200、アバシ王国(9)
飛行船で出発。
「今のところ問題はありません」
「まもなく進路を北に向けるよ」
「はい、了解しました」
飛行船は現在、王都チヨダこのやナリタ公爵領の領都ナリタを過ぎさらに西に向かっている。
この先で北に向きを変え、今日はムサシノ王国シマハラ伯爵領内の町ムララに着陸して宿泊する。
この町を治めているムララ子爵が50m四方の土地を塀で囲い空港として用意してくれた。
この空港はムララ町の外の国軍基地の近くだ。
将来、王都チヨダと定期便ができればよいのだが。
本日の移動距離は1300km。
色々と改造した結果、飛行船の最高速度は時速180kmまで上げることができた。
現在巡航速度時速150kmで進んでいる。
高度は約500m。
朝7時に出発した飛行船は16時にはムララに着く予定だ。
現在の天気は晴れ。
弱い南の風。
現在の操縦はミドリさん。
隣にはソウさんがいる。
ソウさんも魔動馬車の操車を簡単にマスターしただけあってすぐに飛行船の操縦についてもできるようになったようだ。
魔動馬車の操車ができれば飛行船を飛ばすことはできる。
そのように作ってある。
問題は離着陸だがこれも半自動化したある。
ほぼ垂直離着陸が可能だ。
操縦は1時間ごとに交代しているよ。
私とミスルが組んで1時間、クレナイさんとトウさんが組んで1時間、そしてミドリさんとソウさんが組んで1時間になるところだ。
ミスルもトウさんも操縦を覚えたという。
「それではそろそろ操縦を代わりましょう」
ここからは私とフルル王女が1時間操縦を担当する。
王女も操縦を覚えたいということだ。
ほぼ自動操縦だがある程度はやることがある。
「すごく簡単なのですね。馬車よりも楽ですか?」
「そうですね。空進んでいくということで注意すべきことは天候です。特に風ですよ。そして空を飛ぶ魔獣。あとは離着陸というところですね。道みたいに小さな凹凸がないので助かりますね」
「すごく快適ですね」
1時間が経ち、クレナイさんとクリスさんが操縦席に着いた。
二人には悪いけどそろそろ早めの昼食かな。
ソウさんとトウさんが昼食の準備をしてくれている。
飛行船の中にはキッチンやトイレや仮眠室がある。
ミドリさんとトウさんは早めに食事を終えると操縦席へと行った。
代わってクレナイさんとクリスさん戻ってきて昼食を始める。
あと4時間弱かな。
その後はミドリさんとトウさんの後は私とソウさんが1時間、クレナイさんとミスルが1時間操縦を担当した。
そして残り100km。
私とみどりさんが操縦を担当する。
ここからは減速を始める。
残り20kmで着陸場所が確認できた。
高度を落としていく。
国軍の兵が白旗を振っている。
着陸場所に問題がないという合図にしてあるよ。
着陸予定地の上空10mに停止。
すでに着陸用の脚は出してあるよ。
ほぼ垂直に着陸。
無事にムララに到着した。
国軍の司令官と子爵が出迎えてくれた。
「ようこそ、ムララへ」
「お世話になります」
「しかしすごいですね。イチゲからその日のうちにここまで来るとは。これが定期便になれば、私や伯爵ももう少し王都の会議やパーティーに出れますよ」
「そうですよね。単身赴任の国軍兵士も喜ぶでしょうね。それには乗れる人数を増やす必要があるのですよね」
「ええ、そこが少し大変だと思います。AGTも含めて交通の改善はやっていきますから期待していてください」
さて飛行船を準備してくれた杭に係留した。
しなくても大丈夫だとは思うが突風などで動くと困る。
収納から出した住宅を設置した。
住宅と飛行船の周りには警戒用の魔法道具を設置した。
塀の外側では国軍兵士が警戒に当たってくれている。
国軍には食料と酒などの差し入れをした。
子爵にも酒や珍しい食材を渡した。
今回、歓迎の夕食会は事前にお断りしてある。
住宅の中で自分たちだけで夕食を食べることにしてある。
夕食の準備をしている間に空港に管理事務所や格納庫、そして離着陸がよりし易くなるような設備を設置した。
国王陛下からの依頼だよ。
国内の何か所かに空港を整備する予定だ。
今日は明日のためにも早めに就寝しよう。
明日は日の出とともに出発だよ。
お読みいただきありがとうございます。




