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不思議なパン  作者: TKSZ
9/258

9 数馬渓谷

自宅で冷蔵庫に入っていたクルミパンを荷物に加える。

時間はまだ午前7時だ。

鑑定、できないよな。

鑑定実行。

何も起こらない。

パンを一口食べて再び。

何も起こらなかったけど、少し違う感覚が。。。


急いで南大沢の駅へ。

橋本・八王子・青梅で乗り換え奥多摩駅へ。

駅前から多摩川の方へ向かい、橋を渡って多摩川の南岸を奥多摩中学の前の道を海澤へ。

白丸からのほうが近かったかかなと思うが、このコースのほうが目印もよくわかる。

夏になればイワタバコの花も楽しめるこのコースは気持ちがいい。

鳩ノ巣までが好きなコースだ。

数馬という地名は秋川の方にもあるけど、氷川は奥多摩駅周辺の地名だからこちらで間違いないだろう。

トンネルを出て少し行くと広場に出た。

こんなところに広場がないぞ!

そこに白いシカ、ロク様がいた。

『無事に着かれたようですね。やはり鉱山で事故が発生して多くの怪我人が出ています。ドワーフの治癒士が対処していますがもともとドワーフは治癒士には向いていません。そしてまだ10名ほどが中に閉じ込められています』

『私は何をすればよいのかな』

『治療もお願いしたいのですが、防御魔法で救助をしてもらえないでしょうかタカシ様の結界は障壁はかなり強力なものです』

『治療は後回しで大丈夫なの』

『怪我人には「治癒のパン」を使わせてください』


鉱山の入り口に着いた。

事務所・休憩所・作業場のような建物と救助のためのテントがある。

一人のドワーフにしては大柄な男が近づいてきた。


「タカシ様だな、村長から聞いている。よく来てくれた。俺はハクラ。この鉱山の責任者だ。不審な人物が坑道に仕掛けをしていった。その人物には坑道の崩落の騒ぎの中で逃げられた。救助と治療の手伝いをお願いできるのか?」

「はい、ところで村長さんは私のことを知っているのですか?」

「村長はこの村の巫女で治癒士、神託があったらしい。向こうにいる」


ハクラはテントの方を指さした。

そこには小柄な女性、いや少女が一生懸命に治癒魔法を施している。


「村長さんですか」


疲れた顔をした少女はこちらを向くと安堵した表情になった。


「タカシさんですね。ありがとうございます。村長のルンです」

「はい、早速ですが怪我人は何人いますか?」

「38名です。私の治療も限界です。よろしくお願いします」

昨日から持っていたチョコレート入りのパンを40切れにした。

人数が多いから小さくなるのは仕方がない。

冷蔵庫に入っていたクルミパンは閉じ込められている人たちのために必要だ。

一切れを自分の口に入れた。

これで12時間ぐらい魔法が使えるはずだ。

一切れをルン様に食べてもらう。


「すごい。魔力が回復しました。これで治療ができます」

「待ってください。治療にはこのパンを使ってください。一切れ与えればかなり治ります。うまく飲み込めない人には水に溶いて与えてください。それでも回復が足りない人には回復魔法を使ってください。パンを食べられない、液体を飲めないような意識を失っている人はいますか?」

「大丈夫です。治療は私が行います。救助の方をお願いします」


ロク様と坑道の方に向かう。

救助方法はこうだ。

結界をロク様とともに坑道に施し、崩落部分の岩も障壁で排除し、救助のための通路を創るというものだ。

2次災害の恐れがあるので崩落部分まで近づけなかった。

結界と障壁で救助の安全を図る。

慎重に障壁を併用した結界を張りながら前に進む。

徐々に結界と障壁のコントロールができるようになってきた。

うまく構造を考え、強度も上げられるようになった。

さらに結界内の空気の流れもコントロールできた。

坑道内に新しい空気を入れられる。

粉塵をも抑えられる。

100mぐらい進んだところに崩落場所があった。

一緒についてきたハクラさんが声をかける。

怪我人がいるが、生きている。

ここからが問題だ。障壁で三角形の通路を作りながら岩を除いていく。

高度な掘削魔法や変形魔法ができる魔術師は王都にはいるらしい。

それができないから主に手作業だ。

そして1時間後向こう側に繋がった。

直ちに救助。

重傷者には優先的に「治癒のパン」を与える。

全員が脱出してして任務終了。


結界を解除したため、坑道の入り口は安全が確認できるまで閉鎖することになった。

崩壊の危険性の有無、崩壊の危険性があれば対策の立案と施工。

王都や他領の領都から鉱山の坑道工事に適した魔法を使える魔術師を呼ばなくてはならない。

様々な鉱石を産出する鉱山の閉鎖はヒカワ村にとって痛手だが仕方がないことだ。

安全が最優先である。

村人たちの話では最近、他領の貴族が様々なちょっかいを出してきているということだ。

ヒカワ村は自治領だ。

村が了承すれば飛び地といえ特定の貴族の傘下に入ることができる。

鉱山を支配下に置こうとしているようだ。

ヤリミズ村やカタクラ村とも似た状況なのか?

