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第135話 ミスコン構想


ガブリエルのあまりの無神経さに、私は口を尖らせた。


「別にガブリエル様に可愛いと思ってもらわなくてもいいですしっ!」


「そうだぞ! チェリーナ、俺は可愛いと思ってるからな?」


エヘ、クリス様ったら、こんなところで恥ずかしいです。


「馬鹿馬鹿しい。やはり婚約者など持ったら、そういう風に心にもないお世辞を言わなければならないじゃないか。面倒極まりないな」


心にもないお世辞だとぅ!?

クリス様は、心から私を可愛いと思ってますから!


本当に本心ですから!

……本心ですよね?


「別に他の男にチェリーナの可愛さを理解してもらわなくても結構だ!」


いいぞー、クリス様!

もっと言ってやれー!


「ーー僕たちの従兄妹に、チェリーナにそっくりな女の子がいるんだよね。マルティーナって言うんだけど、ジョアン侯爵家の令嬢で、年は12歳、そして火魔法が使える」


お兄様は突然、のほほんとした口調で脈絡のないことを言った。


「なに!?」


ガブリエルは、ブンッと音が鳴りそうな勢いで首を捻ってお兄様を見る。

え、なんでそんなに食いついたの?


「ティーナには婚約者がいるけどね。15歳になったらすぐに結婚する予定なんだ」


お兄様はニッコリといい笑顔で言い放った。


「……っ! なんだよ! じゃあなんで今その子の話を持ち出したんだ!」


「なにが? ガブリエルは婚約者なんて面倒極まりないんだろう?」


お兄様は憤慨するガブリエルを気にする風もなく、シレッと見返した。


「ぐぐぐ」


「本当はガブリエルも、思い思われる相手がほしいんだろう? 僕たちみたいにさ」


「……」


そうだったの……?


「ガブリエルは小さい頃のクリス様によく似てるよ、性格がね。クリス様も、小さい頃はよくチェリーナに意地悪なことを言っていたよ」


「……俺はもう17歳だぞ。子どもと一緒にするなよな」


精神的に10歳児と同じ17歳児か。

辛いな。


「もっと素直になって、好意を持っている女の子には優しくしないと」


なんか、ガブリエルが可哀想になってきた……。

よーし、ここはひとつ私がお膳立てしてあげよう!


「ガブリエル様! こうなったら学院でいい人を探しましょう。手っ取り早く、コンテスト形式で参加者を集めて、その中からこれはと思う人を探すのです。参加条件は、婚約者のいない美人で魔力の強い人。そしてコンテスト名は、ズバリ、”第1回ボロニア的美魔女コンテスト”です!」


「び、美魔女? なんだかしっくりこないな。他に言い様はないのか?」


美魔女はお気に召しませんか?

そのコンテスト名だと、参加者の年齢層が高そうだと看破されたかな?


「じゃあ、”ときめき!ボロキュア”もしくは、”魔法少女ボロか・ニアか”グランプリはどうでしょう?」


「お前、頭は大丈夫なのか……? 普通に”ボロニア魔法学院主催 第1回魔法少女グランプリ”とか、なんで付けられないんだ?」


そういうのが良かったの?

まったく、わがままなんだから。


「じゃあそれでいいです」


「……ところで、さっきの募集要項で触れていないようだったが、参加者に俺のことは言わなくていいのか?」


ん?

話が見えないけど、どういうことかな?


「え、ガブリエル様のことって?」


「え、付き合うんだろう? そのコンテストの優勝者と、俺が」


「え、なんで?」


はあ?

楽してもらっちゃ困るな。


「いったい何のためのコンテストなんだよ!」


ちょっと、いきなり怒らないでよ!


「だから、魔力が強い美人を集めるのが目的でしょ? もしそこで気に入った人が見つかったんなら、その後は自力で口説いて恋人になってもらうんですよ! 相手にも選ぶ権利はあるんですからね!」


まったく!

