3 ヤリミズ村とミオ
ヤリミズ村は人口300人ぐらいの村。
数人の人族以外はエルフが住む村。
そして神木がある聖なる場所。
森の恵みと畑からの作物と飼育している鳥の卵と肉で生計を立てている。
森からは蜂蜜・樹液・香草・木の実・ウサギ・チキンと呼ばれる鳥が得られる。
チキンは村でも飼育しており、その卵と肉は王都や周辺各地に出荷されている。
王都チヨダまでまで馬車で4時間、街道で行くとハマやサキを通るか、カタクラ・コガネイを通るルートがある。
人しか通れない直線ルートを通ると歩きでも5時間ぐらいでたどり着くことができる。
ナリタはさらに歩きで7時間ぐらいかかるが、ミオはナリタから王都を通らないより時間の短縮できるルートでヤリミズ村まで来たらしい。
ミオさんはこの国のお姫様でこの国最高の治癒士。
普段はタカオというリゾート地の別荘に滞在し、身分を隠して土地の社の巫女を務めながら治療院で治療をしている。月に3日ぐらい王都でも治療を行っているのだが、今回ナリタで病人が30人もでて他の治療師では対処できなかった。王都から急遽ナリタに赴き治療を終えたところに神木の地ヤリミズ村で重病人が出会たということでナリタから急いで訪れたわけだ。
この後はタカオに帰るということだ。
村長に南大沢と多摩境という土地がないか尋ねてみたがわからないということ。
サカイ川は峠を越えて下ったところにあるということ。
王都側に少し離れたところに大きな沢があるそうだ。
歩く道しかない。
南大沢の自宅に帰る方法がない。
困った。
ミオさんが内緒の話があるとのことで村長には席を外してもらった。
客間に二人だけしてもらい結界というものを張った。
これで声が外に漏れないのだそうだ。
「竹早様」
「できたらタカシと呼んでもらった方がいいのですが。それから”様”はつけないでください」
「ではタカシさん」
「はい」
「タカシさんはこの世界の住民ではありませんね」
「え」
「見たことのないような服装、見たことのないようなカバン。見たことのないような水筒。そして『回復のパン』。私の鑑定能力はこの国で最高のものです。その私でさえ鑑定ができないあなたの力は神か『異邦人』しか感がられません。聞いたお話だと『異邦人』でしょう。私も初めてみましたが」
「『異邦人』はよくいるのでしょうか」
「いいえ、かなり昔に数回いたことがあるということです。あくまでも王家に伝わるお話です。おそらく村長も知りません」
これでは帰る方法はわからないな。
「タカシさん、帰るところがわからないなら、私の別荘においでください。お調べするお手伝いができると思います。いかがでしょうか」
「ご迷惑ではないでしょうか?」
「ご心配なく。むしろあなたのような方をそのままにしてはいろいろ困ったことになりそうですから」
「わかりました。では今日は村長のところに1泊して明日タカオに向かいたいと思います」
ミオさんと病人の様子を見て回った。
チキンを飼っているところも見せてもらった。
ほとんどニワトリだ。
柵の中に放し飼い。
念のために住民やミオさんとともにミオさんと出会った場所へ行った。
さらに村と反対方向に10分ほど歩いたが、帰還方法の収穫はない。
森の様子はいつもとかわらないとのことだ。
ま、ゆっくり考えよう。
これって神隠しということになるのかな。
神ね・・・
神木でも見に行くか。
何かヒントがあるかもしれない。
神木は村の中心にある直径3mぐらい、高さ15mぐらいのクスのような木だ。
神木の前には小さな祠が。
神木の周囲を歩く。
デジカメで写真を撮りながら。
「それは何ですか」
「デジカメです。風景などを記録できます」
今撮った村の風景を見せる。
「すごいですね。私の姿も撮れますか」
ミオさんを撮影した。
喜んでくれた。
魂を抜かれるとか心配しないのかな?
ミオさんと1周したが何もない。
ミオさんは祠の前で祈りをささげている。
もう1周してみるか。
『帰りたいですか』
ミオさんも他の住民も見えたい地点に着いた時、突然話しかけられた。
頭の中に直接。
そしてもう一度。
『帰りたいですか』
『はい』
『明日、パンを作って片倉に行きなさい。ハムを挟んでおくといいですよ』
風景が急に変わった。
自宅のホームベーカリーの前に土足のまま立っていた、
帽子と麦茶の入ったペットボトルを置いてきた。
夢だったのか?
デジカメには写真が残っている。
村の風景も、ミオさんの姿も。
神木も。。。
神木の横に少女の姿がうっすらと写っていた。