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第12話 ゲームの登場人物たち


翌朝、私たち一家はカレンデュラとフィオーレ伯爵家の騎士たちの見送りに出ていた。


「プリマヴェーラ辺境伯様、この度は危ないところをお助けいただき、本当にありがとうございました。」


脇に馬を従えたフィオーレ伯爵家の筆頭騎士マキシマスは、馬に乗る前に改めて礼を言った。


「いや、カレンデュラは私の娘も同然だ。礼にはおよばない」


「チェーザレおじさま、ありがとうございました。チェレス様もありがとうございます。助けにきてくださって、うれしかったです」


「うん。カレンのことは、いつでも僕が助けるからね!」


お兄様はカレンデュラを自分の手で助けられたことが、ことのほか嬉しそうだった。

馬車の中へとカレンデュラをエスコートして、窓から顔を出すカレンデュラにひらひらと手を振っている。


大怪我をしていた護衛騎士たちも、一晩経つと驚くほど回復して、プリマヴェーラ家から借りた馬車で皆と一緒に帰れることになった。

手土産代わりに大箱入りのチョコレートと、治癒効果付きのラップも持たせたよ!


フィオーレ伯爵家の一行は、見送る人々に丁重に礼を言うと、プリマヴェーラ家の屋敷を後にした。




はー、やれやれ。

やっと落ち着いたことだし、ゲームの展開をちゃんと思い出さないとな。

危険があるなら避けて通らないといけないからね。


ええと。

主要登場人物は、ヒロインのラヴィエータ・エベラ。

金髪にヘーゼルの目。

この子はエベラ男爵の庶子で、平民だった生みの母が死んでしまったことで14歳の時に男爵家に引き取られることになる。

確か、希少な光魔法の使い手で、聖女ともてはやされるんだった。


そして、5人の攻略対象。

みんな外見は眩しさで目がつぶれそうになるくらいのイケメンなんだけど、心に傷を抱えてるんだよね。


チェレスティーノ・プリマヴェーラはフォルトゥーナ王国の守りの要、プリマヴェーラ辺境伯の長男。

赤毛に青い目。

チェレスティーノには幼い頃に盗賊に殺されてしまった婚約者がいた。

そして、婚約者を失った悲しみが癒える間もなく、今度は魔物に母親を殺されてしまったことで、元々は朗らかだった性格が一変してしまうのだ。


ジュリオ・ベルティーニは騎士団長であるベルティーニ伯爵の次男。

亜麻色の髪に緑色の目。

幼い頃からの婚約者兼幼馴染が原因で、女性不信になってしまった。

ジュリオの方は愛し合っていると思っていたのに、お金持ちの相手に鞍替えされてしまうのだ。


ファエロ・バルトラは宰相であるバルトラ侯爵の長男。

金褐色の髪に金色の目。

実の母は幼い頃に死んでしまい、継母と継母の連れ子である義理の弟に継嫡の座を奪われそうになっているのに、父親は仕事にかまけて彼を放置している。

何者かに命を狙われることもしばしばあり、ファエロは継母の仕業ではと疑っているのだ。


ガブリエル・ガルコスは王宮魔術師長であるガルコス公爵の長男。

黒髪に深い海のような濃い青い目。

魔法学研究が好き過ぎて女に興味なし。

そういえば、ガブリエルだけはトラウマ持ちじゃなかったな。


最後は、第三王子のクリスティアーノ・ディ・フォルトゥーナ。

白金の髪に紫の目。

クリスティアーノは第三王子ではあるが正妃の子で、側妃の子である第一王子、第二王子との間に王位継承争いが起こるのだ。


両親ともクリスティアーノへの関心が薄く、愛情不足のせいでクリスティアーノはひねくれた性格になってしまった。

正妃が嫁ぐ前から側妃との間に子どもがおり、政略結婚だった両親の仲は冷え切っていたのだ。


そしてクリスティアーノには、ベールの魔女と恐れられる婚約者がいる。

顔に消えない傷を負わせてしまい、責任を取って婚約させられているのだ。


ゲームが始まるのは、ヒロインが15歳になって魔法学院に入学するときから。

攻略対象たちは2歳年上の17歳だった。





クリス様、責任とって婚約させられるのかあ。

でもさあ、一応私と婚約してることになってるのに、他の人とも婚約するのかな?

ゲームでは何人も婚約者がいる設定ではなかったと思う。


…………えっと、まさかとは思うけど、ベールの魔女って私のことじゃないよね!?


ゲームの中の私は病気の痕が残っちゃって、隠すためにベールをかぶってる設定とか。

それでベールの魔女呼ばわりされてる?


えっ、ちょっとかわいそう過ぎない!?


ベールの魔女ってどのルートにも必ず現れる悪役令嬢だったよね。

立ちふさがるベールの魔女を倒さないと、どの攻略対象とも結ばれなかったような……。

悪役令嬢は、良くて幽閉、悪ければ攻略対象者たちに殺されることになる筈。


ええー、何で私が殺されないといけないの?

人の恋愛なんか超どうでもいいし、立ちふさがりませんけど。

私抜きで勝手にくっ付けばいいことだよね。


というか、お兄様が私を殺す……!?

あのお兄様がそんなことをするなんてとても信じられない。


ーーやっぱりゲームの世界に似てるって思ったのって気のせいだったんじゃないかな。


カレンデュラも生きてるし、お兄様が私を殺すわけないもん。

そうだよ、同じ名前の人くらいいるって。

鈴木一郎が何人日本にいると思ってるの、っていう話よね。

たまたま名前がかぶってる人が2人いただけじゃん。


それによく考えたら、お兄様は金髪だけど、ゲームのチェレスティーノは赤毛だったわ。


なーんだ、悩んで損しちゃった!

私はいままで通り、のんきに暮らせばいいね。


よかったあー。

次はどんなものを魔法で出そうか考えようっと。

ふんふんふん~。




みんなでぞろぞろと屋敷の中へ戻る途中、お父様がクリス様に声をかけた。


「クリスティアーノ殿下、今朝我が家の鷹が王都より戻りまして、陛下からお返事が届きました。少し居間でお話をさせていただけますでしょうか? チェリーナとの婚約の話です」


「父上はなんと?」


クリス様は居間に移動するまで待てないのか、この場で内容を聞きたがった。


「はい。陛下はーー」


お父様は苦虫をかみつぶしたような顔をしている。


「ーークリスティアーノ殿下の望み通りにしてよいと……」


「そうか!」


クリス様はパアッと顔をほころばせた。


「し、しかし! 恐れながら申し上げます。私の娘にはとても王子妃殿下のお役目は務まりません。何しろこのような辺境でのびのび育った娘ですから、王宮の常識はおろか、貴族としての常識すら覚束ない有様でして……」


むう。

お父様、ちょーっと自分の娘を過小評価し過ぎじゃないですか?

私だってやればできる子なんだからね!

ただちょっと、めったにやる気が起きないだけなんです!


「チェリーナがどんな娘かは説明されなくてもわかっている」


「そうですか、わかっていただけましたか! いや、実のところ、遠くに嫁に出すのは心配なので、チェリーナは幼馴染の商会の息子たちのどちらかに嫁がせようと思っていたのですよ、はっはっは!」


クリス様は憮然とした表情で腕を組むと、お父様に食ってかかった。


「誰が婚約しないと言った! 婚約する気は変わらないぞ、チェリーナがどんなに非常識な娘でもだ!」





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