234、陽動(1)
飛行船でソウマ国の王都上空に到着した。
着陸場所がないので飛行船は上空に待機させて転移で外壁の門の前に下りた。
通信の魔法道具で連絡をしたお陰でコオリ公爵が門の前で待っていてくれた。
コオリ公爵とともに王宮に向かう。
ソウマ国国王陛下と会談をすることになった。
「賢者タカシ様。ありがとうございました。こんな形でご訪問いただくことになったのが残念です」
「領都開都式の時はありがとうございました。時間があるときにゆっくりと訪問させていただきたいと思います」
「ぜひよろしくお願いいたします。また飛行船をムサシノ王国やスルガ王国との間で運航させてください。その点もよろしくお願いいたします」
さらにソウマ国国王陛下と会談し今回の事について情報の交換をしているときに通信の魔法道具が振動した。
緊急のときの振動パターンなので国王陛下に断わってから出る。
内容はアバシ王国で杖が見つかって人間と魔物が操られているらしい。
よりによってこの世界で人間の住む領域の南の端にいるときに北の端で事件かよ。
予想通り陽動だった。
明らかに振り回されている。
これから今までに行ったことのない国がどんどん陽動に使われるのではないだろうか。
ソウマ国国王に事情を話してアバシ王国に向かうことにする。
こちらでも再び事件が起こることが考えられるので厳戒態勢を引いてもらうことにした。
また私が転移できる場所を確保することにした。
王宮の別邸のひとつを特別に貸し与えられた。
そこを転移場所として登録する。
そこで働く人たちにも私の顔を覚えた。
私は彼らの魔力パターンを覚えたけどね。
転移で飛行船に戻り、飛行船ごとアバシ王国上空に転移することにした。
飛行船前方の空中に転移のための門を作る。
飛行船が入って行ける大きさの巨大な門だ。
どちらかというと巨大な額縁のようだけど。
そしてアバシ王国上空にも同じような門を空中に作り、二つの門を空間接続で繋げる。
ソウマ国の王都の住民が空中にできた巨大の門に驚いて騒ぎになっている。
飛行船に関しては事前に連絡してあり興味深げに見られただけなのだけど。
「国王陛下に転移の方法を言うのを忘れた!」
「仕方ありません、早くいきましょう」
アバシ王国でも騒ぎになっているだろうな。
速度を上げてアバシ王国へ転移する。
そしてソウマ国とアバシ王国の転移門を消した。
問題の魔法道具の杖についてより詳細な情報を得るためにアバシ王国王都アバリにある以前作ってもらった空港に着陸した。
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