194、アバシ王国(3)
神様から
「アスカ神様。何でしょうか」
私だけがアスカ神様に呼び出された。
ここはいつもアスカ神様が使っている部屋だ。
他の神様たちもここに勢ぞろいしている。
「我々の厄介ごとにタカシを巻き込んで申し訳ない」
神様たち全員に頭を下げられた。
「いや、頭をあげてください」
「本当に申し訳ない。私たちでは解決ができないのでな」
「何か先程の話で私たちに伝えてないことがあるのですね」
「そういうことだよ。間違いなく今回は邪神を相手にしなくてはならないだろう」
「邪神ですか。神を相手にしなくてはならないということですか」
「そうだ。結界を調べてあの中に邪神がいるということが判った。邪神というのはこの世界の神ではない」
「異世界の神だということですか?」
「それも違うな。神の世界にいる見習の神というところかな。その無職ともいえる神が勝手にこの世界に下りて干渉を始めた。本来はできないはずなのだが」
「結界はその邪神によるものなのですか」
「いや、アバシ王国の結界だが邪神が他に影響を与えないようにアバシ神が無意識に発動したものだろう。ただ、邪神の存在も結界に影響を与え、結界の性質を複雑に変えてしまっている。邪神は異常を起こしたアバシ王国の地下迷宮を拠点にしていると思える」
「邪神は隔離されている状態ですか」
「ああ、そうだ。ただ、抜け穴があってな。地上でアバシ王国から出られなくなった邪神はアバシ神の持つ魔法道具を改変したのだろう。それによってできた地下迷宮に繋いでこちらに出ようとしているのであろう。こちらの地下迷宮は私たちの力で封印をするが有効なのは15日だよ。邪神が完全にこちらに繋げたら私たちの干渉できる範囲では防御しきれないだろう」
「そんな」
「邪神に対抗できるのは人間ではタカシと亜神を宿した者だけだ」
「亜神を宿した者って」
「君に同行させるミスルだよ。だが彼女でも単独では無理だな。今のタカシが五分五分というところだ。連携をして戦って欲しい。そして気休めだが私たちから力の一部を与える」
神様たちが光り、その光が私の体に吸い込まれた。
「どのような能力を持ったかは後で鑑定をしてみなさい。次に重要な事だ。あの異常な結界内では転移は使えないだろう。そしてタカシの得意とする精霊魔法もおかしな状態になると考えられる」
「おかしな状態ですか?」
「意図せぬ事が起きるということだよ。暴走するかもしれない」
「恐ろしいですね」
「そこで先程与えた能力を使うといいというわけだ」
「わかりました」
「そしてこれが邪神を封印するための剣だ」
1本の銀色の短剣が渡された。
「その剣を邪神の体のどこにでもいいから根元まで突き刺せ」
「貫通させてもいいのですか」
「ああ、大丈夫だ」
「やってみます」
「それから『魔法のパン』と『魔法のケーキ』をできるだけ多く持っていきなさい。それから明日からこの任務が終了するまではお供えはいらないからそちらは気にするな」
「はい」
「私たちが力づくで対処できれば良いのだが、そうすればアバシ王国とその周辺を灰燼に帰してしまうのでな。そして迷宮で繋がりつつあるここもにも被害が及ぶ可能性があるのでな」
「わかりました」
責任重大だ。
カタクラ村にある地下迷宮の入り口の防御と警備を高めてその他の準備を行った。
お読みいただきありがとうございます。