26 賢者タカシ
謁見の様子は難しい
ぐっすり眠った。
今日は賢者のお披露目。
賢者の公爵叙爵。
賢者の婚約発表!
大変な一日だ。
朝早くに目が覚めてしまった。
忘れないうちに『魔法のパウンドケーキ』一口食べる。
そして自分を鑑定。
しっかり24時間の効果が出ている。
大丈夫だ。
落ち着け。
ネックレスはある。
左手のブレスレットも大丈夫。
右手の腕輪もある。
ミオさんからの指輪OK。
転移のための指輪も装着済み。
まだ6時半か。
少し散歩へ行くかな?
庭園辺りに。
今日は4月3日か。
桜もあと数日かな。
庭園に行くと桜吹雪が。。。
ちょっと風が強いようだ。
桜の花びらの吹き溜まりができている。
池の水面に花びらがピンクの模様を描いている。
見ごろはもうあんまり長くないか。
「おはようございます」
後ろから声がかかった。
リサさんだ。
「本日はよろしくお願いします」
「こちらこそ」
昨日、正式に各公爵家と王家に婚約を認めていただいている。
「まさか、リサさんと結婚することになるとは思っていなかったよ」
「そう?私も両親も私が小学校に入る前からその予定だったけど」
「いや、それはないでしょう」
「もう我が家では決定事項。だから父も隆司さんを支えてきたのよ。知っているでしょ」
「はい、お父さんには感謝しています」
陰でいつも支えてくれた。
自分の息子のようにかわいがってくれた。
「それから地球でもちゃんと結婚してね。よろしく」
「はい、地球とアスカを行き来しているのに片方だけとはいきませんからね」
「当然ね。我が社リサタカプロジェクト特別事業部を作ったのも貴方のためよ」
「感謝しています」
「まずは今日がんばりましょう」
リサさんと桜を楽しみながら歩いていると後方から声をかけられた。
「お嬢様、隆司様。王宮で朝食会の用意ができました」
聞き覚えのある声に振り返ると、
「ええーーーー」
そこにいたのはリサタカプロジェクト特別事業部 部長秘書の佐藤セルさんだった。
「佐藤さんが何で」
「話していなかったわね。彼女もこちらの生まれよ。生まれてすぐに日本に出生届を出して戸籍を作ったの」
「まさか他の人も?」
「ほかの人達はみんな日本人。昔から鈴木家に仕えている家柄だけど」
「そうなのですか」
まったくびっくりだ。
佐藤さんに挨拶をして朝食会場へ。
朝食は和朝食。
ご飯がおいしい。
ミオさん、ルンさん、コンさんとも和やかに過ごした。
朝食後、王宮の使用人の皆さんの協力で礼服を着用して謁見の間へ。
国王拝謁の方法はミオさんに仕込まれている。
参列者はこの国の貴族と各国大使。
あ、カラン国ケルン第一王子もいる。
ドタ伯爵がこちらを苦々しく見ているよ。
あ、ドダ伯爵は男爵に降ろされたのだっけ。
国王陛下の入場の合図があり王族と各公爵家が入って来た。
「賢者タカシ=タケハヤ殿 前へ」
国王陛下の前へ進む。
「タカシ=タケハヤ殿、面を上げてください」
「はい」
「ムサシノ王国を代表して賢者タカシ=タケハヤ殿が神より遣わされたことをうれしく思います」
「は、ありがたきお言葉」
「古よりのしきたりにより、賢者タカシ=タケハヤ殿を公爵に叙する。お受けいただけますな」
「ありがたき幸せ」
公爵を示す短剣とメダルが渡された。
「では公爵としてこちらにお並びください」
公爵とその家族は王と王族の横に並ぶことになっている。
「続いて国王陛下よりお言葉、そして発表があります」
「国王として賢者がこの地に遣わされたことを神に感謝し、嬉しく思う。これから賢者タカシ=タケハヤ殿が我々とすべての民衆のために力を尽くしてくれることを期待する。よろしくお願いします」
国王陛下は私の方を向き、頭を下げた。
「次に発表だが、カタクラ村・タカオ町・ヒカワ村から自治領の地位を持ちながらタケハヤ公爵家の下に入りたいとの申し出があった。自治領に対する介入には目に余るものがある。これらの自治領をタケハヤ公爵家が庇護してもらいたいということである。王宮はこれを認め、これらの地域をタケハヤ公爵家の半自治領とする。また周辺の王家直轄領をタケハヤ公爵領とすることも決まった」
ざわめきが上がった。
これらの領地を狙っていた貴族たちだ。
「静かに」
「もう一つ、ここでタカシ=タケハヤ殿とミオ=ムサシノ、リサ=ナリタ、ルン=ヒカワ、コン=カタクラの4人との婚約を発表する」
まだ婚約のことを知らない貴族は大騒ぎになった。
地球での婚約者はリサさんです




