぞ! お父さん、お母さんと一緒に食べてね」


私はアイテム袋からいちごのロールケーキの箱を取り出し、パカッとふたをあけて中身を見せてあげた。


「わあっ、おいしそう! おねえちゃん、ありがとう!」


「いいのよ! それから、ディノさんとアニタさんには、念のためにもう1つずつ回復薬を渡しておくわね。もし不調を感じるようならこれを舐めて。体に貼った治癒薬は、今日は一日そのままにして、明日様子を見て治っていたら剥がしてもいいわ」


私はそう言いながら、アディの両親にキャンディタイプの回復薬を一粒ずつ手渡した。

ちなみに個包装にしてあるので、いま必要なければ何かのときのために取っておいてもOKです。


「まあっ、本当に何から何まで……、なんとお礼を申し上げればよいのか」


「これほどまでにご親切にしていただき、この御恩は決して忘れません。ぜひとも皆さま方のお名前をお聞かせいただけないでしょうか?」


いやあ、これ以上話が長くなっても困るし。

私たち、先を急ぐんですよね。


「あら、私たちはただの通りすがりよ。アディがあなたたちの危機を私たちに知らせたの。頑張ったアディを褒めてあげてね。とても勇敢だったのよ」


「おお、お嬢様……! なんというお方だ、あなたはまるで聖女様のようだ!」


「聖女様……!」


なぜかアディの両親は両手を組んで祈り始めた。


いやだな、聖女だなんて、そんな風評被害を受けそうなこと言わないで……。

ほらあ、オルランド様のところの騎士がすごい見てる!


これは早く退散しなければ。


「騎士さん達、早く怪我人を街へ連れて行ってあげてください。それから、捜査の方もよろしくお願いしますね!」


さあさあ、帰った帰ったー!


「はっ。それでは、これにて失礼致します」


そして迎えの一行は、2人の騎士を先頭に、馬車を囲むようにして漸く街へと戻っていった。





「ふう、一件落着ですね! じゃあ私たちも行きましょうか」


「うん。きっとカレンたちが待ちくたびれているよ」


トブーンに乗るなら、オルランド様の分も結界のマントが必要だな。

私は新作の結界のマントを魔法で出すと、オルランド様に手渡した。


「これをどうぞ! これは結界のマントと言って、攻撃から守ってくれるマントなんです。それに、きちんと着込めば姿を見えないようにできますし、温度調節機能もあるんですよ」


「やあ、これは可愛らしいね。ガルコス君が着ているのと同じ柄だ」


そう言われてハッとしたガブリエルは、遅まきながら自分の結界のマントが背中で裏返しになっていることに気付いたようだった。

結構長いことピンクのハート柄が見えてたのに、今頃気付くなんてどんかーん。


「くそっ! 何が裏地だよ、思いっきり表に出てたら裏地じゃないじゃないか!」


「このマントは、どちら側を表にしても着られる優れものなんですよ!」


リバーシブルなんです!

文句があるなら着なければいいのに、ブチブチブチブチ文句言ながらも結局着るんだから。


こういう口うるさくて面倒な男は、やっぱりオルランド様には相応しくないと思うな!


「はー……。なあ、チェレス」


「僕のマントは、ガブリエルには大きすぎるよ」


お兄様はガブリエルの言いたいことを見越し、先手を打って断りを入れる。


「クリス様」


「俺だってその柄はごめんだ。早い者勝ちなんだから諦めろ」


え……、クリス様までそんな風に思ってたの?

ちょっとひどくないですか?

ハート柄の可愛さがわからないなんて、どういうことなんだろう。


でも、考えてみれば、うちの領の騎士たちにはミスマッチすぎるかも……。

戦いの場で目立ちすぎるのもよくないし、それに、人の物を横取りしようとするガブリエルをこのまま放置するのもな……。


「ーーポチッとな! はい、これ! ガブリエル様、人のマントを奪おうとしないでください!」


私は仕方なく、迷彩柄の色を青系に変えた結界のマントをガブリエルに与えた。


「おっ? おおー! いいじゃないか。こんなのがあるなら最初から出せよな。俺の目の色にぴったりだ。これは中々いい」


かぁー!

この言い草!

ほんと、ガブリエルのために何かやってあげる気にならない。


これからは絶対何もやらないって、いま心に誓ったからね!





それから私たちは、通信機でカレンデュラに連絡を取り、人目に付かないように街外れで待ち合わせることにした。


8時には学院を出発したからお昼前には着くと思っていたのに、結構時間が経っちゃったなぁ。

もう既に10時半だし、いまから急いでも到着は午後1時くらいかな?


「あっ、あそこだわ! クリス様、カレンたちがいましたよ。おーい!」


ガブリエルがオルランド様と乗りたいと言って譲らないので、私はクリス様と一緒に、お兄様は1人でトブーンに乗っている。


私たちがそれぞれのトブーンを着地させると、先に待っていたカレンデュラたちが集まってきた。

カレンデュラたちの近くにトブーンがないところを見ると、どうやらトブーンはアイテム袋に仕舞って、徒歩でここまで移動してきたようだ。


「チェリーナ! 大丈夫だったの?」


「ええ、大丈夫よ! みんな、心配かけてごめんなさいね。こちらの方を紹介するわ」


私はオルランド様を紹介するため、張り切って大きく息を吸い込んだ。


「ジャルディーニ先輩!?」


あーっ、ジュリオ!

いま紹介しようとしてたのに、私が息を吸ってる間にフライングしないでよ!






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