今回の事故もこのような貴族がかかわっている可能性が高そうだ。

鉱山再建の援助を餌にこの自治領を傘下に置こうという魂胆なのか?

そう考えれば鉱山の機能停止工作が納得できる。

鉱山で働くヒカワ村の住民の安全を無視した破壊工作に憤りを感じる。


怪我人の治療も終わり、鉱山入り口の処理もできたので村人たちと村へ向かう。

タカシが最後に治療をしたため、全員が完治した状態になった。

むしろ事故にあう前よりも良い状態になっている。

村には様々な工房があり、商人も買い付けに来るので宿屋や商店・酒場などもありにぎわっている。

工房では山の幸(果物や薬草や山野草・獣の肉や革などの素材)や鉱山からの鉱石を材料に食品から日用品・薬や武器など様々なものが作られている。

村長の敷地には客を迎えられるように離れがある。

タカシはロク様とそこにお世話になることとなった。


遅い昼食を村長宅の食堂でいただいている。

村長や村の幹部・鉱山の責任者ハクラさんなども一緒である。

食事が終わって、今回の援助に対する報酬という話になった。

村も鉱山が閉鎖されて大変な時期だから遠慮しようとしたがそういうわけにもいかないのだとか。

村長のルン様が口を開いた。


「タカシ様、ロク様。今回は本当にありがとうございました。けが人も完治し、犠牲者もいなかったのはすべてタカシ様とロク様のおかげです」

「いや、できる範囲でお手伝いをしただけですよ。村はこれからが大変ですね」

「はいできるだけ早く復旧させたいのですが。そこで今回の報酬の提案と鉱山を再開のお手伝いをお願いしたいのですが」

「わかりました。お聞きしましょう」

「貴重な『治癒のパン』を提供して治療していただきましたので報酬として金貨100枚をお支払いしたいと思います。また救助をしていだだいたお礼に村に伝わる錬金錬成の腕輪をお贈りしたいと思います。この村の宝です」

「そのような大事なものを受け取ることはできませんよ」

「実はこの腕輪はもう長い間使える者がいませんでした。腕輪の適合者がいないのです。タカシ様が村に着いてから腕輪が光を発するようになったのです。この腕輪は適合者が近づくと光るといわれています。様々な錬金と錬成の魔法が使えるようになる腕輪です。今は廃れてしまった古い時代の高度な魔法も使えるということです。鍛冶魔法・製薬魔法・建築魔法・モノづくりに関する製造魔法、そしてもう一つ鉱山魔法という鉱山の掘削や管理もできる魔法も使えるということです」

「つまり、この腕輪を受け取る代わりに鉱山再開に協力をしてほしいということですね」

「はい、厚かましいお願いであるのはわかっております。ですが是非お願いします。村人には使える者がありません。腕輪と指南書をお渡しします。実は私たちには理解できない記述もあるのですがタカシ様ならお分かりになるのではないかと気がします」

『ロク様、もらっていいものなのかな?』

『はい、タカシ様が持つべき腕輪だと思います。おそらく様々な魔道具を作れる魔法も使えるようになるでしょう』

「わかりました。使えるかどうか試してみましょう」

「ありがとうございます。実は一つお伝えしなくてはならないことがあります。貴族の介入のことをお話ししたと思いますが、ある貴族がどうやらその腕輪に興味を持っているようです。適合者でなければ意味を持たないのに」

「ちょっと気になりますね」

「村には王国の衛士も駐在していますから大丈夫だと思います」


腕輪と指南書と金貨を受け取った。

与えられた客間に戻り、指南書を見ながら腕輪が使えるか試してみることにする。

1時間ぐらいして鉱山に行って試してみることになった。

腕輪は受け取るまでは光っていたが右腕に装着すると一瞬輝きを増したが、すぐに普通の腕輪に戻った。

鑑定をする。

今まで脳内に伝わってきた鑑定結果が視覚の中に表示されるようになった。


錬金と錬成の腕輪

錬金魔法

錬成魔法

鍛冶魔法

製薬魔法

(変形魔法)

(製造魔法)

(建築魔法)

(創作魔法付与)

鉱山魔法

(料理魔法)

(耕作魔法)

(畜産魔法)

(漁業魔法)

(狩猟魔法)

(化学魔法)

(分離魔法)

(合成魔法)

収納

所有者から20m離れると所有者の手元に戻ってくる

錬金魔法・錬成魔法・鍛冶魔法・製薬魔法・鉱山魔法・収納以外は隠蔽

装着者 タカシ

所有者 タカシ


攻撃とかとは関係なさそうな魔法の腕輪だ。

隠蔽されているものは鑑定能力が高くないと見分けられない。

指南書は現代科学の知識がないと読みこなせないものだった。

指南書を読みこなさないと適合者にはなれないと書いてある。

確かに適合者が出てこないはずだ。

時間がないので鉱山魔法の概略を理解し、使えるようにする。

鉱山と坑道の状況を把握する魔法・坑道を補修する魔法・坑道内に安全な場所を作るための魔法・採掘をするための魔法・坑道内の換気をする魔法・鉱石や岩石を運搬する魔法・鉱物を鑑定選別する魔法。

ロク様とこの後どうするか話し合い、ハクラさんたち村人と鉱山に向かうことになった。

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