192、アバシ王国(1)
アバシ神様に異常が?
「どういうことですか、神様が力を失うということはあるのですか」
「はい」
アバシ王国フルル=アバシ第二王女の説明はこうだ。
まず現在、アバシ王国の王位は空位になっている。
それというのも3か月前にフルル王女の両親が相次いで病で亡くなったことによる。
アバシ王国の王位継承もカラン国に似ている。
アバシ神が加護を与えられた「アバシ王国王位継承の球」をもつ者から王を選ぶということだ。
ただし、カラン国と異なるのはこの球は国王から手渡されるのではなく自然に候補者のポケットに現れるのだという。
これは王の意志によって出現するという。
そして球を持ち、アバシ神の加護を持つ候補者の一人が王位に就いた時に全ての球は消えるのだということだ。
そして現在、誰も「アバシ王国王位継承の球」を持っていない。
アバシ神の加護は現在はフルル王女のみが持っている。
この加護は生まれた時から持っていたものだ。
この事は王宮の誰もが知っていることだ。
生まれた時からアバシ神様はよくフルル王女のもとを訪れてくれている。
姿を見れるのはフルル王女と父王だけだった。
アバシ神様に誰も「アバシ王国王位継承の球」を持っていない理由を尋ねたがアバシ神様にもわからないということだった。
様々な推測はされた。
誰に球を渡したいか決める前に国王陛下がなくなったとか。
父母には兄弟がいない。
つまり叔父や叔母はいないということだ。
フルル王女の兄弟姉妹は年齢の順にこうなる。
フユウ第一王女、フルル第二王女、ユマル第一王子、スマレ第二王子、ルユウ第三王女。
フルル第二王女が王位を継げばよいというのはフユウ第一王女、ユマル第一王子、スマレ第二王子、ルユウ第三王女や家臣の総意だそうだ。
フルル王女は「アバシ王国王位継承の球」を持っていないのに王位を継ぐのはまずいと主張している。
アバシ神様も同じ考えだったそうだ。
アバシ神様がそのように主張しているのにフルル王女が王位に就けるわけにはいかない。
王位が空席のままになった。
そして1月前、兄弟姉妹で王位をどうしたらいいか話し合っていた時にアバシ神様の姿が加護を持っていない兄弟姉妹にも見えるようになってしまった。
さらにアバシ神様が神の世界に帰れまくなった。
その後、数日でアバシ神様が寝たきりになってしまい、時々意識を回復する状態だという。
この状態は今も続いているということが通信の魔法道具によってわかっている。
兄弟姉妹で相談して神の遣いである賢者様に助けてもらおうということになったわけだという。
すぐ出発したフルル王女は1800kmの距離を20日で移動してここにたどり着いたという。
さて、困ったな。
『アスカ神様どうしましょう』
『うーん、直接尋ねたいことがある。姿を現すぞ』
「フルル王女様。驚かないで下さい。アスカ神様が尋ねたい事があるそうです」
「はい?」
そしてアスカ神様が私の隣に現れた。
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