136、領都イチゲ開都式(9)
魔石の販売は
執務室に着くとすぐにルルさんがやってきた。
「商業組合の皆さんお見えです。お通ししてもよろしいでしょうか」
「お願いします」
商業組合はその都市や町村に存在するが領内の商業組合を束ねるタケハヤ領統括商業組合もある。
さらに国にはムサシノ王国商業組合連合が存在する。
今日は領都イチゲ商業組合とタケハヤ領統括商業組合に来てもらっている。
実は両方の役員が同一人物なのだが。
代表のアルフさんと副代表のカナンさんとその部下だ。
2人はムサシノ王国商業組合連合の理事でもある。
カナンさんは領統括商業組合の副代表も兼任し、ムサシノ王国商業組合連合の副理事長でもある。
「お忙しいところお越しいただいて申し訳ありません」
「いや、こちらからも公爵様にお願いがあったのですが開都式の前でどうしたらよいかと思っていいました。今日は例の魔石の件でしょうな」
「はい、そちらではどの程度のことを掴んでいますか」
「商売ですからすべてをさらけ出すわけにはいきませんが、魔石の不足と高騰で中小の取扱業者と市民が困っていますね。ご存知でしょうがエチ国商人の高額での魔石の買い占めが原因です。そんな連中に売ったらこちらもあとで困るのに目先の利益に釣られて売ってしまっている業者や市民が多いようです。ただエチ国の業者もムサシノ王国から外には持ち出していないようです」
「そうですか。いくつかの提案をさせていただきたいのですが、よろしいでしょうか」
「はい、良い案を期待しています」
「まず、これを見ていただけますか」
トカゲの魔獣を倒して得た黒色の魔石を出した。
「これは良質な魔石ですな。大きくて最高の品質ですな。これはどのように入手したかは聞けませんな」
「いいえ、お答えできますよ。私が転移魔法を使うことはご存知ですよね。その力と神様の御助力ではるか遠方の魔力の強い地域で魔獣を倒して得てきました」
「それでは魔石の供給不足は解消できそうということですかね」
「はい、問題は魔石の生産する鉱山や魔獣を倒して魔石を売っている者が困るかもしれないということです。現在タケハヤ公爵領には3か所の鉱山があります。そしてその鉱山は全て町を通して公爵領が管理していますから今まで通り買い上げればよいでしょう。魔獣を倒して得た魔石も町で買い上げるようにします。買い上げは私たちが、販売は魔石取り扱いの業者にお願いします」
「しかし、この大きさでこの品質だと標準の魔石の値段も4倍ぐらいはしますよ」
「ええ、この魔石を変形魔法で標準の魔石の大きさにすることができますから値段は今までの標準の魔石な価格で売っていただきたいと思います」
そう言って、黒色の魔石を変形で3つした。
大きさは標準の魔石のサイズだ。
「今回この魔石を大量に放出します。中にはこの高騰に便乗して高値で仕入れている業者もいるかもしれませんがそれは先を見る目がなかったということでしょう。卸す条件としてムサシノ王国の国民には月1個はこちらの定めた金額で売ること、売り惜しみはしない。在庫がなくなったら予約を取りすぐに取り寄せて予約をした者を優先で売ること。売った相手の記録は提出する事。これを守れない業者はには卸しません。卸しの方を商業組合にお願いできますか?」
「エチ国商人が大量買い付けをしに来たらどうしますか」
「商業組合では売らないでくださいね。小売店ではいいですよ。国民の証明がなければ高値で売ってください。今でも国外に大量に持ち出すことが禁止されていますから。関所に設置する持ち出し防止の魔道具もナリタ公爵が増産して設置を増やすことになっています。エチ国商人は在庫を抱えて大変なことになるでしょう。そのうち買い付けた金額以下で売らなくてはならなくなりますよ」
「いいですね」
商人の皆さんは黒い笑いをしているよ。
さてもう一つだね。
次は青い魔石だ。
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