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不思議なパン  作者: TKSZ
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2 エルフ

髪は緑。

白い顔。

先の尖った長い耳。

若いエルフの女性だった。

なかなかの美人さん。


ファンタジーに出てくるエルフ。

でもエルフって長寿だよね。

やはり腹ペコおばさん?


「ああ、人族の方でしたか。私、エルフ族の治癒士でミオといいます、この先のヤリミズ村に急病人が出て、今朝早く、ナリタの町から魔法で身体強化を施して100kmの道のりを5時間かけて走ってここまでたどり着いたのですが、うっかり食料も水も持たずに出てしまい、空腹で魔力が尽きてしまいました。手足がしびれて力が入らなくなってしまいました。ヤリミズの村まで肩を貸していただけないでしょうか」


やはりエルフ!

100kmの道のりを5時間!

魔法で身体強化!

ここは異世界?

それからヤリミズ村?

この先は鑓水という地名だったよね。

まずはこのエルフを何とかしてあげないと。

人間だったら症状からみてハンガーノックと脱水症状みたいだけど、エルフも同じかな?

栄養をさっと取れる非常食は持ってきていないけど、リンゴのコンポートならなら大丈夫かな?


「私は竹早隆司といいます。ミオさんはおそらく、エネルギー切れですね。私の持っている食料と飲み物を使ってみませんか。」


まず、ペットボトルの麦茶を渡す。


「変わった水筒ですね。ガラスにしては軽い」


ペットボトルを知らないか。

あ、麦茶は今開封したものだ。

美人エルフに間接キスなどといった失礼なことはしないよ。

そして、リンゴのコンポートを挟んだパンを食べてもらった。


「「え」」


パンを口に入れた瞬間、エルフの女性の体が光に包まれた。

血色も戻ってきた。


「体が軽い、魔力が完全に回復しました。これならまだ100kmぐらい走れます」


いや、治療に行くのに魔力を使いきってしまったらまずくない?

計画性のない残念美人さん?

治癒士って魔法で治療するのですよね?

地球の食べ物はここでは薬になるのかな?


「この中の果物みたいなものも甘くておいしいわね。でも私の魔力が回復したのはこのパンのおかげみたい。私は鑑定ができるのですが、このパンは『回復のパン』と出てきました。あなた様は高名な治癒士様なのではありませんか。ぜひ一緒にヤリミズ村に行っていただけないでしょうか?」


「いや、治癒士ではないから。それに道に迷って」

「ではまず一緒に村まで、そこで道を教わればいいでしょう」

「もう動いて大丈夫ですか?」

「はい、大丈夫です。すぐ行きましょう」


歩いて10分ぐらいのところに村があった。

エルフの村だった。

早速、病人のところに。。。

治療が始まるが。。。

大人は回復したが。病の重い子供たちの症状が改善しない。


「困ったわね。魔法薬がないと無理ね」

「魔法薬というのは作れないのですか?」

「材料がないの!今からチヨダの町から取り寄せるのでは間に合わないわ。子供たちの体力が持たないもの」


体力?

ミオさんは私のパンで回復したんだよね。

彼女の鑑定だと『回復のパン』のようだし。

まだ3切残っている。

病が重い6人に半切ずつあげたらどうだろうか?


「ミオさん。私の持っているパンではだめですか?」

「それがあったわね。高価な品を申し訳ありませんが後で対価を払いますから『回復のパン』を譲っていただけないものでしょうか?」

「まだ効くかわかりませんが、試してみましょう」


パンとリンゴのコンポートを細かくして病人の子供たちに食べさせた。

食べさせた瞬間、子供たちの体が光った。

そして今まで動くこともできなかった子供たちが立ち上がった。


「まだ寝てなくては駄目でしょう」


親にたしなめられたのに子供たちは


「大丈夫だよ。いつもより調子がいいぐらいだよ」

「こんなに調子がいいのだから動かないともったいないよ」


落ち着きなく、動きまくっている。


「子供たちは大丈夫なのですか?」

「ええ、鑑定の結果『完全回復』になっています。もう大丈夫です。ありがとうございました」

「それはよかった」


ミオさんと話をしていると一人の老婆が近づいてきた。


「姫様、旅のお方。本当にありがとうございます」


ミオさんは姫様なの?

老婆は村長だということ。

ミオさんとは長い付き合いだとか。

エルフってやはり長寿なの?

ミオさん見た目は20歳ぐらいだけど本当は何歳?

ミオさんがこの国の姫様だということは村人には内緒だということだ。

ミオさん美人だし、気品があるよね。

確かにお姫様としての素質を感じる。


「昼食を用意しています。召し上がってください」


ミオさんとともに食堂に移動、昼食はブドウのような実のジュースと鳥の肉と野菜が入ったスープ、そしてパン。パンはだいぶ硬かった。


昼食後、客間でミオさんや村長と話をしている。


「竹早様。対価ですがどのくらいお支払いしたらよいでしょう?」

「あのパンは私が作った昼食です。材料もさほどかかっていません。昼食もごちそうになりましたし対価は必要ありませんよ」

「それでは私の気がすみません。少なくとも金貨10枚の価値がある『回復のパン』を提供していたがいたのです。金貨10枚はお支払しなくてはいけません。今は金貨は5枚しか持ち合わせがありません。後ほど不足分は必ずお支払いします。それからお礼にこの指輪を受け取っていただきたいと思います。この指輪は王家と関係があることを証明するものです」

「そんな大事なもの私に与えてよいのでしょうか?盗んできたものと思われても困りますよ」

「はい大丈夫です。正規の方法で譲渡しないとはめられない指輪です。失礼ながら竹早様を鑑定させていただきました。結果から言うと普通の鑑定ができませんでした。但しあなた様は清浄な心をお持ちであるということはわかりました。不足の分の金貨はタカオにある王家の別荘に取りに来ていただけないでしょうか?その時の証明書の代わりにその指輪をお使いください」


ここはおそらく異世界だ。

私の世界に帰れるのか不明だ。

あまり遠慮しても失礼になる。

穏便に受け取っておこう。


金貨5枚と指輪を受け取った。

ちゃんと嵌めることができた。

サイズもぴったり。

村長から嵌めてると体力が素早く回復し、怪我もすぐ治る効果のあるという小さなルビーのような宝石のついたブレスレットとを頂いた。

さて、どのように帰るか。


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