一から十まで言わないと分からないとは。


「お、お前ーーーーーッ!」


「なんですか? 別に嫌ならやらなくてもいいですけど。お父上に猛者を紹介してもらえばよろしいのでは?」


何が気に入らないのかわからないけど、そんなに怒られてまでやることないからね。

こっちは厚意で提案したのにさ。


「……」


「どうします?」


「……やってやってもいい」


やるのかよ!

本当に、こんなにわがままになるまで甘やかすなんて、ガルコス公爵はいったいどんな育て方したのかな!


「あはは、なんだか面白そうなことになってきたね?」


お兄様は高みの見物といった感じでのんきそうにしているけど、やるとなったらお兄様にも手伝ってもらいますから。


「しかしこれから夏休みまでの間に、体育祭と期末試験がありますよ。そう都合よくコンテストに参加する人が集まりますかね?」


はい、ファエロから現実的なご意見をいただきました……。

というか、体育祭はともかく、また試験があるの!?


入学直後に学力試験を受けたばかりなのに、もう次の試験があるなんて憂鬱すぎるな。


「なんだか大変そうですね……。じゃあやっぱり止めますか」


よく考えたら私忙しいし。

孤児院にも行かないと行けないしねぇ。

ガブリエルに構ってる暇なんてなかったわ。


「そのコンテストを、体育祭の種目の1つに組み込めばいいんじゃないか? 魔力の強さを競うということなら、体育祭の趣旨からも大きく外れてはいないしな。それに、婚約者がいない女生徒が誰なのか分かれば、まだ相手が見つからない男連中が喜ぶかもしれないぞ」


「それだ! そうしよう!」


クリス様の提案に、すかさずガブリエルが食いついた。

必死だな。


「そうですね、それはいいかもしれません」


まだ相手のいない人にとっては、ちょっとしたお見合いパーティの代わりにもなるしね。


「しかし、婚約者のいない美人で魔力の強い人、なんて条件で、自ら参加してくれる人がいるとは思えませんが」


確かにファエロの言うことももっともだ。

美人を条件にしてるのがよくないな。

うぬぼれてるみたいで自分から出ますって言い出しにくいもん。


「じゃあ、美人を条件にするのは止めましょうか? それとも、またベンベンのご利用券を優勝者への賞品にして、参加者を募集しますか?」


前回、わりと好評だったみたいだし。


「ベンベンのご利用券をッ!?」

「女性限定のコンテストだなんて不公平だ!」

「俺も出たい!」


あの……、ガブリエルはなんで自分が参加する気なのかな?


「ご利用券は封印だな。それを賞品にしたら男子生徒からの苦情が殺到しそうだ。女性なら甘いものを賞品にすればいいんじゃないか? いちごのロールケーキは最高に美味い」


「……いちごのロールケーキッ! そうだ、パーティは終わったぞ!」


ああ……、クリス様。

悪気なく、ガブリエルにいちごのロールケーキの存在を思い出させてくれちゃいましたね……。


でも、確かにスイーツが賞品というのはいい案かもしれない。

単品よりも、女の人にはいろいろ入った詰め合わせの方が喜ばれそうだな。


「そうですね、賞品は甘いものにしましょう! そして、美人を条件にするのはナシです!」


「俺はブスなんてお断りだからな!」


はー、めんどくさい。


「参加条件は、魔力が強くて婚約者がいない人です。コンテスト名は、”第1回魔法美少女グランプリ”にします! わざわざ条件にしなくても、コンテスト名に”美少女”と入れておけば、参加希望者も察してくれますよ、たぶん」


「……なるほど。まあいいだろう」


偉そうに!


「念のためにもう一度言いますけど、優勝者をガブリエル様に献上するためのコンテストじゃありませんからね!? 他の男子生徒からも注目されて競争率が高くなるかもしれませんが、がんばって自力でお付き合いを申し込んでください!」


「えぇー……、もっとこう、なんかないのかよ!? 例えば、優勝者と俺が一緒にいちごのロールケーキを食べる企画とか」


自分が賞品の一部になりえるとでも!?

まったくずうずうしいな!

ハリウッドの大スターかよ!






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