127、領都イチゲ開都式(2)
森に元気がない!
朝、転移でカタクラ村に移動して森を散歩する。
今日は開都に向けての準備がいろいろあり、魔動馬車やAGT関連でも忙しいので朝のうちにカタクラ村の森を訪れている。
昨晩の打ち合わせでも領都は問題がなかった。
私の作業が順調なために16日に遅れた分の作業がほぼ追いついたらしい。
他の件で問題があった。
カタクラ村の森は最近、少し元気がないとコンさんが言う。
そこで調べることにした。
時間に余裕があるのはこの時間だ。
まだ、日が昇ったばかりだ。
朝日が気持ちいい。
精霊さんたちに尋ねる。
『森が元気がないと聞いたのだけどわかるかな』
『うん、長老の木が病気みたいだよ。森の木たちが心配している』
『案内してくれるかな』
『わかったよ。今、森に人間が入ることを許可してもらうよ』
『許可?』
『そうだよ。長老の木の周辺には人間は入れねいんだよ。認識もできないんだ』
そうなのか?
私の気配察知では長老の木が認識できている。
『森の意思から許可が出たよ』
うっそうとした茂みが移動を始めた。
そして僅かな通路ができている。
精霊さんたちに促されてその通路を進む。
通った後は茂みが元の場所に移動する。
そのように歩くこと30分。
大きな広場に出た。
そこには大きな木が何本も生えている。
そして中心にはとりわけ大きな樫の木が生えている。
しかしその樫の木には枯れ枝が沢山あり、何か元気がない。
鑑定でこれが長老の木であることが判った。
ゆっくり近づいてみる。
『賢者様、よくおいでにくださいました』
『あなたが長老の木ですか?』
『はい』
『貴方は病気なのですね?』
『残念ながら。徐々にひどくなってきています』
『鑑定をして治療をしてもよいでしょうか』
『お願いできればうれしいのですが』
『やってみましょう』
長老の木を鑑定してみる。
何の病気?
毒に侵されている!
何の毒なのか。
毒はどこから?
カビだ。
カビが原因だ。
このカビが長老の木の組織に入って栄養を吸い、組織に毒をばら撒いている。
長老の木にそのことを説明する。
そして治療だ。
カビの除去には長老の木に負担をかける。
二度手間にはなるけど、まずは現在長老の木に入り込んでいる毒をすべて分解する。
そして長老の木には植物用の回復魔法を施す。
カビを元気にしないように気を付けながら。
これらは錬金と錬成の腕輪の耕作魔法だ。
植物向けの魔法が耕作魔法であるから樹木にも有効だ。
そしてこれは手術だね。
気配察知でカビを特定して除去していく。
そして収納の中の容器に入れる。
少し時間がかかるな。
慎重に作業を行ったら1時間もかかった。
再びカビが残っていないか確認をする。
そして再びカビの出した毒を分解して長老の木に回復魔法を施す。
周辺にカビの菌糸や胞子が残っていないか確認をした。
・・・・・大丈夫だ。
このカビに心当たりがないか長老の木に尋ねた。
心当たりがあった。
2月前ぐらいに不審な人物が森を訪れた。
その人物は容器から何かを森に撒いた。
危険を感じた長老の木は風魔法で撒かれたものを回収、体内に隔離収納したが。
『しっかり隔離できなかったようです』
『それが原因ですね』
『申し訳ありませんでした。そしてありがとうございます』
『こちらでも調べてみますから何かあったら教えてくださいね』
『わかりました』
精霊さんを通じて教えてくれるようだ。
次はここに直接来ることを許可してもらい、転移のマーカーを設置する。
しかしまた厄介だな。
カビを鑑定したらこれが異世界ドルジェのものだとわかったよ。
また開都式前の忙しい時に。。。。
お読みいただきありがとうございます。




